「どういった○○が欲しいか?の聞き方」

株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 ディレクター 牛堂雅文

ヘンリー・フォードの名言とされる有名な言葉があります。
※実際には言っていないという否定論があり、真偽は怪しいそうです) 

「もし顧客に望むものを聞いていたら、『もっと速い馬が欲しい』と言われただろう 」
(※馬車の時代の顧客に聞いても、自動車が欲しいとは答えないという意味) 
これは、「顧客に何が欲しいか?」をストレートに聞くのは意味がないという文脈でよく言われる話です。 
つまり、アンケートやインタビューで、「どういった○○が欲しいですか?」と聞いて出てきたものは、本当に欲しいものではなく、「聞かれて思いつきやすいものを答えただけ」である。
実際に作ったところで、芯を食っておらず、それほど売れはしない…と私は受け取っています。 

では、どうすれば良いのでしょうか? 
いくつかご紹介します。 

  1. 不満足、困りごと、未充足ニーズの把握
  2. 行動からの発見(無駄、矛盾、工夫など) 
  3. アイディア/商品コンセプトに対する反応を得る 

1) 不満足、困りごと、未充足ニーズの把握 

これは不足している部分から発見するアプローチであり、極めて王道の方法と言えます。あるサービスや商品を使っていて「不満を感じる部分、困っている点、やりたいのにできないこと」を探る考え方になります。(狩野モデルなどいくつかの方法論はありますが、今回の主題ではないので詳細は控えます。) 

対象となる層は、何らかの手間のかかる方法、何かの代替手段を使っていたり、諦めていたり…といった状態にあり、聞けばそれなりにマイナスの点、改善して欲しい点などが出てきます。 

例えば、洗濯せっけんを使っていたとして、「手にせっけんがついてしまい、ぬるぬるして嫌」といった不満は比較的発言も出てきやすく、発見しやすい部類であると言えます。 
ただ、「その不満解消にお金をかけてくれるのか?」「この新商品であれば、不満解消につながるのか?」といった点に気を付けるべきです。不満があってもお金をかけてまで、またはその方法で解消したいとは限りません。 
不足からのアプローチはいきなり答えがわかるというより、「ニーズを探る出発点」として優れており、【色々存在しているニーズ】に気が付くのに良いアプローチと言えます。 

2) 行動からの発見(無駄、矛盾、工夫など) 

「聞くのではなく、実際の行動から発見しよう」という行動観察などを用いる考え方があります。人が見ている部分を追う「アイトラッキング」もこの中に含まれます。 

洗濯せっけんの例で言うと、「せっけんを使った後に一度手を洗い、他の作業を経て再度せっけんを使うといった【無駄】に思える行動」が発見されるかもしれません。手についたせっけんのぬるぬる解消に何か工夫をしていれば、そこも注目に値する点となります。 
他の例で言いますと、車の中で何かを食べたりする時に水平の場所がなく、ひざ上にお弁当を置いたり、足の間にペットボトルを挟んだりして【工夫】している状況を見て、「車内にテーブルのようなものがあると良い」と気が付くこともあります。 
また、車のユーザーが「車内で席を倒しフルフラット(まっ平)にして、睡眠がとれるので良い」と言っているのに、実際には一度もフルフラットにしていないといった【矛盾】が見つかることがあります。「案外面倒なのではないか?」「極めてレアケースの話ではないか?」といった気づきが得られ、行動観察ではないとしても行動からの矛盾の発見と言えます。 

【工夫】や【矛盾】もニーズ発見の手がかりとなりやすいものであり、「フルフラットにあこがれているだけで実は不要」なのか、「シートをフルフラットにしにくく操作性に問題がある」のか、「数年に一度、○○な時にだけフルフラットになればよいが、やり方を忘れる」のか…といった方向性を見出して、次のステップに進みます。 

ニーズの解釈 

また、1,2に共通しますが、「つまりどういったニーズなのか?」と解釈をするステップが必要です。 
これは最初に思い付いた案、対象者の口から出た案とは「別の方法」での解決もあり得るためです。車内に水平の置き場(テーブルのようなもの)が必要というニーズの場合、ドリンクを置くだけであればドリンクホルダーで済んでしまい、車内にテーブルは不要なのかもしれません。 

「つまり何が達成できると良いのか」「解釈するとどういったニーズなのか?」を考えるステップを設けることで、違う具体化の方向性や、「お金を払うほどのニーズはなさそうだ」といったことにも気付きやすくなります。 

3) アイディア/商品コンセプトに対する反応 

上記二つは発見のアプローチでしたが、3番目は「ある程度あたりはついており、絞り込むようなアプローチ」になります。上記のような調査を経て、いくつかのニーズを見出し、解釈して商品コンセプトなどを作り、受容性のあるアイディアを絞り込んだり、検証します。 
既に顧客ニーズがある程度わかっているのなら、いきなりこのステップから始めても構いません。 

この時に問題となるのが、「アイディア/コンセプトの完成度」でして、具体的な商品やサービスを想像しやすいものが望ましく、ケース・バイ・ケースながら、ベネフィットだけではなく、ものの大きさや、形、味、デザイン、必要ならスペックなどを記載した、判断しやすいものが良いでしょう。 

もちろん、具体化を優先しすぎると、アイディアやコンセプトの作成であっても時間や手間がかかりますので、既存品(先行しているものなど)の特徴を参考としても良いですし、既存品の上からラベルを張る、AIにイラストを描いてもらうなど、省力化できる部分は省力化するのも良いでしょう。 

同じコンセプトであっても、用途/オケージョンなどで違う数パターンがある場合、用途/オケージョンについて数案を作って評価を得、どれが良いか判断する方法もあります。 

車で言えば、「車中泊に便利なフルフラット」なのか、「アウトドアでの休憩時に良いフルフラット」か、「自転車を積みやすいフルフラット」か、「段ボール箱を積みやすいフルフラット」かといった用途が分かるのも訴求の仕方につながり、有効な情報となります。 

いずれにせよ、ある程度具体化した複数案から絞り込むというアプローチは、雲をつかむような曖昧な話ではありません。「どんな○○が欲しいですか?」と聞くアプローチより、数段現実に根差した方法と言えます。 

何も用意せず、いきなり「どのような○○が欲しいのか?」と単純に聞くから「速い馬車が欲しい」という回答が出るのであって、ここまででご説明したようなステップを踏むことでかなり精度が高まります。 
結局、ヘンリー・フォード氏は「例の名言を言っていない」という説があることからも、「どんな○○が欲しい」という単純な質問をするのではなく、丹念にニーズを探るのが良策であると考えています。 


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