判別分析

判別分析は、いくつかの説明変数を用いて任意のケースが属するカテゴリーを判別または予測することを目的とする多変量解析法です。

例えば、新規出店予定の店舗が成功するか否かを、その予定店舗の特性や立地条件などをもとに判別します。あるいは、任意の生活者が自社製品を購入する可能性がある人かどうかを、その人の特性や意識により判別します。

同時に、判別分析は、いくつかの説明変数のうちのどれがカテゴリーの判別に効いているかを明らかにします。例えば、どのような店舗特性・立地条件が出店の成否の鍵になるか、生活者のどのような特性・意識が自社製品の購入有無を分ける要素になるか、などです。そのことにより、効果的なマーケティング施策の決定に資する側面も持っています。

Case Study分析例

新規出店予定店舗が成功するか否かを判定したい

既存の店舗の成否を結果となる事象(目的変数)、各店舗の特性や立地条件を原因となる事象(説明変数)と位置づけ、その関係から判別関数(判別式)を生成します。そして、その判別関数に、新規予定店舗の特性・立地条件の数値をあてはめることで、成功・失敗のいずれに該当するかを判定します。
従って、判別分析では、重回帰分析と同様、1つの目的変数(重回帰分析と異なるのは、これが質的変数=カテゴリー変数であるという点)と、いくつかの説明変数を用いて分析を行っていきます(データはいずれもダミーデータ)。

既存のデータを用いて、説明変数と目的変数との関係を数式化する
既存のデータを用いて、説明変数と目的変数との関係を数式化する

⇒ 既存店舗のデータによる目的変数と説明変数群の関係の分析から、判別関数を生成
⇒ 判別関数に、新しい店舗の値を代入し、出店の成否を判定

それぞれの特徴・条件は、出店の成否に影響している?
それぞれの特徴・条件は、出店の成否に影響している

この結果から、出店の成否には、店舗の視認性、通行者数、周辺の競合店舗数が統計的に意味のある影響を及ぼしていることが分かります。また、今後の出店を考える際も、これらを考慮して物件を選定する必要があることが分かります。
さらに、既存の店舗でも、視認性の向上が店舗の利益にプラスの効果をもたらす可能性を示唆します。

判別分析による予測の的中率

なお、判別分析の場合、判別分析による予測の的中率が重要になります。判別分析では、分析によって得られた判別関数によって、既知の個々のケースがどのように判定されるか予測します(上の例でいえば、個々のケースの実際の成否とは別に、個々のケースの成否の予測が示される)。この実態と予測の一致度が的中率です。的中率が高ければ、未知のケースに対する判別結果も信頼の持てるものといえます(出店予定の店舗の成否の予想も信頼できる)。しかし、的中率が低ければ、分析の結果得られた予測はあまり信頼できないものとなります。そのような場合は、的中率が高まるように、説明変数を増やしたり、ケースのタイプによって別々に分析するなど、分析のしかたを見直す必要があります。

判別分析による予測と実態は必ずしも一致しない
判別分析による予測と実態は必ずしも一致しない

⇒ この分析結果では、判別分析により出店の成否が的中したのは12ケース中10ケース、つまり的中率は83%
⇒ しかし、もしも的中率が5割程度だとしたら、この結果にもとづいて出店可否を決断するのはちょっと怖い・・・

push_pin POINT

判別分析は、このように、既存のデータを用いて、未知のケースがどのような結果になるかを判定することを目的とします(予測)。同時に、結果の判定に対して効果がある説明変数を明らかにすることにも貢献します。
ところで、重回帰分析も、既存のデータを用いて、未知のケースがとる値を予測することが可能です。その限りにおいては、判別分析と重回帰分析は似たような分析手法と考えることも可能です。ただし、どのような場合に重回帰分析が有効で、どのような場合に判別分析が有効かは、分析目的・リサーチ課題によって異なってきます。また、使用するデータ・変数の種類によっても異なってきます。いずれにしても、適切な分析手法の選択は、目的達成のためにはとても重要になります。

JMAは、お客様とのコミュニケーションを通じて分析の目的や課題を明確にしつつ、課題解決に向けて最適な調査設計~分析をご提案いたします。

import_contactsコラム判別分析を使ってクラスターを再現する時は・・

「過去に行った調査でクラスター分析を行ったことがあり、このカテゴリーの消費者がどんなクラスターに分類されるかだいたい分かっている。今回の調査データでも、その時のクラスターを活かして分析したい。なので、このクラスターに分類されるように判別分析を行ってほしい。」
クライアントのご担当者から、こんなご要望をいただくことがあります。
そのクラスター分析を行った時に使用した変数群が今回の調査にも準備されているならば、判別分析により、今回の調査の個々のケースがどのクラスターに分類されるかを判定することは便宜上可能です。判別分析のこのような使い方は、決して間違っているとは思いません。とはいえ、このような使い方をするには、いくつか注意すべき点があると考えます。

ひとつは、上でも記した、その判別分析による所属クラスターの的中率の高さです。クラスター分析と判別分析は別の分析法です。従って、その時の調査データにおいてクラスター分析を実施した結果得られた個々のケースの所属クラスターと、そのデータにおいて判別分析を行った結果得られた個々のケースが所属すると予測されるクラスターとが一致するとは限りません。この時、両者が一致する比率すなわち的中率が高ければ、その判別分析で所属するクラスターを上手に判別することに成功しているといえますが、もしも的中率が低ければ、その判別分析では所属するクラスターをうまく判別できていないことになります。そうすれば、今回の調査の個々のケースが所属するであろうクラスターを判別分析により予測しても、かなりの確率で異なるクラスターに分類してしまうことになります。だとすると、その分析結果はどれほど信頼できる情報といえるでしょうか。

また、過去の調査データにおけるクラスター判別の的中率が高かったとしても、別の問題もあります。それは、社会や市場の変化を考慮した場合、過去の調査データ分析で得たクラスターを、そのまま現在の消費者にあてはめてもよいか?という問題です。どのような商品・サービスでも、その市場は常に変化しています。ひとつは、市場規模の変化。例えば、ここ最近爆発的に拡大した市場の場合、新たなユーザーが多く流入していることが予想されます。そうすると、その市場には以前は存在しなかったタイプのユーザーが現在は多く存在している可能性があります。そのような時、過去のクラスターをそのまま再現するだけでは、現在のユーザーを理解するには十分とはいえないでしょう。

また、人々の行動や意識に多大なインパクトを与えるような出来事や価値観の変化にも気を配る必要があるでしょう。例えば大災害の発生により、その前後で人々の生活意識や生活行動に顕著な相違があった場合。あるいは、昨今特に高まりつつある自然環境保護意識が、当該商品カテゴリーにとって大きな影響を与えることが予想される場合。このような社会の変化、人々の生活行動・意識の変化をふまえ、現在に見合った形のクラスター分析を行った方が、結果的に今現在の生活者に向けたマーケティング戦略立案に役立つと考えられるのです。

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