因子分析

定量調査でブランドイメージを把握しようとすると、たくさんのイメージ項目を聞くことになりがちです。その結果、情報量も膨大になり、いまいち全体像が把握できない、ということもよくあります。そのような場合は、情報を要約するタイプの多変量解析の出番です。

因子分析は、たくさんの変数群の背後に潜む類似性や共通性を見つけ出すことで、膨大な情報量を要約・集約することに長けた多変量解析法のひとつです。因子分析によって得られた要約された情報を用いることで、いまいち把握しづらかった全体像を、より分かりやすく捉えることにつながります。

Case Study分析例

自社商品のイメージポジションを端的に把握したい

因子分析は、同じ聞き方をしたたくさんの変数群の背後に潜む共通した要素=因子を探し出していきます。重回帰分析や判別分析では目的変数と説明変数という区別がありましたが、因子分析の場合はそのような区別はありません。分析に用いる変数はすべて同じ土俵の上にのせられます(データはいずれもダミーデータ)。

同じ聞き方をしたたくさんの変数の中から、いくつかの共通する要素=因子を抽出する
同じ聞き方をしたたくさんの変数の中から、いくつかの共通する要素=因子を抽出する

上の分析では、16あるイメージ項目群から、回答傾向の類似性にもとづいて5つの因子を抽出しています。
この因子を用いて競合商品と自社商品のイメージを比較します。

抽出された因子を用いると、「要するに~」が分かりやすくなる
抽出された因子を用いると、「要するに~」が分かりやすくなる

すると、個々のイメージ項目を逐一比較するだけでは頭に入りづらかった自社商品のイメージ特徴ですが、5つの因子で比較することによって、要するに「手軽さ」「身近さ」に特徴があることが分かりやすくなります。その上で、「手軽さ」や「身近さ」の中身を因子負荷量の表と個々のイメージ項目の結果を手がかりに確認していけば、自社商品のイメージ特徴を詳しく把握していくことができます。

さらに、因子分析の結果を用いて因子軸の空間上にマッピングすることで、この結果を視覚的把握しやすくなります。

各商品のポジショニングは・・・
各商品のポジショニング

この結果からは、自社商品Aは競合とは異なる独自のポジションを獲得していること、自社商品Bは類似したイメージの競合商品が多いこと、さらに新奇性×簡便性のイメージ象限がホワイトスペースになっていることなどがわかります。これにもとづいて、自社の各商品の強化策や新製品開発ヒントを得ることができます(各軸にプロットされるイメージ項目の表記は割愛しています)。

push_pin POINT

膨大な情報を整理・要約する多変量解析の手法は因子分析以外にもいくつも存在します。また、因子分析の中でも、因子の抽出方法、軸の回転方法、抽出する因子数の基準など、分析にあたり決めるべき事柄がいくつもあります。
その中でどの方法を選ぶのがふさわしいかは、分析テーマや商品カテゴリーの特徴、収集されたデータの特徴などを勘案しつつ決めていくのがよいでしょう。一方で、よりふさわしい結果にたどり着くためにいくつもの方法を試すことが必要な場合もあります。

JMAは、お客様とのコミュニケーションを通じて分析の目的や課題を明確にしつつ、課題解決に向けて最適な調査設計~分析をご提案いたします。

import_contactsコラム因子の数をどうやって決める?

因子の数を決めるとき、みなさんはどうやって決めていますか?

統計解析ソフトSPSSで因子分析を行ったことがある人はご存知かもしれませんが、SPSSでは、抽出する因子の数は「初期の固有値=1以上」がデフォルトになっています。ですが、この「初期の固有値=1以上」ってどういう意味でしょうか? そもそも「初期の固有値」って、何のことでしょうか?
少し専門的な話になりますが、「初期の固有値」とは、簡単にいえば、抽出された個々の因子がもとの変数群に存在する要素のうちどの程度を説明するだけの力があるかを示した値です。上の事例の場合、分析に用いたイメージ項目は16なので、その中に存在する要素は最大で16存在することになります。その16要素のうち、変数間で共通する度合いが強い要素を因子として抽出することでたくさんの変数がもつ意味を要約しようとするのが、因子分析の考え方です。ということは、1つの因子が説明する力は1要素よりも大きくなければ変数の要約にはなりません。そこから、「初期の固有値=1以上」、つまり1要素以上の説明力がある因子だけを抽出することにしますよ、というのがSPSSにおける因子の抽出基準のデフォルトになっているのです。

一方、抽出する因子の数を決める時は、抽出されたすべての因子による説明力を考慮すべきという意見もあります。上の事例でいうと、抽出された4つの因子で、もともとある16変数のうちどれだけのことを説明する力があるか?を考慮すべきという考えです。その説明力が高いほど因子分析としては望ましいことになります。その結果、「初期の固有値=1未満の因子であっても因子として抽出すべき」という考え方が出てきます。では、どの程度の説明力が必要かというと、80%以上は必要という意見もあれば、50%程度あればよしとする意見もあります。つまりその基準に定説はないのです。が、あまり低いのも考えものです。
それ以外にも「スクリープロット図も参考にすべき」なんて意見もあります。

このように、因子の数を決める際の基準はいくつかありますが、個人的には、ここに記したいくつかの基準は参考にしつつも最終的には「納得感」が大事ではないかなと考えます。分析すること自体が目的ではなく、使える分析結果を得ることが目的なわけですから、抽出された因子も使えるものでなければ仕方ありません。そして、使える因子かどうかは、結局はその因子に対する「納得感」がものをいうのではないかと思うのです。ただ、より「納得感」のある因子を抽出するためには、因子の数をいくつにするかも含めていろいろと試行錯誤しながら決めなくてはならないことが多い、それが因子分析なのです。