リサーチ道場

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「【 数 】をどう訊くか?選択肢の作成 」

株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 ディレクター 牛堂雅文 /企画部 白木沙織
 
 
調査票作成で登場頻度が高く、そして意外と困ることも多いのが金額、量、回数、頻度など「数」を訊く質問です。
まず最初に考えるのが、【     】円などと空欄にして、自由に(オープンに)回答させる方式です。
いくらぐらいか見当がつかない場合などによく用いられます。
この形式一見なんの問題もないように思えますが、実はそうでもありません。
 
■オープンにする問題点
人は正確な数値を覚えていないことが多く、キリのいい回答をしがちです。実際には「548円」で買ったのに「500円」などと回答してしまいます。「1,320円」だったのに、とにかく1,000円以上だったな…と考え、「1,500円」などと高い方にもぶれてしまいます。
よほど値段を気にしていないと、特売で買っていて値段にインパクトがあったにもかかわらず、いくらだったか覚えていないこともままあります。
実際に後で回答の分布をみると、見事なまでにキリのいい数字に回答が集中しています。「おいおい、そんな訳ないだろう」と言いたくもなります。
 
また、頻度を訊く場合などで、月に【    】回などとした時にありがちなのが、「月に36回」などとやや多めの回答だったとしてそれが妥当なのか、月と年を間違えたのか?といった、「正しいのか、誤答なのか」判断がつきにくいケースです。
特に「極端に高い数値の回答」は平均値を引き上げやすいので要注意です。
(※外れ値検出として、分布から「2σ(シグマ:標準偏差)を超えたら外れ値である」と考える方法もありますが、これは慣例的なものであって2σにもあまり根拠がないことは留意すべきでしょう。3σにしても同様です。)
 
これらの問題があり、数値を空欄とする方法は、
「先入観を与えたくない場合」
「海外などでありがちな事前知識がなくあらかじめ選択肢が作れない場合」
「手元に確認できる領収書などがあって正確な数値が分かる場合」
などに留めた方がよいでしょう。
 
■選択肢を作る
では、金額、頻度、回数などの選択肢を作ればよいわけですが、意外な難しさがあることに気が付きます。
普及価格、最高値、最安値など、「その商材がどういった価格で売られているか?」といった想定がつかないと分布の選択肢が作れません。
これが「回数」「頻度」であっても同様です。店にどのくらいの頻度で行くか?行っても、「週2、3回」なのか、「年に1回位」なのか…。製品の使用頻度、使用回数であっても同じ問題があります。
「その商材に対する知見」がないと、思わぬ苦労が待っています。
■例題
「そんな馬鹿な、そんなものは誰でも作れるであろう」…と思われるかもしれません。
そこで、一例ということで例題を出します。
【日本の住宅の「築年数」と「広さ(平米)」を回答してもらう選択肢】を考えてみてください。
不動産知識がある方にはなんということも無い話ですが、人によっては難しい問いかけではないでしょうか?
 
 
■不動産の実態
賃貸がメインの方にとっては、「築年数35年以上」となるとかなり古いイメージになるかと思いますが、「令和5年住宅・土地統計調査」では、築35年を超える住宅が50%程度存在しているというデータがあります。
2024年現在の35年前は1989年、バブル期であり、このあたり数年は住宅着工件数のピークとなっていました。
【参考】貸家(賃貸住宅)着工戸数の推移(大和ハウス工業:賃貸住宅着工戸数の60年間を振り返る)
 
また1981年に耐震性への要求が大きく変わった新耐震基準が施行されたことを考えると、1980年代でも、1981年以降の建築物は売買においても比較的有利になっています。
よって、築年数の選択肢は「30年以上」で終わらせずに、35年、40年などもう少し古い物件を意識した選択肢を作った方が良いことが分かります。
また、新しい方はどのあたりまでを「新築扱い」として考えるかにもよりますが、「所有期間5年以下で売却すると譲渡税が39%かかる」とういう知識があれば、そこが一つの区切りと考え、「5年以内」という選択肢をつくるのではないでしょうか。
■広さ
住宅の広さ(平米)についても、都心の一人暮らし向けの物件ですと、20㎡以下のものが多くなっています。もし、あなたが都心に住む一人暮らしの若手だったとして、この基準で考えると「4人暮らしなら、20㎡の4倍で80㎡だろうか」…と考えてしまうかもしれません。
 
しかし、都心と違い地方になると全く基準が異なっており、新築戸建では、120㎡、130㎡などの物件もざらにあります。そうなると、100㎡を超える選択肢を作った方が良いことが分かります。
個人的な話として、地方にある私の義実家にも、盆・正月などに家族が一堂に集まれるよう大変広い居間や、客人が宿泊しやすいよう和室がありその広さにも納得しています。
数値を答えてもらうような選択肢一つとっても、その市場に対する理解や知識がある程度必要であることにご納得頂けるのではないでしょうか。
 
■ヒストグラムの視点
ここで、「後でデータを見るときの視点」も加えましょう。
 
例えば、ヒストグラム(度数分布)で見ることを想定すると、選択肢は「等間隔」に切られていることが望まれます。
0-19㎡、20-39㎡、40-59㎡、60-79㎡、80-99㎡、100-119㎡などと。
そして、10㎡刻みか、20㎡刻みか?といったことも同時に検討します。
 
等間隔が良い一方で、より細かく知りたい部分や、大雑把で良い部分もありますので、実際には、「等間隔を少し変形したもの」が使われることが多いようです。
築年数の例でいえば、「5年以内」を二つに分けて「2年以内」、「3-5年以内」とするような方法です。40年以上は「それより新しいものと区別できれば十分」と思えば、大雑把に「40年以上」でまとめてしまいます。
 
通常、「等間隔であること」にそこまで厳密さは求められませんが、「1年以内」、「2-9年」「10-29年」などと極端な選択肢を作成すると、結果の解釈をゆがめてしまいやすいので、お気を付けください。
「築年数は10-29年が圧倒的に多い」といった、「全く発見につながらないような解釈や、誤解を生む選択肢」は避けたいところです。
 
 
■最後に
このように、一見単純に見える数値を訊く場合でも、意外な落とし穴があり、正しく把握するには市場理解や知識が必要になってきます。特に「慣れない分野」に取り組む場合は、一度周囲の人のアドバイスを聞いたり、公開されているデータをあたるなどして、できるだけ適切な選択肢を作成できるよう心掛けて下さい。
数値でこの難しさがあるわけですから、数値ではなく、「理由などの質的な選択肢」となると、より一層難易度が上がります。
 
「たかが選択肢、されど選択肢」 
マーケティング・リサーチにおいて選択肢の作成は全く侮れない作業となります。
 

▼内容の一部をyoutube動画でも配信していますのでご覧ください。
 JMA ピンポイントセミナー 数をどう訊くか( JMA公式YouTube )

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