自主調査企画 第5回

スマートスピーカーは私たちの暮らしを変えるか?

前回は、「栄養食」の調査結果についてレポートしましたが、今回は「スマートスピーカー」について取り上げます。

スマート家電と連携させると、例えば外出する際に「いってきます」と呼びかけるだけでテレビ・エアコン・照明などが一気にoffにすることができるなど、ひと昔前から考えると大変近未来的な商品です。

ただ、実質、日本ではまだ対応するスマート家電が少なく、使い方は人によってギャップがありそうです。弊社内でも、発売直後に購入し、今や生活になくてはならない存在となっている者、まだ使いこなせておらず天気予報しか聞いていない者、購入したものの、セッティングが面倒でまだ開封もしていない者(!)など、様々な使いこなし度合いの者がいるようです。

「スマートスピーカーは、ユーザーの生活にどんな変化をもたらしたのか?」あるいは変化しないことは何か?暮らしの中でどんな存在になっているのか?について、今回も定量・定性の2ステップの調査を通して明らかにしていきます。まずは今回、「定量調査の結果」を見ていきます。

 

利用率は4% まだ先端層にしか浸透していない

スマートスピーカーの利用率は全体の4%とまだ低く、スマートウォッチと同程度となりました。機種別にみると、同価格帯の「GoogleHome」と「AmazonEcho」が同等の所有率となっています。

(社外の調査結果で普及率は8%とのデータもありますが、弊社調査の4%は、2018年12月のデロイトトーマツコンサルティングの調査結果3%に近いものであり、信憑性は高いと考えております。8%と高い数字と計算される背景として一家庭での「複数台の保有」を考慮していない可能性や、対象年代や地域の偏りなどが考えられます。)

■現在利用率 全体ベース(n=2000) 利用機種(MA・SA)現在利用者ベース(n=72)

また、スマートスピーカーユーザーはノンユーザーと比べ、スマートスピーカー以外のガジェットやストリーミングサービスなどの利用率も総じて高く、こうした家電やガジェットに対する感度の高い先端層にしかまだ普及していないとも言えそうです。

現在利用率の差(MA)スマートスピーカー認知者ベース(n=1107)

ユーザーは男性20~50代が中心。かつ、単身者13%、同居者あり88%と、圧倒的に同居者あり世帯の利用率が高くなっています。

性年代構成 現在利用者ベース(n=64) 世帯構成 現在利用者ベース(n=64)   

 

主な用途は情報収集、音楽再生 行動の変化感は低い

使用用途・目的としては、「天気やニュースなどの情報収集(73%)」「音楽の再生(67%)」「検索などの調べもの(55%)」「アラーム・タイマー(50%)」「会話やおしゃべりなどのコミュニケーション(44%)」などが上位に挙がっています。

テレビやエアコン、照明などの家電の操作に使用している方は2割~2割未満となりました。家電の操作をするためには、対応するスマート家電への買い替えをしなくてはならないというのは、なかなかハードルが高いのかもしれません。

使用用途・目的(MA) 現在利用者ベース(n=64)

スマートスピーカーを使うことによって、暮らし・生活にどんな変化があったか、という問いに対しては、【今までしていた行動がラクにできるようになった】というような内容の回答が目立ちます。

また、楽しい/家庭の雰囲気の変化】を感じている方もいるようです。とくに1人暮らしの方や、家族での会話がすくない家庭にとっては、家で声を発する機会が増えるというのは、家庭の雰囲気として感じる変化は大きいのではないでしょうか。

・今までしていた行動がラクにできるようになった

「料理中に手が離せないときでも、タイマーが使えるので便利。(Amazon Echo/女性30代)」
「調べ物が簡単になった(Google Home/男性60代)」
「音楽をすぐに聴けて便利(Amazon Echo Dot/女性20代)」

・習慣や時間の使い方が変化した

「ニュースを聞くようになった(Amazon Echo/男性20代)」
「クラシックをよく聞くようになった(Google Home/女性30代)」
「リモコンを使うことが少なくなった(Amazon Echo/男性40代)」

・楽しい/家庭の雰囲気の変化

「静かな部屋に音楽などの音が多く流れることになった。楽しい(Google Home/女性60代)」
「家族が1人増えたように感じる(Google Home Mini/女性40代)」
「子供が楽しんでる(Amazon Echo Dot/男性40代)」
「自分の暮らしに親しみを感じるようになった(Google Home/女性30代)」

スマートスピーカーを使うことによって、項目ごとに時間の使い方に変化があったか聴いてみました。
まず、「増えた」時間としては、【音楽を聴く時間】(52%)、【ラジオを聴く時間】(33%)が挙げられました。スピーカーの従来の用途である【音楽を聴く時間】が増えたというのは予想通りです。

一方、「変わらない」が多数を占めているものの、「減った」時間として、【新聞・雑誌を読む時間】(13%)、【テレビを観る時間】(9%)、【スマートフォンを使う時間】(9%)を挙げる方も一部存在し、今後の情報接触の仕方や、情報源の変化の兆しも感じられます。

時間の増減(各SA) 現在利用者ベース(n=64)

 

満足度は6割弱程度 少しドジなところも愛されポイント?

スマートスピーカーを使っている印象としてそれぞれの項目について聴いてみると、「満足している」に対する同意度は56%と6割弱程度となりました。「買ってよかった」は7割、「暮らしが便利になった」は6割の方が同意しているので、買ったことを後悔するというほどではなさそうですが、特に満足度が高いとは言えない結果となりました。

スマートスピーカー使用による生活の変化 現在利用者ベース(n=64)

また、使用していて「不満に思うこと」について自由記述で回答いただきました。中でも目立ったのは、【呼びかけに答えられない・会話が通じないことがある】という点。これはスマートスピーカーの機能の肝になる部分なので、満足度に直結してくるポイントのような気がします。
また、Googleユーザーを中心に、【呼びかけるのが恥ずかしい】という意見も挙がっています。起動ワードである「OK Google」という呼びかけは日本人にとってなじみがなく、抵抗感のある方もいるのかもしれません。

・呼びかけに答えられない・会話が通じないことがある

「もっと知識を増やして欲しい(Amazon Echo/女性30代)」
「まだ頭が悪い。 会話が続かない(Amazon Echo Dot/女性40代)」
「会話があまり通じないことがある(Google Home/女性30代)」
「「お役に立てそうもありません」と言うことが多い(Amazon Echo Plus/女性60代)」

・呼びかけるのが恥ずかしい

「OK Google」と言いたくない(Google Home/男性50代)」
「OKグーグル、ねぇグーグルと話さないと始まらないところ(Google Home Mini/男性40代)」

生活の中でスマートスピーカーがどのような位置づけになっているのか把握するため、「スマートスピーカーに名前をつけるとしたら」という質問もしてみました。【物知り博士】【メイド】のように頼れる存在に例えて名前をつける方もいましたが、理解が悪い、役に立たないといった理由から【役立たずくん】【どんくさこ】などやや辛辣なネーミングも・・・。

また、ペットの名前や子ども、弟といった存在に重ねている方もみられ、もしかすると、すこし未熟な面も含めて愛される存在になっているのでしょうか?

 

今回の調査結果から、スマートスピーカーはまだできることも限定的で、使いこなして十分に満足するというほどの段階にはないことが分かりました。

また、人の習慣や時間の使い方をガラッと変えるというよりは、あくまで日常生活における手間をすこし省いてくれる、というような役割であるとも言えます。私たちの生活を劇的に変えてくれるような役割をもし期待したとすれば、機能的には期待外れだったと思ってしまうかもしれません。ただ、家庭の雰囲気に変化を感じている方や、スマートスピーカーにペットや子どものような愛着を持つ方の存在を考えると、どこかにスマートスピーカーの得意分野をより活かせるフィールドがあるように感じます。

次のステップでは定性的なインタビューを行い、今後スマートスピーカーによって変わること・変わらないことは何か?将来図を描けるようなヒントを得たいと思います。