先日、初心者向けの心理カウンセリング講習を受講してきました。
GI後、バックルームに戻るとクライアントの方から「○○って言っていたけど、本当は××だよね」と尋ねられることもあることを考えると、定性調査をバックで見られている方の視点も双方の視点がありそうです。
今回カウンセラーの方の話、ノウハウを聞くと、モデレーションのノウハウとの違いを随所に感じて興味深かったです。
例えばカウンセラーの姿勢3か条は「①問題を解決しようとしない」「②話をさえぎらない」「③相手の気持ちを汲む」だそうです。
相談者へのヒアリング中、同調を繰り返す→相手に否定されないという安心感を与える→信頼関係を作る(ラポールの形成)→本音を引き出す→自身に気付きを与える、といった流れが必要とのこと。
「①問題を解決しようとしない」この姿勢を貫くとモデレーターとしては怒られます。(笑い)
カウンセリングのゴールが「クライアントに自己責任が取れる人になってもらうこと」であるのに対し、モデレーションのゴールは「クライアントが抱える課題を解決する(ためのヒントを探し出す)こと」であるからです。
反面、「問題を解決しようとする」姿勢が強すぎても問題だと思っています。対象者への助成の程度にも関わるところなので、この姿勢をどこまで持つか(つまりマーケティングの姿勢をどこまで現場に入れるか)はモデレーターによって考え方が異なるところです。
「②話をさえぎらない」はモデレーターでも基本姿勢ですが、そうはいかない場合(対象者)も多いです。
GIの場合は意見が特定の方に偏ることを防ぐためさえぎることが多いですが、デプスインタビューでも話が脱線しかけたときはさえぎって、話して欲しい内容に誘導します。
モデレーションの場合、分析の対象が「話している本人とは違うクライアントが知りたいある事象」にあり、本人は問題を意識して話を進めてくれるわけではありませんので、話が知りたい事象とは別方向に進むことも往々にしてあり得ます。分析の対象が「話している本人の内面」にあり、その人が発する言葉であればどんな内容でも分析対象になり得るカウンセリングとの相違点です。
この人の発言を抑えたい、という場合、目を合わせない、話を聞くときの相槌のスピードを速める、相槌を強めに行う、などのテクニックは使いますが、それくらいでは気付いてくれない人も多い(むしろ気付いてくれない人の方が多い?)ということで、その場合はさくっとさえぎります。
「③相手の気持ちを汲む」これは「相手が言いたいことを汲む」と言い換えれば、モデレーションにも通用しそうです。「つまりこういうこと?」という言い換えは、誘導尋問になり過ぎない程度に必要です。
ただ、その程度には両者の間では差がありそう。モデレーションでは、「○○じゃないの?○○かと思ってた」と仮説をぶつけることもありますが、これはカウンセリングでは決め付け、行き過ぎとして、やってはいけないことの最たるものでしょうね。
違いがたくさんあるとはいえ、同じ「人の話に耳を傾ける」という点では共通点も多かったカウンセリング講習はとても刺激になりました。マーケティング関連の講習に参加しても感じることですが、参加者の方からも刺激を受けます(疲れもするので、一人の時間とのバランスも必要ですが)。
人からの刺激と言うのは、書面やネット上だけでは得られないものです。定性調査の醍醐味とも共通するところなのでしょうね。
今年もあと2ヶ月、実査でも、それ以外の場面でも、刺激と弛緩のバランスを取りつつ、進んでいきたいと思います。
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