コンセプト開発へのアプローチ
「どのようなアプローチで発想したらよいか」というコンセプト開発の手法は、大きく2つに分けられる。
一つは「問題解決型」で、もう一つは「価値提案型」。「問題解決型」はその名の通り、現状に不満、問題があり、それを解決するための発想法で、これには背景となる生活実態の問題把握(実態調査)がベースになる。
問題把握が複雑な場合は、因子分析や主成分分析など多変量解析で課題の核心を構造化することも多い。
一方「価値提案型」の場合は、「生活の中の新たな気づきや価値」をコンセプト化するもので、日常生活の中の無意識の行動や何気ない所作にフォーカスする。
こういう潜在意識下の行動の理由を解明するには、インサイト探索の手法(ZMETやマインドネット、評価グリッド法など)が有効である。
※弊社でもインサイト探索の調査に関しては数々実施しており、また別の機会に改めてご紹介する。
テーマの商品分野や市場の成熟度によりアプローチ手法は異なるが、いずれにしろ収集した情報(データ)を意味ある(読める)情報に加工するプロセスが次のステップになってくる。
情報の整理・加工化~データを有機的に並べ替える
コンセプト発想/切り口抽出の原点は、収集したデータの有機的な整理から始まる。
豊富なデータも配列や組み合わせによって、有効に活用できたり役に立たなかったりと違いがでてくることがある。
テーマに応じてデータを主体的に並べ替え、意味のある情報にしっかり加工できるかが重要になってくる。
以下は情報の整理、有機化の例。
- 既存商品のポジショニングマップ(競合エリア、盲点エリアの可視化)
- 既存商品の効用、不満因子の整理、分類→KJ法
- 事実の因果関係(相関ツリー)の作成
- ニーズのキーワード化、キーワードの文脈化
- 言語のイメージ化/シンボル化
- ベネフィットのラダーダウン、ラダーアップによる(生活)価値構造のマップ
など。
KJ法による分類整理は古典的な手法だが、キーワード/要因の整理・分類には適している。
またベネフィットのラダリングは価値構造の把握には非常に有効な分析手法である。
「切り口」の抽出~ブレーン・ストーミングによる発散、収斂
収集・加工化した情報をベースにブレーン・ストーミングを行い、ディスカッションしながら「切り口」を導き出す。
このブレーン・ストーミングはコンセプト開発(あるいは商品企画)の工程の中で極めて重要な位置を占めておりこの作業をうまく進行・運営することが企画の成否のキーになる。
またこのブレーン・ストーミングで(クライアントも含め)メンバー全員で「切り口」を導き出すプロセスを共同体験することは、概念・ストーリーの共有化だけでなく、チームとしての連帯意識を高め、その後の業務の進行をスムーズにしてくれる。
- テーマに関して質の高い情報が整備できていること
- 個性豊かでタイプの異なるブレーン・ストーミングのパネラーが用意されていること
(多くても7人まで)生産現場や研究開発のスタッフの参加も違う視点が望め有効。 - ブレーン・ストーミングの進行、方法論を知っているファシリティターがいること
(時々堂々巡りになることがあるが……)
ブレーン・ストーミングは活発で明るい雰囲気の中で、こだわりのないディスカッションを行なえることが肝要。
またブレーン・ストーミングは1回で終わらせない。当社では1テーマ2~3回(1回2.5時間)に分けて実施している。時間を空けて実施することで抽出された「切り口」は収斂され、ブラッシュアップに繋がる。
「切り口」の展開例 ~企画は情報の読み込みと展開のゲーム
あくまでも「切り口」は、加工された情報の延長にあると考える。
(アイデアに関しては時としてジャンプアップ=飛躍が必要であるが……)
したがって「切り口」に肉薄するにはいくつかのキーになる展開指標を当てはめれば糸口が見つかる。
全くオリジナルなアイデアはめったにあるものではなく、成功したケースは「ニーズの進化への対応(対策)」と「分解」「特化」と「組み合わせ」の応用である場合が多い。
以下は、コンセプト開発のプラットホームとして当社で利用している展開の指標例である。
- ベネフィットの先鋭化、専門化による展開 →ハイエンド化/プレミアム化など
- 既存商品のフラストレーションケア
- 盲点ポジションの発見、(市場)開発→カウンターカルチャー発想(脱○○、懐古化)
- 新しい生活価値の創造
- 時間軸でのアプローチ
など。
次に挙げたのは当社で利用しているベネフィット/キーワードの展開モデルである。
機能 |
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サービス(ソフト) |
切り口はアイデアコンセプトのマザーボードである。ここで抽出された切り口をベースに現実的な製品コンセプトに落とし込んでいく。
この後の作業(コンセプトスタディ)については次の機会にご紹介する。
常識を疑う。疑わしきは検証してみる
2か月ほど前、新聞通信調査会(公益法人)の出自で新聞の購読率が91.3%という数字が公表された。
「いくら何でもこの数値は……。」当社でもかなり異論が続出し、社内のBBSでも盛り上がった。
仮にこの数字が70%だったらどういった反応だったのだろう。この数字を信じるのだろうか?
また「シニアだからネット関連サービスは不要」。今の現場の反応である。
パっと聞くと当たり前のように聞こえるが、本当にそうなのか?
実は今、60代のインターネット利用率は60%を超えている。(平成21年総務省通信動向調査より)
世の中は凄まじい勢いで変化しており、生活者の行動も我々が思っている以上に変容している。
今までの常識が通用しない。常識を疑ってみる。疑わしいことは徹底的に検証する。
マーケターにとって今まさに求められていることであると思う。
続く