株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
取締役フェロー 澁野 一彦

新年明けましておめでとうございます。
シニアのマーケティングコラムの連載も早いもので 既に4年が経ちました。
今年のテーマは「いつまでも驚き続ける!」。これからも初心を忘れず何事にも
新鮮な気持ちで向き合って参りますので、引き続き宜しくお願い申しあげます。

◆「憧れの団地」の盛衰

1960年代から70年代にかけて、日本各地に「巨大団地」が沢山生まれた。
高度経済成長を支えた団塊の企業戦士達が暮らし、団地内には小・中学校、市役所の支所、郵便局、商店街などが次々と建てられ、大きく発展した。その当時、団地は憧れの対象であった。
それまでの食べる、寝るが同じ部屋という今までの暮らし方からすると、食・寝分離の2DKは全く違う世界。
トイレ、バス、キッチンも住居内にあり、ステンレスの流し台、食事用のダイニングテーブルなど今までの生活にはない欧米型の生活を身近なものにし、団地は日本人に初めてプライバシーというものをもたらしたといえる。
また団地は、のちに標準世帯に言われる「夫婦+子供」という核家族という新しい家族形態を生み出し、「団地族」「カギッ子」などのその当時の社会を象徴する言葉も話題になった。
TVでは、昼ドラの定番である「団地妻シリーズ」が生まれ人気を博し、現在までその流れは続いている?
団地は硬軟織り交ぜ、当時の社会現象や生活を規定するプラットフォームであった。
そして当時多くの人が憧れ、住みたいと思ったのが『団地』だったのである。
それから40~50年たったイマ 『団地』はどうなっているのか。
ここ2~3年で、団塊の企業戦士たちが(65歳を迎え)ほぼリタイヤし、(郊外型の)団地はかつてのベッドタウンとしての役割を終え、現在はひっそりと取り残されている。
団地と並行して作られた駅に近い民間分譲マンションの供給はコンスタントに伸び続けているが、立地面で劣る郊外型の団地は高齢化もあり、人口の減少傾向が見られるのが現状だという。
団地の人口構成も、65歳以上の高齢世帯が4割を占める団地も少なくない。世帯構成も「夫婦+子供」という標準世帯から子が独立し、高齢者の夫婦2人世帯や、片方が死別して単身世帯になっていく世帯が増えている。
当初団地内であらゆる生活サービスを利用できていたが、徐々に商店や公共サービスなどが閉鎖され、団地自体が老朽化し(機能をなくし)、活気を失っている。物心両面でエイジングが進む「団地」は、まさに未来の日本の縮図といえる。
◆「団地」の現在地~「それでも団地に住み続けたい」

10年後の2025年には、団塊世代が後期高齢者(75歳以上)になり、「買い物難民」「孤立化」「医療」「介護」など、彼らが多く住む団地で今後起こる様々な社会問題が懸念されている。
JMAではこのような郊外型の団地に住む住人(所帯主)を対象に「生活実態調査」を実施した。(2014年12月実施:留置き調査で有効回収563票)
当団地は高度経済成長後期の1970年代に建設されている。かつては1万人以上が住んでいたが、今は7,000人まで人口は縮小、世帯数は4,000世帯。そのうち、65歳以上が3割、また単身世帯が4割という、高齢化かつ単身化が急速に進む団地である。この団地も、昨年唯一のスーパーが閉店し、現在シャッター商店街となり活気を失っている。
住民の「生活調査」から浮かび上がってきたのはさまざまな生活行動上の問題であった。
《生活の不便・不自由な点(自由回答)》
 ・ 低層階住宅にはエレベーターがなく昇降が大変
 ・ 建物が老朽化(水漏れ・汚れ・寒いなど)
 ・ 住民同士のコミュニケーケーションが希薄
 ・ 買物が不便。商店街が機能していない。コンビニがない。
 ・ 老人が気軽に立ち寄れる店がない
 ・ バスの本数が少ない。病院にいけない
 ・ 駅までが遠い などなど。
自身が高齢化したが上の不便さが語られている。
今回の調査で、一番多く挙がったのは「買い物が不便」という回答。
この「買い物の困窮度」を5段階(困っている~困っていない)で聞いていたところ、困窮者は約3割という結果。特に75歳以上女性で困窮率は、5割を超える。
ただ実際の(食品の)買い物場所としては、「近隣のスーパー」「近隣のコンビニエントストア」などが多く挙がっており、購入場所までの移動時間は、「6~10分」が最も多く、「~15分以内」で全体の8割を占める。
団地内に商店街がないと不満をのべている割には、意外にも買い物の移動は短時間で済ませているようだ。
この「生活調査」の最後に、全対象者(563名)に今後「当団地」に住み続けたいかどうかを聞いた(4択)ところ「住み続けたい」が42%、「どちらかといえば住み続けたい」41%を合わせ、計83%という高い居住継続意向を示した。
今回の対象者は長期居住者が多い(30年以上居住が40%)という背景はあるものの、非常に高い意向であった。彼らは決して今の環境を良しとはしていないが、自身や街のエイジングを受け入れることで、逆に逞しく?かつクールに生きようとしているのだろう。
その他にも、当調査では団地での「暮らし向き」「健康」「食生活」「趣味・楽しみ」「普段の地域での活動や交流」「情報収集」など様々な地域での生活ステージについて聞いている。
当調査の詳細については来週(1月16日)実施する「シニアライフセミナー」や次回以降の当コラムなどで、随時報告させて頂く予定である。
生活圏が狭くなる高齢者の問題や彼らに寄り添うサービスを考えるには、やはり生活圏サイズのフレームで彼らの生活や消費行動を視ていくことが有効である。シニアの生活支援は地域が基本であると考えている。