株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 シニアディレクター インタビュアー 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)
新年、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
「相手の目を見て聞く(話す)ように。」ということは、子供の頃から両親や先生から教えられる会話のルール・礼儀のひとつです。
目で会話するのは有効なメッセージ手段。視線を向けただけで、「その話に興味があります。」ということを伝えられますし、「次はあなたが話してください。」という合図にもなります。人間同士だけではなく、ペットとの会話にもアイコンタクトを使えますから、とても便利なツールと言えます。
しかし過度のアイコンタクトは「眼(ガン)を飛ばす」「目力(めぢから)が強い」という言葉があるように、緊張や誤解を生む場合があります。相手の目を見続けるのは失礼な行為とみなされることもあるのです。
以前、先輩に「梅ちゃんは凝視するクセがある。目も大きいし、相手がたじろぐ時があるから気をつけて。」と助言をもらったことがあります。本人は、まったくもって無意識なのですが、どうやら興味があると、ついじっと見過ぎて、強い視線を発しているようなのです。
これは威圧感をあたえることにつながったり、異性の場合は自分に関心があるのではないかと勘違いされることもあるので気をつけなければなりません。
威嚇をあたえる喧嘩や高揚感を伝える恋愛には有利かもしれません(※そうでもありません)が、この力は仕事では邪魔になります。特に、モデレーターという職業柄、確信を持てないから言わないようなことやホンネを引き出さなければなりません。
相手が目を合わさないように話しかけてきた場合には、その内容が心理的にややこしい事柄を含んでいる可能性が考えられます。人は心理的に相手と向き合った状態では話しづらいような内容を相手に伝える時、相手の目を見ることを避けつつ話すことがあり得るからです。特にそんな時は、アイコンタクトは控えるよう抑制しています。
会社の人にも言ったことがないここだけの話なのですが(メルマガに書くことで知れてしまいますが)、実はそれに対処・工夫していることがあります。アイコンタクトを弱めるには、「相手の目ではなく、口元あたりをみる」という方法もあるようですが、自分なりにあみ出した2つです。
ひとつが「メガネをかけること(もともと目が悪いことも関係しています)」、もうひとつが「メモを取ること(もちろん全てをメモするのではなく、要点や気づきを書き留めます。そしてメモを取っている間は視線を外すことができます)」です。この2つで、眼光の鋭さをカモフラージュしているというわけです。
とはいえ、時にはじっと見つめて、「ここはすごく聴きたいんだけれど・・」というプレッシャーを目力で行うなど、最近では使い分けもできるようになってきました。長所は弱みにもなりますし、逆に短所は強みとしていかせ、ということなのかもしれません。
先月、(株)マーケティング研究協会が主催するセミナー【1日徹底!ホンネをつかむ「定性調査」の実践】の講師をさせていただいた中で、自主企画で行ったグループ・インタビュー風景を上映しました。それをみた聴講者の方から、インタビュアーがメモを取っている様子をみて「メモは取った方がいいのですか?取らない方がいいですか?」という質問を受けました。
大ベテランのモデレーター早尾恭子氏は「モデレーター 聞き出す技術」の中で「メモ禁止」と記しています。なぜならば、「目の前の相手にとことん集中するため。」とのこと。「書き取ろうとすると目線が下がり、対象者の行動を観察できないだけでなく自分の集中力も途切れます。メモを取らないで相手をよく観察していると、見えてくるものがあるのです。」とありました。
もちろん正解はないのでしょうが、著書に書かれていることは「ご尤も」だと思います。
中庸な言い方をすると、「一般的にはインタビュアーはメモを取らない方が正解。けれど目力の強い方はメモを取ることをお勧めします。」といった感じでしょうか。
私の場合、「筆で聴く」「よく動く(白板や模造紙もよく使います)」ことがひとつのスタイルになっているため、今更それを崩せません。メモを取ることの利点を3つだけ述べておきます。

1つ目は、「あなたの言っていることは重要だから、思わずメモしちゃう。」ということを示す合図には有効な手段です。
2つ目は、インタビューの現場の中で「書く」「動く」という行為をすることによって、その場で思考が整理され、次のプロービング(問いかけ、突っつき)のてがかりになることがあります。
3つ目は、描いたメモ(図解やイラストの場合が多い)を相手にみせることもあります。「こういうイメージでしょうか?」と意味や世界観を可視化して、気づきや発見を確認・共有するのです。アクティブに働きかけることにより、一緒に思考プロセスの構築を行うこともできます。

聴き手と話し手との活動的な相互行為によって意味が生成されることをアクティブインタビューというならば、この「筆で聴く」「よく動く」というインタビュースタイルは、一種のアクティブインタビューではないかと思います。いずれにせよ、私には合っているスタイルなのだと思います。

※アクティブインタビュー:社会学のすゝめ 第7~8回「アクティヴ・インタビューと〈社会構築主義〉」を参照。