株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
定性調査部 シニア・ディレクター インタビュアー 吉田 聖美
今年のヒット番付の発表や今年を振り返る番組が始まりだしている今日この頃。残している仕事量からすると今年を振り返るのは早すぎる気がするが、今回のお題は少しだけ今年を振り返りながら書いてみることとする。
振り返ってみると、今年は「声」を意識する機会が多い1年だった。今年、モデレーションを勉強し始めた後輩4名へのアドバイスや質問でも「声」「話し方」の話題が多かった気がする。
4名とも優秀で、リサーチャーとしての基礎的なことはクリアしているため、気付いた点としては、「声のトーンが低めでゆったりしているので良いね」「焦ると早口になりがちなので気を付けて」「声が徐々に高くなるクセがあるね」など、良いところ、改善が望まれるところ、どちらも「声」周りのことが多かった。
「この声変えなくて大丈夫ですかね」と相談され、ちょっと言い過ぎたかな、と反省したほどである。
「声」に関する相談を聞きながら、自分の声について考えてみると、私自身の声の傾向としては「通りにくい」「甘ったるい」声だと思っている。モデレーターとしてはちょっと残念な声だ。
ただ、デビューして間もないときに当時の上司から「声質が柔らかいので多少きつい突っ込みをしても大丈夫」と言われたことや現在の上司から「コンセプトを読んでいるときの声質が良く、いい商品に聞こえる」(笑)と言っていただいた経験があり、この声でも何とかやってくることができている。録音された自分の声を聞くのは相変わらず嫌いだが。
「良い声」とはなんだろう、と思ったときにある記事に出会った。※以下日経ビジネスオンライン 2014年10月20日 達人に学ぶ「伝わる技術」上野陽子=文 より抜粋
その記事では「声」を6つの性質にわけて論じていた。

(1)「声域」:<深さ=力・権力>
声の高さの範囲といったもの。鼻から声をぬくときと、のどから声を出すときでは、声の質が変わってくる。たいていはのどのあたりから声を出すが、さらに重厚感を出したいなら胸より下から声をだす。
(2)「声色」:<豊か、なめらか、温かみ=好感>
声の質感のこと。研究によると、豊かで、なめらかで、温かみのある声が好まれる傾向にある。訓練で上達できるもので、息遣いや姿勢を学ぶだけでも見違えるように声質を改善できる。
(3)「韻律(プロソディー)」:<抑揚、言葉に意味を添えるメタ言語>
会話の醍醐味といえる部分。”ずっと同じ調子で話されると聞く気が起きない”のは、韻律がないために変化が乏しく、ポイントがつかみにくいから。
(4)「ペース」 :<速い=興奮した印象、その中でゆっくりすると強調になる
速く話すと興奮した印象になり、その中で一部ゆっくり話すことで強調できるようになる。また、隙間を「えーと」とか「あー」で埋めるよりも、むしろ沈黙したほうが効果的に”間”を作り出せる。
(5)「音高(ピッチ)」:<声の高低=意味、ニュアンスを変える>
感情の高ぶりはピッチとテンポで表現できる。同じ一言「カギをどこに置いた? 」「僕のカギをどこに置いたんだよ?」と 音高を変えるだけでも、違う意味になる。
(6)「声量」:<声の大きさ=印象を変え、ポイントを示す>
声量によって興奮した印象を与えたり、静かに話したりすることで注意を引きつけたりできる。声量をうまくコントロールすることで、話をより印象的にし、話のポイントを示すことも可能になる。

このように「声」を分解してもらって気づいたことだが、私は「声域」と「声量」はないのだが、「声色」は上司の評価によると少し恵まれているのかもしれない。あとの「韻律」と「ペース」についても、この仕事に関わってから実査中に意識する習慣がついているので、この声でも何とかなっているのではないかと思い始めた。
デプスインタビューのときには相手のペースや呼吸に合わせて気持ちよく話してもらうことの方を重視しているが、グループインタビューの場合はテンポよく進めるためや、対象者に飽きさせないために、途中で意識的に「韻律」と「ペース」を変化させるようにしている。
2時間を超えるグループインタビューは対象者も、バックで見ているクライアントも単調な展開が続きすぎると飽きてしまう・疲れてしまうのではないかと思っている(余談だが、そういう意味では最近問い合わせがある3時間GIなどは個人的には賛成しかねている)。
もちろん、単調にならない工夫はインタビューフローでも大事なのだが、フローは聞き出したいこと、聞き出したい方法が決まっている以上、ある程度の制約がある。その場合に、本当の意味でコントロールできるのが自分の声なのだと思う。
ゆったりと対象者の話を引き出しているうちに間延びした雰囲気になってきたな、と思ったら、少しテンポを速めてみたり、指名することも含めてスピーディにいろいろな人が発言する状況を作ったり。
たまにデプスインタビューとグループインタビューどちらが好きですか?と聞かれることもあるのだが、私は基本的にはグループインタビューの方が好きだ。その理由はもしかしたら、この自分の声でその場の空気をコントロールし、変化を加えることができるということのやりがいなのかもしれない。
自分の「声」と声に6つの側面があることを考えると「モデレーター向けの声」というのは、6つのうち、いくつかを満たしていれば獲得できるものなのではないかと思っている。モデレーションのやり方に個性があるように、個性的な「モデレーター向けの声」を獲得していきたいし、これからモデレーターを目指し、追求していく人にもそうあってほしいと願っている。