株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 シニアディレクター インタビュアー 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)
「ゾウは?」問いかけには「大きい!」と言い、「アリは?」の質問には「小さい!」と答える者が大半ではないか。これは、就学前から親や親戚などの大人から習うことのひとつでもある。しかし、果たしてこの事象は本当なのか?
リフレーミング※1を用いて、この事象を捉えてみる。
「クジラに比べたら、ゾウは小さい」「バクテリアに比べたらアリは大きい」となる。何と比較するかによって見え方が変わり、先ほどまでとは逆のことを述べてしまうのだ。
この例からいえることは、「我々は、案外と勝手に物事を決めつけて生きている」「知らず知らずのうちに固定観念(フレーム)に基づいて思考している」ということ。
生活の中で習慣化し当たり前になっていること、権威のある親や先生などから常識として学んだことや倣ったことは、見方や視点、環境や立場を変えると違った見え方をすることがある。
真実と思っていたこと、正しいと信じていたことは、時代によって変わるし、各人の体験や環境によって異なる、ということを示す「フレーミング」の例をいくつか列挙する。

-若い女性がプリクラを撮る際、目を大きくみせてくれる「デカ目効果」や顔をほっそりみせる「小顔効果」は、「細い目」「ぽっちゃりした女性」が美人の条件だった平安時代の者には異様に映るであろう。これは時代ごとに美人の基準は違うということを表している。
-戦時中の軍人たちは「生きて虜囚の辱めを受けず」という教えで自決することが美徳とされていたが、現代では「辛くても、命は尊いものなのだから自殺なんてするものではない」というのが一般的な死生観である。
-「女子大生が夜キャバクラでバイトしている」と聞くとふしだらに聞こえるが、「キャバクラ嬢が昼は大学で学んでいる」と聞くとまじめに聞こえるのは、表現の仕方で印象が変わるということである。

いずれにしても「真・善・美は、不変ではない」「常識や価値観は、時代や状況、意味の捉え方や表現によって異なる」ということがわかる。
これらの「リフレーミング」を商品・サービス開発に当てはめてみる。一概には言えないが、社会の常識や業界の慣習にとらわれていない者の方が、新しい思考や違った視点を持つことができるという仮説が成り立つ。
少なからず耳にする「新入社員からヒット商品が出た」という事例(広報的に代役を立てたのでなければ)、既知情報が豊富な者よりも無知である者の方が余計な情報がないので未知の領域がみえやすい、ということを示している。
また、「業界に精通した者だけではなく、異業種や学生などの発想をプロジェクトメンバーに取り入れることで新たな地平をひらく」「一人でコツコツと分析したり、社内だけでアイディアや機会を見出すのではなく、多様性を用いて多くの頭脳でワークショップをすることが新しい価値を創り出しやすい」といった最近の試みも「リフレーミング」の一環といえそうだ。
弊社では、「リフレーミング」を働かせてコトバをデザインしたり、「集合智」を用いてコミュニケーションや商品開発に役立てるサポートを行っている。具体的には「意見の多様性(ダイバーシティ)」「独立性(他者の意見に左右されない)」「分散性(それぞれが得意な分野に特化し判断する)」「集約性(個々の意見をひとつに集約する)」の4つの考え方を取り入れた「集合智メソッド」※2である。
筆者は以前「マーケティング対比思考 “同質性”と”多様性” ※3」で、「同質なき多様性は単なる崩壊でしかなく、多様なき同質性は周囲に迎合しているに過ぎない」と述べたことがあったが、「コミュニティの運営」だけでなく、「発見&分析」や「ワークショップ」でも、異質の知を生かすことを取り入れたのである。
質的情報は、「誰が見るか?」「いつ見るか?」「何に注目するか?」「どのように見るか?」「どこで見るか?」によって、発見・気づきの数や問題解決のアプローチが異なる。
これらの情報を異なる知見や考えを持った複数の目で共有することで、重要な情報を見落としたり、偏りを防げるという利点がある。さらに、地に足の着いた情報を生かしながら、役立つ知恵を創り出すこともできる。
「集合智メソッド」に携わるメンバーは、多様な視点(モノを見る角度が異なる者)が関わることで、「リフレーミング」がよりダイナミックになることを日々経験している。

※1リフレーミング(reframing):既に認知している枠組み(フレーム)を外して、違う枠組みで見ること。元々は家族療法の用語で、同じ物事でも、人によって見方や感じ方が異なり、ある角度で見たら長所になり、また短所にもなる。
※2集合智メソッド:情報の中の原石(=気づき)を、宝石(=問題解決・アイディア)へと多くの頭脳【集合智】で磨き上げる新しいインサイトへのアプローチ。「Phase1:集める」「Phase2:掴む」で抽出した質的情報をベースに、「Phase3:磨く」ではワークショップを行い、未来をデザインする。
※3マーケティング対比思考 “同質性”と”多様性”:コミュニティの運営の成功要因を語った筆者のメルマガ記事