株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 ディレクター 牛堂雅文
●スマートフォンのアクセスがPCを逆転

「2014年4~6月に、ついにPCよりもスマートフォンがYahoo!へのアクセス(ユニークブラウザ数)の比率で上回った。」
これは、先日開催された、ad:tech TokyoのキーノートでYahoo!CEO宮坂氏が講演されていたことであり、Webの主戦場がスマートフォンに移ってきたことを象徴する発言でした。
舞台をマーケティング・リサーチに移しますと、海外のカンファレンスではスマートフォンなどを用いた「モバイルリサーチ」への取り組み事例が多数発表され、モバイルリサーチに関するカンファレンスMRMW(Marketing Research in the Mobile World)も開催されています。
しかし、日本のマーケティングサーチ業界では、そこまでの取り組みや盛り上がりは見られていないようです。「日本は携帯電話の先進国であったはずなのに、どうしたことだ」という意見をおっしゃる方もいます。今回はこの「モバイルリサーチ」に焦点を当てたいと思います。
●海外での盛り上がり

今、ここまで海外でモバイルリサーチが注目されているのはなぜでしょうか?
要因としてよく言われるのは、「インターネットインフラが脆弱だったので、モバイルによって一気にインターネット環境が整った」もしくは、「機能のあまりないシンプルな携帯が主流だったので、PCと同じことが出来るスマートフォンが革命的だった。」というスマートフォンなどによる急激な環境の変化です。
これは、光ファイバーが家庭まで張り巡らされWebでの動画の視聴も支障なく、かなり前からフィーチャーフォンでWebも見られ、写メで写真も撮れた日本にいると分かりにくい感覚です。
そこ以外に着目しますと、「リアルタイムで聴取ができること」、「あらゆる場所で使えること」、「日常に即して情報が集めらること」、「写真・動画・位置情報などリッチな情報が手に入ること」、「双方向性があること」などが特徴と言われています。
●飲用実態をモバイルリサーチでリアルに把握

一例になりますが、MRMWでコカコーラ社Maharaj Singh氏が発表した、飲用実態をモバイルリサーチでよりリアルに把握する取り組みもあります。
「どの時間帯に何が飲まれているか?」「家なのか、それ以外の場所か?」「食事と一緒にか、ドリンクのみでか?」「どういったオケージョンなのか?」といった今までのリサーチではリアルさが不十分だった部分にもメスが入り、よりリッチな情報になったとの報告がなされています。
そして、意外と見落とされがちですが「電話ができること」がスマートフォンのメリットであり、簡単な電話インタビューへつなげることも可能です。他の報告でそのことも触れられていました。
この事例以外にも、海外ではリアル、リッチな情報が得られるモバイルリサーチへ熱い期待が寄せられているようです。
●一方、日本では

日本では、PCでのWebリサーチが主流であり、モバイルリサーチになると同じデータが取れないことを懸念され、今一つ盛り上がりに欠ける状況となっています。
PCとの最大の違いは、モバイルでは「一画面に入る情報が少ないこと」であると言われ、「スクロールしないと見えない部分をちゃんと見てもらえないのではないか?」と懸念する声が大きいようです。
私も、モバイルとPC両方にまたがる調査を行ったことがありますが、モバイルの画面を意識し、質問ボリューム、質問文、選択肢などをできるだけ短く・コンパクトにすることに心血を注ぎました。
そうなると、何十問という質問、長い質問文、選択肢で行っている調査のモバイルへの置き換えは、そうすんなりとはいかないかもしれません。ただ、日本でも「50問の調査をモバイルリサーチで行った」との事例もあり、「置き換えできない」…は言い過ぎのようです。
●「置き換え」しかないのか

ここで再度MRMWに目を移しますと、「Googleグラスをリサーチに使えないか?」という議論までなされていました。これは既に「既存リサーチとの置き換え」という発想ではありません。
つまり、置き換えではなく、「モバイルで新しい取り組みや、よりリッチな情報が得られないか?」といった発想であり、「置き換えるばかりがモバイルリサーチの使い道ではない」ことが分かります。
●日本の事例 リアルな購買履歴の把握など

日本では遅れているとはいえ、モバイルを活用した取り組みがないわけではありません。
「アプリの機能を最大限に使う」発想もあり、家計簿アプリと連動させ、購買履歴をそのままリサーチのデータにしてしまう取り組みも行われています。これはリサーチをする時に初めてデータを集め始めるわけではなく、日常的に常にデータを収集しており、そこを切り取って使用する発想となります。
※上記、「SCOOP」のご利用については、弊社にお問い合わせください。
他にもmixiリサーチ「PoPolly」といった綺麗な画面で、楽しく簡単な質問を行うタイプのアプローチもあります。
●MROC

そして何より日本でモバイルがリサーチで活用されているのは、「MROC(Marketing Research Online Community)」ではないでしょうか?
日常的に生活の中で話題が進んで行き、写真の投稿もあり、モバイルが大いに活用されています。PCとクロスプラットフォームとなっており、あまりモバイルリサーチとして紹介されないのですが、実はモバイルが大いに活躍している分野です。
●総じて

こうやって見ていますと、日本でも様々な取り組みがあるように思えます。しかし、日本では「これからはモバイルリサーチだ!」というムードにはまだ感じられず、そういった会話もあまりなされず、調査の本数で見ても「火がついている状況」ではないと言えそうです。(※MROCは大抵モバイルリサーチにカウントされません。)
とはいえ、冒頭のYahoo!へのアクセス状況を見ても、これからモバイルがプラットフォームとしてPCを上回るのはほぼ間違いなく、まずはモバイルに向いていそうなことから始め、モバイルリサーチの適用範囲を探るべき…と言えるでしょう。
PCでの「Webリサーチ」も初期はPCやWeb、IT関連の話題であれば、ターゲット層と一致しており、妥当なデータが得られるだろうと言われていたように、「モバイルリサーチ」も「どういった対象、分野、用途の調査に適していそうか?」を考える時期に来ているのではないでしょうか。