株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
取締役フェロー 澁野 一彦
◆「アクティブシニア(健常シニア)」を細分化してみる

『シニア層(65歳以上)の大半は、アクティブシニアである』は、都市伝説?
以前当メルマガで書いたように、現在65歳以上の8割が、また75歳以上でも約5割の人が、日常生活を行う上でとりあえず健康を維持した生活をしている。(厚労省平成24年度『国民生活基礎調査』より)
ただ一方で、65歳以上の高齢者の半数近く(46.6%)が、健康状態について何らかの自覚症状を訴えており(有訴率)、病院の通院者率も高齢者では69%にのぼる。(同調査より)
当社で定期的に実施している「シニアライフ・センサス」調査では、65歳以上の高齢者に「日常生活に不都合を感じる点」を聞いているが、昨年の調査でも「生活上で何かしら不便がある」と回答した人が約半数存在した。
また当調査では、65歳以上の約4割が「健康に自信がない」と回答している
我々はいつの頃からか、今の高齢者を一括りで「アクティブシニア」と呼んでいる。
しかし、現在健康を維持した生活を営んでいる高齢者(アクティブシニア)も内実は、それぞれの健康状況の差異が大きく、実際には生活機能に何かしらの不具合・不安を感じて生活している人達である。
「みずほ銀行産業調査部ライフケアチーム」が、日本の高齢化と生活産業という視点から「アクティブシニア」を考察した興味深いレポートを発表している。
このレポートの中で、要介護など認定シニア以外の高齢者(83%)の中で、ハイリスクで今後介護認定を受ける可能性の高いグループを「メザニンシニア」という言葉を使って定義し、「アクティブシニア」のうち30~40%が、この「メザニンシニア」に該当するとしている。
メザニンシニア.jpg
出展:厚労省「介護予防事業支援事業(モデル事業)」HPを参考に みずほ銀行産業調査部が作成
「メザニンシニア層」が30~40%も存在するのか議論の余地はあるが、認定シニア以外の層を全て一括りで「アクティブシニア=元気な層」とするのも甚だ疑問である。むしろ「アクティブシニア」を健康状態でセグメント
することで、(介護)予防需要をターゲティングすることが可能になる。
「メザニンシニア」とは、生活機能の低下が心配される高齢者、将来認定シニアになる危険性の高い層をいう。
具体的には、「栄養が偏っている」「お茶や汁物でむせる」「買い物の釣銭が合わないことがある」「薬の飲み忘れが多い」「気分的に落ち込んでやる気がおこらない」「楽しんでやれていたことが楽しめない」「近所付合いが減った」「家で一人で過ごすことが多い」「椅子から立ち上がるのが大変」「階段や段差の昇り降りが大変」「トイレまで間に合わない」などの特徴がある人のこと。
このような人を特定できれば、疾病予防・介護予防などの身体的なケアや健康増進等の支援によって、心身の健康が維持でき、要介護認定を遅らせることが可能になり、社会保障費の抑制にもつながる。
今後団塊世代の高齢化により「メザニンシニア層」はより拡大すると思われ、この層に対する生活支援、ケアなどのサービスの提供は、高齢者の予防需要として必要かつ大きなマーケットとなると予想される。
◆「メザニンシニア」対象の生活支援事業~民間のノウハウを取り込む

実は自治体の地域支援事業の一部として、要支援・要介護の恐れのある人を対象にした「生活支援事業」は既に行われている。(第二次事業) ただ、自治体の逼迫した予算、また限られた人員構成の中での実施の為、提供するサービスも限られ十分な成果は上がっていないのが実情である。
この「生活支援事業」の中には、健康増進・運動能維持や食生活改善・支援、教養・娯楽提供、医療介護予防などが含まれ、具体的サービスとしては、「スポーツジム、体操教室・・・」や「配食サービス、食材支援・・・」「囲碁教室・・・」「健康食品・OTC商品提供(セルフメディケーションサポート)・・・・」などが考えられる。
むしろ、このような事業は、民間業者の得意とする生活産業分野であり、民間のノウハウを充分活かせる事業である。また今後より超高齢社会が進行する中、直接高齢者と繋がり(拠点)を持つことで、様々なビジネスの拡がりも期待できる。
「アクティブシニア」の30~40%が、直近の介護予防マーケットだと考えると、そのボリュームは大きい。
また介護保険の給付対象が要支援も含め軽度者の利用が制限されていく方向にあるので、有償マーケットとしても期待できる。今までの自治体の支援事業は、区の社会福祉協議会やNPO法人が中心で、どちらかといえば給付金頼みの事業を前提とし、顧客(高齢者)主体のサービスになっていない。民間事業者がこの事業に本気で取り組むことが地域支援事業の見直しにも繋がり、社会課題にも貢献(CSR)できる。
次回は、この高齢者の予防マーケットへの民間企業の取り組み事例を具体的に紹介したいと思う。