株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
取締役フェロー 澁野 一彦
◆「健康寿命」と「平均寿命」

「平均寿命」ではなく「健康寿命」を伸ばそう!
いつまでも元気で長生きしたい。それは誰もが望む願いである。日本は「平均寿命」が世界トップレベルの長寿大国だが、長寿者には認知症や寝たきりなど日常生活に支障のある人も含まれている。
こうした中、「健康寿命」という言葉が今注目を集めている。(読売新聞記事より)
「健康寿命」は、生活に支障なく過ごせる期間の平均を示している。75万人を抽出した厚労省の『国民生活基礎調査』で、「健康上の問題で日常生活に影響がない」と答えた人の割合から算出している。
2010年の日本の「健康寿命」は、男性が70.42歳、女性が73.62歳であった。
厚労省によると(担当者インタビューより)
「健康な期間が長くなれば本人にとって幸福ですし、負担となる介護や医療の費用も抑えることができます。
生存期間を示す平均寿命(10年)は男性79.55歳、女性86.30歳。健康寿命と比べると、男性は9.13年、女性は12.68年の差があります。
この期間は日常生活に差し障りのある『不健康な期間』というわけです。」「平均寿命は医学の進歩などにより延び続けています。それ自体は大変喜ばしいことですが、両者の差の拡大は、寝たきりや認知症といった元気とは言えない不健康な期間が延びることを意味します。それでは生活の質が低下しますし、支える家族も大変です。」 
図1)平均寿命と健康寿命の差.gif
厚労省は、このデータを基に「健康寿命の延伸」を健康指標の目標とし、「平均寿命」との差を縮めることを目指している。
◆「6年後、元気でオリンピックを楽しもう」~東京五輪がシニアの「健康寿命」を延ばす?

東京五輪が開催される2020年。日本の人口ピラミッドでは、団塊世代を含む70代前半の膨らみが突出し、「健康寿命」のリミットを迎える団塊世代は、いよいよ現実的な衰えと向き合わざる得なくなる。
ただこの「東京五輪開催」は、シニアの「健康寿命」を延ばす原動力になるかもしれない。
6年後の2020年に開催が決定した東京五輪。(開催の良し悪しの議論は別にして)経済的な波及効果の期待とともに、生活者の心理や意識にも前向きでポジティブな影響を与えているようだ。
特に前回開催された東京オリンピックを経験した団塊世代やプレ団塊の人達にとっては、再度東京で開催するオリンピックは感動の再現となり、「生きていくための励み」にもなっている。私の周りにいる団塊世代の諸先輩達に、将来的な生活目標について聞いてみると、

・東京五輪までは、とりあえずボケずに元気でいたい

・東京五輪を、吉田紗央里と一緒に迎えたい

・東京五輪では訪日する外国人の世話をしたい

70歳まで(東京五輪の時までは)働き、質の高い生活を維持したい

・・・・・・。  


など、図らずも「東京五輪までは・・・」という声が多く挙がった。
以前当メルマガで書いたが、71歳のロンドン五輪代表の法華津選手は「次のオリンピックまでの4年という期間は何が起こるかわからない。先が見えない将来である」と言っていた。まして「東京五輪」は6年先である。若者にとっては、あっという間に過ぎるかもしれないが、シニアにとっては長い6年である。
加齢による身体機能の衰えや健康不安、また親や家族の介護など生活環境の変化は待ったなしに訪れる。それでも「東京五輪開催」は、シニアにとって長い6年という期間に具体的な目標を与えてくれる。そして「健康寿命」を伸ばすための大きなモチベーションになる。
東京都では、オリンピックでの外国人旅行者増加に備えて、シニアボランティアを育成するプランを起ち上げた。団塊の世代は海外勤務の経験があるなど、語学ができる人も少なくない。「東京五輪を盛り上げる意欲と時間のあるシニアの力を借りて、都民全体で五輪の歓迎ムードを高める」(都市民活動担当課)狙いのようだ。
「自身に身近な目標がある、自分が人のために役立っているなど自分に対してポジティブな(前向きな)イメージを持つ人は、老化のスピードが遅くなる」という研究成果(厚労省談)もある。シニアの「健康寿命」を延ばすためには、医療の進歩とともに、生き続けるための目標設定や前向きな考え方が欠かせない。