株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
定性調査部 シニア・ディレクター インタビュアー 吉田 聖美
表題の書籍を手に取ってみました。
モデレーターという職に従事している身としては「モデレーター」「定性調査」「インタビュー」などの記載がある書籍はとりあえず手に取ってみているのだが、今回も現役モデレーターさんが書いた本ということで、興味を惹かれて購入。
『モデレーター 聞き出す技術』 早尾恭子著(すばる舎)、この5月に発刊されたばかりの本です。いやぁ、当たりでした。モデレーターに関する本は、当然ながらモデレーターさんが書いた本ばかり、といっていいほどですが、その中でも非常に好きな本です。
私は自分を現場人間だと思っていて、学術的なことはさほど強くないのですが(もっと勉強すべきとは思っております、反省)そういう人にお勧めの本です。学術的な要素がなく、難しい手法なども何も書いていないので、さらさら読めます。私は1日の通勤時間で読破。
モデレーターとしてある程度のキャリアがある人にとって発見がある本ではありませんが、そうそう、そういうことだよね、と頭をスッキリさせてくれます。
そういえば、私は『マーケティング・インタビュー』(上野啓子著、東洋経済新報社)という本も好きなので、女性モデレーターさんが書かれている本が好きというのもあるのかもしれません。
読みやすさの要因はなんだろう、と思ったときに気づいたのは、文章の全体的なテイストが「話し言葉」なのです。文章自体に平易な言葉が使われており、自分に対して語ってくれているように書かれている。そして語り言葉が優しい。
演説や発表のように多数に向けて語られている印象がないのです。多分、このモデレーターさんは実際のモデレーションのときにも平易な言葉で問いかけを行っているんだろうなと想像できます。
また、具体的な事例が多いのも特徴です。こういうときはこう、という例が具体的に記されています。たとえば『こんなピンチはこう乗り越える』という項目では、対象者が腕を組んで批判的な姿勢を見せている場合にかける言葉なんていうのも取り上げられています。
もちろん、正解はないのでしょうが、本に取り上げられていた言葉、私も使うことがあり、共感したので載せておきます。
批判的な姿勢を見せている対象者に対しては、「あ、考え込んじゃう?」「テンション低くなってきた?」など、明るく冗談っぽく言うことで、その人のことを気にかけていると思わせること、だそうです。でも、この言葉かけ、結構ハードル高く、私もできるようになったのは、つい最近のような気がしますが。。。
モデレーターの仕事は当然ながら守秘義務が多く、具体的な事例を紹介しにくいという限界はあったかと思います。題材は具体的な商品ではないのですが、モデレーターと対象者とのやり取りはとても具体的で、そうそう、そういう場面ある、と思うことばかり。
言葉かけについても、前述のような上級者向けのものから、初心者にもできる内容までレベル感がバラエティに富んでいるのも魅力の1つです。
と、他社のモデレーターさんの書籍の紹介をするのもどうだろう、という思いはありますが(笑い)素敵な本だったので、紹介してみました。
私にとっては、「平易な言葉で」「具体的に」ということが、モデレーションにも、その他の場面で人に伝えるときにも、基本的なこととして大事にしなければいけない要素であるということを改めて感じさせてくれた本でもありました。