株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 シニアディレクター インタビュアー 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)
弊社のお昼事情。
普段の短い昼の休憩時間を男性たちは、どのように過ごしているのか。
悪趣味かもしれないが、1年間くらいかけて社内の男子たちのランチ状況を参与観察※1した。ランチに同行したり、持参弁当をチンするためレンジの前で一緒に並んだりしながら、観察眼を凝らしていた。実に興味深い行動や心理が見えてきたので、この場でレポートしたい(社内の男性の方々へ・・ごめんなさい)。
行動パターンは、「食べる」「寝る」「読む」の3つ。女性よりもパターンが決まっているようである。
女性の行動パターンと比べると、男性は広がりがない。女性の場合、自分を例にとっても、「食べる」「寝る」「読む」の他、「エステに行く」「習い事(ヴォイトレ)に通う」「買い物をする」「同僚としゃべる」など、様々な過ごし方をしている。
本稿では、男性の「食べる」行為に注力し、参与観察&インタビューした結果をまとめる。
弊社には、
 「(1)会社のレンジで愛妻弁当をチンして食べる男子」
 「(2)時間になるといち早く会社を出る二人組」
 「(3)おにぎりとカップ麺などをCVSで買ってきて席でそそくさと食べる男子」
 「(4)時間帯をズラして1人でランチに出かける男子」
 「(5)毎度決まった食堂で温かいお弁当をテイクアウトして食べる男子」
 「(6)昼は食べないという男子」                         などがいる。
雑談を装い、「どこで何を食べているのか?」「昼の時間帯をどう過ごしているか?」をヒアリングした。
(一応、プロのインタビュアーなので、自然に聴き出せたと思う)。

まず、お弁当派の男性から。
(1)いつも愛妻弁当を持参する彼は、「おこづかいは月3万。節約のため、持たされる」妻にお金と胃袋を抑えられつつも、「毎日準備するのはたいへんだと思う。作ってくれるのはありがたい」と妻への感謝の気持ちを言い添える。
また、「お弁当の方が節約になるし、栄養バランスも偏らない」節約と健康のベネフィットを挙げた。ホンネはどうなのかを深掘りすると、「飽きる時もある。たまには外でがっつりラーメンとか食べたい」とマンネリ感は否めない様子。
続いて、外食派の男性。
(2)二人組男子たちは、「行く店が決まってきている。似た店をローテーション。渋谷はチェーン店が多くて食堂的なところが少ないんだよねぇ」と、渋谷周辺に食堂やレストランが少ないことを嘆いていた。
(3)CVSでおにぎりやカップ麺などを買ってきて席で食べる男子は、「忙しくて食べている時間がない」と、時短メリットを考えての行動と解説した。
(4)時間帯をズラして1人ランチに出かける男子は、「12時台は混んでいるから、その時間帯を避けている」混雑回避を訴えた。よくよく話を聴くと、「会社の人たちと同じ店で合うとバツが悪い時がある。こっちは1人だから・・」と孤独な外食時間を知りあいに見られたくないという心理も働いているようだった。
(5)毎度決まった定食屋でお弁当をテイクアウトする男子は、「近くで一番安くてボリュームがあるから【**食堂】で買う。店のおばさんとも知り合いになっているし・・」と、その店に行くことが習慣化している。つい深掘りしたくなり、もう少し突っ込んで聴くと、「他に何を食べていいか分からない」困惑している様子がみられた。
「考えるのが面倒くさい」とさえ、感じていた。まるで、「夕飯を作るのはいいんだけど、メニューを考えるのが面倒・・誰か代わりにやってくれないかなぁ」という主婦の思考停止・逃避願望発言と似ているではないか
(6)ランチを抜いている理由として「最近、食に対して興味がなくなってきた」マーケターらしからぬことをいう男子がいたことにも驚いた。食べることが大好きな私は「ランチに〇〇を食べるために、ここまで仕上げよう」と小さな餌をぶら下げて仕事の効率につなげることもあるので、食に関心がないことが不思議でならない。

この参与観察&社内インタビューから、「満足感の高いランチをしている男子はいなかった」※2ということになる。
特に外食派は、「時間がない中で何を食べるか」「一斉に大勢の客が飲食店に駆け込むため、どこも混雑している」という時間的にも場所的にも選択肢が少ない悪環境の中で、ランチ難民※3になっていた。
昼食にありつくのが困難な中、外食派のランチ難民男子より、愛妻弁当男子の方が行動は狭く見えるが、心は豊かかもしれない。
2009年あたりから注目されている、いわゆる自作弁当男子※4は、弊社内にはいなかったが、コンパクトなのに大容量であったかくておいしい魔法瓶弁当箱、木の香りが食欲を高める曲げわっぱ小判弁当箱など、弁当男性のために企画されたお弁当箱の売れ行きが好調であったり、弁当男子のためのレシピ本が発刊されたり、弁当男子周りの市場は定着してきているという。
渋谷の一角にある会社の参与観察&インタビュー調査から、「どこに行こうか」「何を食べようか」とランチに迷う男子たちの実態が明らかになった。食事の場や時間(≒食卓)に余裕がなくなっているのは、家庭内だけではなかったのだ。
食に対して遊びがない男子たちではあるが、「コンビニやテイクアウトの活用」「時間帯をズラす」「弁当を持参」などの解決策や工夫を見出している点に注目したい。
これらの回避行動の裏には、表面には見えてこない普段の生活で抱えている問題や無意識がある。マーケターは、無意識のうちに課題を立てたことや無意識のうちに解決策をとった行動を見逃してはならない。負の要素が多いと、解決の仕方や行動が大きく変わりやすいとも思う。
生活者に密着して、マーケターがその行動や思考のプロセスに気づくことこそ、大きなヒントにつながることがある。
今回の例からは、車による移動型の飲食店や弁当販売が成功している理由が納得できる。最近では「OFFICE DE YASAI」のステッカーを貼ったバイクが渋谷の街を走っているのをよく目にするようになったが、今後もますます「オフィスDE食」というデリバリーサービスは充実していくことが予見できる。

※1参与観察:研究対象となる社会に、数か月から数年に渡って滞在し、その社会のメンバーの一員として生活しながら、対象社会を直接観察し、その社会生活についての聞き取りなどを行うこと。詳しくは、「社会学のすゝめ(第一回)」「リサーチ道場(その8)」を参照。
※2「食べる」以外の「寝る」「休む」「読む」などに価値を見出している男子もいるため、「満足度の高いランチでなくても構わない」という意見もあると思うが、今回は「食べる」ことに注力したレポートとなっていることを付け添えておく。
※3ランチ難民:就業中の休憩時間に昼食が取れない人を俗にいう語。オフィス街などの周辺に飲食店が少なかったり、常に混雑していたりして、昼食をとりそびれてしまう人々のこと。
※4弁当男子:「エコ」「節約」「健康」を目的に、ランチタイムの外食を控えて、自分で調理した昼食を会社に持参する男性のこと。