株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー

取締役フェロー 澁野 一彦


◆老い患いと恋煩い~


前回のメルマガで取り上げた 怪しい「独居老人」達の激しい生きざまとうって変わって、老いの豊かさと哀しみを、なんとも瑞々しくのびやかに詠う。 95歳の歌人 宮英子さんの句である。

 老い患ひ 恋ひわづらひに似て非なり なつかしよ過ぎし人を思ふは

宮英子歌集『青銀色(あをみづがね)』より
 

青銀色.jpg

こんな愛おしい気持ちを持ちながら歳を重ねていけるなら百歳までも生きてみたくなる。(弊社女性スタッフ)


昨年出した歌集「青銀色」(上記歌集)と長年の功績で、2013年度の現代短歌大賞を受賞した。
戦後を代表する歌人であり、夫で歌の師であった宮柊二(しゅうじ)氏が逝って27年になる。後を継いで発行人を務める短歌誌「コスモス」は60周年を迎えた。(朝日新聞「ひと」欄)


「こんなに続いたのはみなさんのおかげ。私は一番後ろからついていっただけ。・・・・これからも私は皆さまの後から、ゆっくりついてゆきたいと思っています。この歳(95歳)になってもいろいろなものへの興味や好奇心が尽きず、体が許す限りフランスにも行きたいと思っています。飛行機に乗ってしまえばあっという間に着きますから、国内旅行より楽です・・・・。」(寄稿「これからのコスモス」より)


海外旅行とワインが彼女の元気の源だそうである。


 高齢の我儘なれど許されよ。見たい行きたい。見ようよ、行かう

同歌集より


かつては80歳代頃でもシルクロードやアジア各国を、また娘さんの住むフランスにも毎年行かれて、更なる豊かな感性を磨いたそうだ。「古物商の青銀色(あをみづがね)のガラス瓶なみだ壺とぞシリアを旅して」はそんな得がたい旅のひとこま。歌集のタイトル「青銀色」は、シリアで買ったローマングラスのこの小さな壺(つぼ)の色。青でも銀でもない「あをみづがね」と名付けた。


現在、孫4人にひ孫2人。近くに住む娘らの助けを借りつつ、東京・三鷹台に独りで暮らす。
昨年12月弊社で行った【シニアライフに関する定性調査】でもそうだったが、単身女性の高齢者(特に年代が高い女性)は、家族同居世帯に比べて活動的で逞しい人が多い


その他にも、これからの(余りある)人生を ユーモアを交えながら詠む

 許されて九十余年をあるがまま 生きながらへて現在晩年
 生き生きて すこやかに歳いただけど 更なる未来どうでもよろし
 手ざわりの なめらかなれば新しき手帳はよろし 期待を秘めて

いまや日本人の平均寿命は、女性が86.4歳で世界一。男性も79.9歳(2013年現在)。
100歳以上の方も現在全国で5万人を超える。


進行中の「老い」をネガティブにとらえるのではなく、ちゃんと受け入れることで、これからの時間を明るく豊かなものにする。90歳からの時間を これほど充実させて生きていけることは本当に羨ましい。
まさに「プア充」ならぬ「さとり充」の"老い"である。
健康でないとなかなか難しいが、いつまでも英子さんのような瑞瑞しい感性とパワフルな生命力を持ちたいとつくづく思う。


~このコラムの最後に私事で恐縮ですが、小職、先月2月28日(前期末)を持ってJMAの代表職を退きました。後任の代表職は、30年余り一緒にJMAを引率してきた常務の中村登が引き継ぎました。


弊社で代表職を拝命し15年に及ぶ長きに渡り、皆様には大変お世話になりましたことを感謝いたします。今後は、JMA取締役フェローとして、介護福祉事業並びにシニアの生活研究に専念致します。


英子さんの句から、

 迂闊(うかつ)にも長く生きしは我が器量ならず 日々が連続偶然めいて


自身の心境に近いイメージです。今後も、メルマガで当コラム(JMAマーケティングコラム)は続けて参ります。
JMA、並びに当メルマガを引き続きご愛顧の程よろしくお願い申しあげます。