株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー

企画部 シニアディレクター インタビュアー 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)

「ズキズキ痛い」「ズキンと痛む」「ヒリヒリ痛い」「チクチク痛む」など、痛みの質をオノマトペ(擬声語)※1で診察する医療の試みがなされている。これは、人の感情と直接的に結びつく言葉に含まれる情報を客観的かつ定量的に評価する研究で、【メディカルオノマトペ】といい、痛みを判別する指標として用いられている。


直感的・感性的表現(オノマトペ)をいかし、患者の痛みの量と質を定量化し、表現尺度を多言語化して問診を支援する【オノマトペによる感性評価システム】なるものも出てきているらしい。
素人でも、「ズキズキ」は持続的に芯から痛む感じ、「ズキン」は瞬間的な痛さ、「ヒリヒリ」は炎症を起こしているようなさま、「チクチク」は表面に違和感がある感覚がイメージできる。


人間福祉テクノロジー研究ステーションの発表によると、痛みは直感時に発するオノマトペと合致しているという結果も出ている。症状が可視化されることによる問診の円滑化への医療従事者からの期待は大きいであろう。


日常生活のあらゆる場面でも、オノマトペ表現とはよく出会う。例えば、食事の時に「もう少し召し上がりませんか」と言われたら、「もうお腹いっぱいなので結構です」というよりも、「いや~、もうお腹パンパンなんですよぉ」とお腹をさすりながら返す方が、座が和む。この時の和みの主な理由は、「パンパン」という肉体表現。ココロの声まで伝わってくるようだ。


インタビューの場でも、擬声語は参加者、もしくはインタビュアがよく使う言葉である。グループインタビューでは表情・しぐさとセットでオノマトペを用いるとより効果的だが、表情・しぐさが見えないオンライン上のコミュニケーションでも場を和ませるのにオノマトペをよく用いる。
MROC(Marketing Research Online Community)では、「キリッ( ー`дー´)」「キラーン( ̄ー+ ̄)」「ゲラゲラ(^∀^)」「トホホ(*´д`*)」「キュン! (*´∀`*)」などの絵文字とオノマトペを組み合わせて盛り上げる。


オノマトペの役割を整理すると、会話やコミュニティにおいて効果的なワケが分かる。
 


(1)感情が素直に伝わる
「ドキドキ」「スタスタ」「ベトベト」「ニヤニヤ」などは、人やモノの様子を表す言葉で「擬態語」。擬態語は様子を表現するので、その人やモノの様子がダイレクトに伝わりやすく、どんなシチュエーションなのかを容易に判断できる。人の感情やモノの様子が伝わりやすいという特徴があり、普段の生活から意識しないで使っているなじみのオノマトペである。
擬態語の中でも、「イライラ」「ウキウキ」「ワクワク」「ソワソワ」などの人の感情や心理状態を表したものを「擬情語」と呼ぶこともあるらしいが、リアリティのある気持ちが分かりやすく伝わる。


(2)軽快で親しみやすい
「カーカー」「バタン」「ジージー」「モーモー」「ガチガチ」などは、人に聞こえる音を表す「擬音語」。擬音語はモノそのものを表現する言葉なので、なじみやすく親しみやすいという特徴がある。また、音を表現する言葉なので、擬態語に比べて直接的な表現に用いられることが多いため、状態をイメージがしやすい。


(3)曖昧さを回避できる
前述した「ズキズキ」「ズキン」の他、「キラキラ」「ギラギラ」などの細やかなニュアンスの違いを表すときにもオノマトペは向いている。「キラキラ」も「ギラギラ」も輝きを表現したオノマトペだが、「キラキラ」はイキイキと輝いている肯定的な様子、「ギラギラ」はどぎつく光り輝く様が浮かび、度を超えた否定的なニュアンスになる。


(4)インパクトがあり、飽きない
「キュン」「ビビッ」「ビンビン」「ガーン」など、生活の中で氾濫しているオノマトペは簡単で強さがあり、目の前や心臓などの全身にその音や容態が響いて体験できるような描写力である。言葉の説明だけでは表現しにくいこともリズミカルなオノマトペで話すと、直観的に分かりやすく表現できる。そのため、聞き手にとっても情景や状況がイメージしやすい。
面白く伝えるコツでもあるため、会話が単調にならずに飽きの来ない話し方になり、聞き手を退屈させない効果もある。




伝達力に優れており、インパクトが強い印象を与えることができるから、オノマトペは商品名や標語、キャッチフレーズとも相性が良い。「ニコニコ動画」「ガリガリ君」「ほっかほっか亭」「ごきぶりホイホイ」「プッチンプリン」「クー」「ピタッとハウス」「メガシャキ」「じっくりコトコト煮込んだスープ」「ピカピカの一年生」など多数のヒット商品をみても、擬音語・擬態語のネーミング効果は高いことが分かる。


簡単なお知らせのようなものでも、オノマトペを組み込むことによって、印象が強くなり、記憶にも残りやすくなる。何かを報せる、アイデアを募集する、注意を喚起する、何かを頼む、そんな時にオノマトペは効果を上げるといえそうだ。



論理や理屈といったものよりも、感覚や感性が優位の時代だからこそ、ココロの声を表しているオノマトペは今後ますます必要とされてくるのではないか。
感覚や感性の先にあるものは感情であり、欲望・欲求であることも忘れてはならない。コミュニケーションとしての活用だけでなく、人の気持ちを理解する上でも、直感的に発せられるオノマトペに注目して耳を傾けていこうと思う。



※1オノマトペ(onomatopee):「擬声語」を意味するフランス語。「擬声語」とは「擬音語」と「擬態語」を包括的に示した言葉である。言語の根底にある文化、音感、リズム、表現みたいなものがぎゅっと凝縮されている。物事の声や音・様子・動作・感情などを簡略的に表し、情景をより感情的に表現させることの出来る手段として用いられる。