株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
代表取締役社長 澁野 一彦

◆「老いらくの恋患い」~奔放なシニアの恋愛


読売新聞の名物コーナー「人生案内」で、長寿社会を反映してか70代以上の相談が増加している。長引く親子関係・家族関係の確執などとともに、最近は高齢者の恋愛についての悩みが多いという。
昨年9月16日付けの当「人生案内」から

独り暮らしの90代の女性です。3年ほど前に、20歳近く年下の70代の男性と知り合いました。彼は「年の差なんて、関係ないよ」と言ってくれ、私もほっとしておつきあいをするようになりました。互いの家も近く、
1日に2度も来てくれるなど、楽しい日を過ごしていました・・・・・。
(この90歳代の女性の恋は、彼が入院してから様子が変わる)
入院費の工面に悩む彼にお金を貸し、さらに生活費まで無心されたので、「借用書を書いて」と頼んだら、その後連絡が途絶えてしまいました。「きついことを言ってしまったのでしょうか。私は彼を好きなので、寂しくて悲しいです。教えてください。」


これに対して回答者は、「節度ある諦念も必要である」と答えているが、生涯年齢が50年から90年時代に突入し、残りの長い人生を有意義に暮らしたいという願う高齢者が男女関係に悩むのも当然かもしれない。騙されているか切ない恋心と考えるかは本人次第である。「夫はストレス」(弊社シニアライフセンサス調査)などシニアの夫婦関係が希薄化している中、新しく始まった恋愛に関しては幾つになっても盲目になる。


《「人生案内」の見出し抜粋》

「年下の彼に女性の影(?)」~70代女性からの相談
「20年前、夫が初恋の人と旅行」~80代の女性
「亡き妻の友人に愛を感じる」~80代の男性
「知人女性 妻にない魅力」~公務員を退職した60代男性らしい
「不倫の夫に仕返ししたい」~60代後半の主婦。
「彼の女性関係が不安」~70代女性
「年下の彼と疎遠」~90代女性

上記は「人生案内」で昨年取り上げられた相談の「見出し」。若い世代の恋愛感情が希薄になる中、高齢者(一部?)はいつまでも活発(肉食系)である。
高齢者(かなり高年齢の方が多い)からの相談で、「同居の親子の仲が悪い」とか「妻からゴミ扱い、蒸発したい」などそれはそれで気になるものもあるが、何といっても色恋沙汰の相談は、パワフルで生々しい。


その他にも、70代男性が年下の同性への未練を綴るなど、従来の常識では収まらない恋愛関係が高齢者でも顕在化している。高齢者のシングル化が促進することにより(孤立化、孤独)、寂しさから恋愛感情を抱くようになる。妻に先だたれた70代男性の相談で「彼女を探したい」という。単身世帯が増加するこれからの長寿社会。独り身の寂しさから、誰かとともにいたいという願いはますます増えるだろう。



◆高齢者にとっての色恋(沙汰)は?~恋の刺激は脳を活性化


昨年7月、兵庫県姫路市の老人ホームの入所者の75歳の男が、同じホームで暮らす82歳の女性の首を切りつけ、 全治1か月の重傷を負わせるという事件が起きた。 「彼とは普通の友達でいたい」(女性の話)。~別れ話が原因であった。
2人は4月ごろ(2013年)から交際していた。一緒にテレビを見たり、外出したりしていたが、女性のほうは最近、施設の職員に対して「(男とは)普通の友だちでいたい」と打ち明け、その気持ちを職員を通じて男に伝えた。

しかし、男は「はっきり理由を話してほしい」などと納得してない様子だったという。それを聞いた女性は身の危険を感じたのか、夜間、部屋に鍵をかけるように職員に依頼していたが、朝食後に自分の部屋で襲われた。男は容疑を認め、「(女性の)態度が急に冷たくなった」などと話しているという。(神戸新聞より)
老いても男女間の恋愛に関しては情熱的?である。


このような行き過ぎた事例もあるが、当「人生案内」の回答者は高齢者の恋愛には概ね好意的である。
~60代女性の「不倫の恋」の相談には
『別れねばならないと思っていても別れられない。それが「恋愛」と言うものなのですから、別れるための妙案など誰にあるはずもありません。・・・・ 。70代と60代。たぶん、人生いろいろあった末の「今」です。その「今」もどう展開するか分からないのです。私としては、もう、家庭とか世間とかを気にせず、奔放に悔いなく、楽しくおやりになれればいいのになあ、と思います。 ・・・・。別れられないのならあきらめて、ここはもう何がおきてもしかたがないと覚悟して、不倫の恋の切なさ、うしろめたさに悩み続けて下さい』(回答者)



●「恋愛」を高齢者介護のリハビリテーションで活用~以下WEB朝日より


岐県恵那市明智町にある「日本大正村」。その一角に市が運営する「明智回想法センター」がある。「回想法」はアメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が提唱した心理療法で、過去の懐かしい思い出を語り合ったり、誰かに話したりすることで脳が刺激され、精神状態を安定させる効果が期待できるというもの。
当センターでは、この回想法の実践活動として、高齢者対象の恋愛映画の試写会や語り合う会を実施している


○映画鑑賞会
♪花も嵐も踏み越えて~ 集落の広場に張られた幕に、大ヒット映画「愛染かつら」が映し出されていた。物語がクライマックスに差し掛かったころ、そっと隣の女性の手を握った。男女が公然と手をつなげない時代。何度もラブレターを出して誘った幼馴染み女性だった。この男性は、70年前の青春の一コマが今も離れない。


○語り合う会
お年寄りたちの聞き役を務める当センターの職員は「男女5対5(合コンタイプ)の時が一番盛り上がります。
特に恋愛話が一番」と話す。ここでは高齢者が昔話を楽しむ2カ月間の「回想法スクール」を年1、2回開く。
「恋愛経験や学校の思い出」などテーマごとに計8回昔話を輪になって語り合う。「みんなで話すと連想ゲームのように昔の記憶がよみがえる」と喜ぶ。


●「脳の血流100倍」


認知症を研究する専門機関である国立長寿医療研究センターでは、近赤外線分光法を使った機器で高齢者の脳の表面に流れる血流量を調べた。日常会話では血流は増えないのに、小学生の時に先生にほめられたことなど、昔の自慢話になると何十倍にもなり、恋愛の話に及ぶと100倍近くまで増えたという。
同センターは「昔のことを思い出すことが、脳に刺激を与えることが分かってきた。これを活用したのが回想法」と説明する。 


高齢者福祉の世界では「QOL」ということがよく使われている。「Quality Of Life」の略で、ただ生きているだけでなく、生活の充実を目指す言葉である。この「Life」を「Love」に置き換えて『Quality Of Love』。
高齢者の恋愛の充実は、シニアライフを向上させる『充』のアプローチの一つである。