株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー

代表取締役社長 澁野 一彦

◆シニアも「プア充」の時代に~「絶望の国の幸福なシニアたち」


「プア充」とは、「欲を持ちすぎず、無駄な出費を抑え、社会の恩恵をうまく利用すれば、裕福でなくても(年収300万円でも)、豊かで楽しい暮らしができる」(提唱者:宗教学者の島田裕巳氏)


リアル(現実)が充実しているという「リア充」から派生した言葉。ストレスなしで働きながらソコソコ幸せに暮らす。プアは貧乏、つまりそんなに裕福ではないけど、結構幸せに暮らしている人のことである。
~この考え方が今どきの若者を中心に支持されているそうだ。


社会学者の古市憲寿氏の「絶望の国の幸福な若者たち」(2011年)の中で 20代の若者の約7割が現在の生活に満足している(「国民生活に関する世論調査」より)ことを紹介し、その理由を「今日よりも明日がよくならない」と思うから、人は「今が幸せ」だと答えるのではないかと分析している。


正規雇用が少なく、派遣切りなど不安定な雇用で大変な苦境にあるはずの若者が「やせ我慢ではなく、今に満足している」とは驚きであるが、それが実像なのである。


この若者の意識は、今の日本の高齢者にも当てはまるようだ。



◆生活に「余裕はない」が「まあ満足」というシニアが増加傾向


「シニアライフ・センサス2013」から再掲。《シニア・高齢者層の生活意識(暮らし向き)について》弊社で今年実施したシニア対象(55才以上)の調査でも、現在の高齢者の生活の満足度は約7割で、若者とほとんど同じである。ただ、「経済的余裕」に関しては、逆に6割の高齢者が余裕がないと答えている。


この生活意識(暮らし向き)に関する2つの指標を重ねてみると、
 「余裕があり満足」(今年38%←昨年39%)、
 「余裕はないが満足⇒「プア充」)(37%←31%)、
 「余裕がなく不満」(23%←27%)と3分割。
昨年に比べ、「プア充」シニアが増加している。

図表1「プア充」.gif

今回の調査(JMA「シニアライフ・センサス2013」)で「プア充」(余裕はないが満足)の平均貯蓄額は、1212万円で、全体平均(1875万円)よりかなり少ない。それでも若者よりまだ裕福そうに見えるが、これから20年近くこの預貯金と年金だけで生きていかなければならない。
将来の社会保障不安や自身の老化に照らし合わせながら、若者同様「今日よりも明日がよくならない」と思うから「今が満足」と考えているのであろうか。この「プア充」の割合は、年齢が高い女性=後期高齢者で最も多くみられる




◆『現在はまだそれなりの自由を満喫している』(後期高齢者女性)


「現在の生活の不安・不都合な点」に対する自由回答。(JMA「シニアライフ・センサス2013」)自身を「プア充」(「経済的余裕はない」が「満足」)と意識するシニアの自由回答として、

図表2「プア充自由回答」.gif

などが挙がっている。
いずれも、自身の経済状況や将来的な不安要素はあるものの、「負を受け入れる」ことで逆に「生活を充実させて生きよう」という想いが感じられる。



◆「プア充」を生きる~そこそこ充実した生活が送れるサービスを上手に利用


デフレが20年も続き、企業は安くてそこそこ質の良い商品を提供する努力を続け、そうしたサービスの質は格段に高くなった。


昼食に280円の牛丼を食べ、夜は高級ワインは飲めないけれど、1000円もあれば格安ワインや第三のビールを夫婦で楽しめる。また、休日には100円も払えばTSUTAYAでDVDを借りられ、準最新作の映画を鑑賞できる。高級品・サービスとの差異がどんどんなくなっている。シニア層も、この低価格商品や手サービスの恩恵を上手に利用している。


下記は、高齢者の購買意識・行動の上位である。(JMA「シニアライフ・センサス2013」)


図表3「プア充購買意識」.gif

前回メルマガでも述べたか、シニアの消費行動にもこのような合理的で賢い消費行動が浸透し始めている。
これから10~20年後に、公的年金がもらえるかどうかもわからない。今日より明日がよくなると確信できないシニアにとって、安くて良質の商品やサービスが調達できるのならそれに勝る幸せはない。多少遠くても格安スーパーや100円ショップにも通う。このような「プア充」のシニアが今後増えていく。


ここで言う「プア充」は、所謂「貧困層」とは異なる。工夫すればソコソコの生活が送れるシニア層たちである。
今後超高齢化社会がますます進展する日本にとって、「余裕がないが満足である」と思えるのであれば、それは「幸せ」なのではないだろうか。


国をあてにできない現在、普通の「プア充」シニアを支援できる商品・サービスの提供が企業に求められている。