株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 ディレクター 牛堂雅文

●コンジョイント分析


商品コンセプトを決める際に、「いくつかの組み合わせから、欲しい製品を選択させること」で、各要素の重要さや妥当な組み合わせ、価格設定などが判断できてしまう手法がある…といったらどう思われるでしょうか?
今回はそんな夢のように思える手法、「コンジョイント分析」をテーマに取り上げます。



●トレードオフと、コンジョイント分析の事例


そもそも、「全部入りの製品」が安く提供できれば良いのですが、実際にはトレードオフ(こちらを立てるとあちらが立たず)の関係があることが多く、どういったスペックとするのが最適なのか?その場合の妥当な価格は?という課題があります。


コンジョイント分析で例に出される物としては「不動産」があり、「駅から徒歩何分」「広さ」「間取り」「日当たり」「築年数」「家賃」など、どういった組み合わせであれば良いのか?…といった課題に対して用いられます。


旅行でいえば、「出発日」「滞在日数」「ホテルのグレード」「オプショナルツアーの有無」「総額」などでしょうか。


自動車であれば、「燃費」「排気量」「衝突防止装置」、「ワンタッチオートスライドドア」「サンルーフ」といった各要素の組み合わせと価格設定の絶妙なバランスが問われます。


「何を標準装備として、どの程度の価格で発売すれば最も販売台数が多くなるのか?」こういった課題に対して、通常のマーケティング・リサーチの手法はあまり効果的ではありません。


なぜなら「こちらの装備を付けると、あちらの装備がなくなる、もしくは費用が高くなる」といった【トレードオフの関係】、言い換えると【究極の選択】のようなシチュエーションを通常のマーケティング・リサーチでは再現しにくいためです。

そこで用いられるのが「コンジョイント分析」です。


この手法の特徴は、上記のような属性を組み合わせた「商品コンセプトシート(プロファイル)」をいくつか作成してしまい、「製品A 、製品Bのどちらが買いたいか?」「では、製品Cと製品Dではどちらが買いたいか?」といった【選択】を元に聴取をしていくことです。(一対比較の場合) 対象者は単純に欲しいものを選んでいく…といった回答方法となります。


(※コンジョイント分析には一対比較以外にも様々なタイプがあり、使用するソフトウェア(SPSS、ACA、CBC等)によっても多少手順が異なります。)


コンジョイント分析1.gif

●属性、水準、直行配列


なお、上記でいう「排気量」「燃費」などの部分を「属性」、「1500cc」「1800cc」といった選択肢的な部分を「水準」と呼びます。
 


ただ、どういった「属性」、「水準」を設定するのが適切か?…という点が思いのほか難しく、「属性」同士がお互いに「独立の関係」にある必要があります。 (※この例では排気量と燃費に関係性がありそうであり、独立かどうかやや怪しいかもしれません)
また、「属性」や「水準」が多すぎると「商品コンセプト」というよりは「スペック表」を見せられているのに近づき、間違い探し的となり選択自体が苦行になってしまいます。


「どういった組み合わせを呈示するのか?」については何十、何百という全組み合わせを作成してしまい、延々と選ばせ続けるのは現実的ではないため、実験計画法の「直行配列」を用いて組み合わせの数を減じることが多いようです。 (他にもソフトウェアの工夫で冗長さを回避する例も見られます。)



●効用値、アウトプット


上記は1対1の「一対比較」の例をご紹介しましたが、3つ以上の群から選ばせる方法や、20位の商品コンセプトカード(プロファイル)を欲しい順に並べさせる、評定尺度で聞くなど、コンジョイント分析にはいくつかの呈示・評価の方法があります。
SPSS、ACA、CBCといった使用するソフトウェアによっても異なりますのでご注意ください。(言い方を変えるとソフトウェアによって呈示・評価の仕方がある程度決まってしまうため、その確認を先にすべきです。)


いずれにしても、組み合わせの中から欲しいものを選ばせるだけにもかかわらず、「何をどの程度重要だと感じているか?」が「効用値」という数値で算出されます。分かりやすく言うと「効用値」は「重要度」と考えて良いでしょう。


【コンジョイント分析のアウトプットイメージ】
 コンジョイント分析3.gif

「属性」に対する効用値(寄与率)も、「水準」に対する効用値(部分効用値)も算出されますので、そもそもこの「属性」「排気量」はあまり大事ではないね…、この「水準」「ワンタッチオート」は効用値が高いね…といったことが判断可能です。
各組合せの「効用値」を合計したものが「全体効用値」であり、どうすれば全体効用値を最大化できるか?という組み合わせを探ります。ただ、それでは「全部いいとこどりで価格の安い組み合わせがいい」といった全く現実的ではない物になってしまいかねません。


そこで、価格そのものも「効用値」が算出されますので、価格を上げる、下げることでどのように「全体効用値」が変動するか把握し、現実的な中での組み合わせがチョイスされます。


また、「メーカーやブランド」を「属性」に加えることで、市場シェアのシミュレーションをすることもあります。



●コンジョイント分析の歴史


コンジョイント分析は、1964年に数理心理学者Luceと、統計学者Tukeyの理論構築から研究が始まり、1980年代からアメリカを中心に使われ始めたそうで、歴史のある、使いこなされた手法と言えます。筆者もPCが普及し始めた1990年代にDOS版のコンジョイント分析ソフト(ACA)と格闘した記憶があります。(当時は既にWindows 3.1の時代でしたが、こういった専門分野のソフトウェアはまだまだDOS版、それもフロッピーディスクでの運用でした。)


その後Webでも使えるようになり、現在に至ります。他の多変量解析と同じく、PCが誰でも使えるようになって活用への門戸が開かれた分析法と言えそうです。


直接的に「何が欲しいか」を聞くのではなく、「商品コンセプトカード(プロファイル)」から【選択】させるというアプローチが実際の購買シーンに近いと言え、日本消費者行動研究学会コンファレンスでも度々目にすることがあり、今でも根強い人気を感じさせる手法となっています。


全てのマーケティング課題に有効な手法ではないため、使用シーンは多少限定されますが、適正課題において、適切な属性・水準を設定できた時には、「切れ味の良さ」を感じさせる手法ですので、課題とマッチしそうな場合にはぜひ「コンジョイント分析」の活用をご検討下さい。