株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
定性調査部 ディレクター インタビュアー 吉田 聖美

9月は出張が多い月だった。大阪に3回、福岡に1回、ほぼ毎週ペースで出張に行っていたことになる。
今回の大阪出張では、若干時間に余裕があり、大阪の百貨店巡り(とは言っても梅田の阪急と阪神に行っただけだが)をしてみた。


いやぁ、面白い。阪神百貨店にすっかりやられてしまった。
阪神と阪急は目と鼻の先にある。しかし、両者の雰囲気はずいぶん異なる。いわゆる「百貨店・デパート」然としているのが阪急で、阪神には庶民的な雰囲気が漂う。生鮮売り場は「デパ地下」から想像するよりも「アメ横」から想像するものの方が近い。魚なども安いし、夕方早めの時間からたたき売り状態だったりする。


しかも、その先にあるスナックパークは「大阪B級グルメが100円台から食べられる、立ち食いスポット」という、ここは百貨店の中?と思ってしまう場所。大阪の下町に迷い込んだような気分になる。「デパ地下」というと、たまに訪れる印象があるが、ここは身近で生活に密着した印象がある。



この地下食料品売り場の配置がまた考えられている。地下鉄梅田駅のメインストリートに面した部分、つまり多くの人が最初に目にする場所に配置してある百貨店の顔となる部分は洋菓子ショップ。そこからスイーツ系のお店が立ち並ぶ。


そこにあるのはまさにデパ地下の光景。阪神梅田店でしか買えない限定スイーツに人が並び、スイーツだけでなく、ワイン、チーズ、ジャムなどスーパーでは見かけない品ぞろえの店も続く。



そのデパ地下らしい光景を進んでいくと、徐々に惣菜・弁当売り場(ここはまだデパ地下の雰囲気)、野菜などの売り場、鮮魚売り場(ここはすでに市場の雰囲気で、価格も東京のスーパーよりも確実に安い)と、いつの間にか、デパートの雰囲気から商品の町大阪の雰囲気、天下の台所といわれる大阪の雰囲気に巻き込まれていることに気付く。


雰囲気を飛び越える、というよりも流される巻き込まれるといった方が良いくらいさりげなく。百貨店から大阪地元の店、余所行き(ハレ)の場から生活(ケ)の場、本来であれば異なるはずの場面が1つのフロアに両立している。



もしこれが逆の配置だったら・・・初めて訪れた私はどんな印象を受けただろうか。
駅から眺めたところで「デパートなのに庶民的だなあ、これが大阪色なのかなあ(でもだったらあえてデパートに行かなくでもいい?)」と思ったであろう。


百貨店である以上、百貨店らしさという「枠・ルール」は必要である。まずは、量販店とは違う品揃え、雰囲気で、スーパーやコンビニとは違う気分で買い物を楽しめる、という消費者の期待を損ねない場所であることが求められる。


第一印象では百貨店らしさを感じさせた上で、深く知る段階で特徴(大阪の町らしさ)を出していく。イメージや期待値がある程度確立されているカテゴリーでは約束事を持たせた上で特徴を出していくことが望ましいという典型である。


そして、特徴を出す上で忘れてはならないのが、「らしさ」。阪神百貨店の場合は大阪らしさだろう。ほかの地方都市だったら、同様の仕組みは成立しづらいかもしれないし、大阪で「商人っぽさ、にぎやかな盛り上がり」ではなく、「静かさ、自然」をテーマにした売り場を策定しても違和感がある。


商品の評価を考える際も、私はよく「必要条件」「十分条件」という話をするのだが、それがすべての考え方の基礎だと思っている(この基礎を飛び越える革新的なものが出現することもごくまれにあるが)。
まずはそのカテゴリーにおける必要条件が何かを見極めた上で、その商品の十分条件を定めていくことが必要であり、土俵に上ること、確固たる柱を持つことは外せない。



今回の出張では、もう1か所、当社大阪事務所そばにある大阪企業家ミュージアムにも行ってみたが、そこで目にした資料の中にあったのは、阪急百貨店も当初は庶民的な百貨店を目指していたという事実。


創業時は、食堂にカレーライスを手ごろな値段で置き、カレーライスブームを巻き起こしたらしいし、ライスだけでも食べに来てください、という呼びかけを行ったりもした、との話。
百貨店であっても地元に密着した存在であり、遠すぎない場所にいる、というのは大阪の歴史的な背景もあるのかもしれない。