株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
代表取締役社長 澁野 一彦

◆分散化するシニアの退職時期~消費行動の多様化を促進


高齢者の退職時期が徐々に遅くなり、分散化してきている。
一般企業では、60才で一旦定年退職するものの、再雇用されて給料は半分程度に下がるが、同じ職場で(65才前後まで)働き続けるというスタイルが一般化した。


こうした就労スタイルは"退職猶予期間"となり、完全離職とも完全現役とも異なるリタイヤへの移行・準備期間となっている。このため、従来見られたような、退職を機にすべての生活が一変するということが起こりにくくなり、"消費のダウンサイシング"のタイミングも人によって異なるようになってきた。


弊社で実施した自主企画調査「シニアライフ・センサス2013」(7月実施WEB調査:55~79才男女1000名)でも、就労タイプの多様化と退職時期が分散化していることが確認できる。(図表1参照)
団塊世代(63~66才)に限定すると退職率も5割(就労率52%)を切り、2人に1人がまだ働いている


(図表1)
 勤労状況.gif


他方、高齢者男性の7割近くが「65才以降も働きたい」(労働政策研究所:高齢者の雇用・就業実態調査)と答えており、まだまだシニア・高齢者のリタイヤ時期は伸びそうである。


金融資産残高が900兆円あるといわれている日本の高齢者層にしても、リタイヤ後の長い年月(20年前後)や不透明な社会保障の行方などを考えると、早々にリタイヤもできない状況になっている。

そんな中、彼らの生活意識の中に節約・倹約志向が生まれてきていることは容易に想像でき、それぞれの事情(経済的不安も含め)や意向、またリタイヤ時期によって消費行動もますます多様化してきている。



◆生活に「余裕はないが、満足」というシニアが増加傾向~ほどほどに生きていく


「シニアライフ・センサス2013」から、シニア・高齢者層の生活意識、経済状況(意識)の変化を確認する。


《シニア・高齢者層の生活意識(暮らし向き)について》
『生活の満足度(60才以上計)』は、2013年は76%が「満足」と回答、昨年(71%)に比べ若干増加。
一方、『経済的な余裕(60才以上計)』に関しては、61%が「余裕がない」と答えており、こちらは昨年(59%)とほとんど変わらず、「全く余裕がない」というトップボックスは、僅かではあるが増えている。


(図表2)

 

生活の満足度2013.gif


 
この生活意識(暮らし向き)に関する2つの指標を重ねてみると、「余裕があり満足」(今年38%←昨年39%)、「余裕はないが満足」(37%←31%)、「余裕がなく不満」(23%←27%)と3分割。昨年に比べ、余裕はないが、与えられた環境に折り合う現状肯定派が増加している。
昨年同様、暮らし向きは3層に分かれ、生活(意識)格差は変わらず顕在。


(図表3)
生活の満足×経済的余裕マトリクス2013.gif

今回の調査(「シニアライフ・センサス2013」)ではシニア・高齢者の資産(貯蓄)についても聞いているが、60才以上(計)の蓄え(貯蓄総額)は平均1883万円で、昨年調査(平均2093万円)に比べると少し目減りしており、(アベノミクスにより多少景気が回復という話もあるが)実質的なシニア層の生活が好転しているという訳ではないようである。


にもかかわらず、生活には満足という現状肯定派が増加しているのは何故か?
自身の経済状況と社会認識に照らし合わせながら、それぞれの消費行動を工夫しているシニア・高齢者の姿が目に浮かぶ。



◆賢いシニアは、手堅く堅実に消費する


「シニアライフ・センサス2013」では、昨年に引き続き、シニア・高齢者の『日常の買い物行動についての考え方・行動』を聞いている。


《買い物に対する考え方・行動》
『日常の買い物に対する考え方』の上位を見ると、 「品質、価格を比較して商品を買う」「買い物へは 自分のバッグを持っていく」「見た目よりも使いやすさを重視する」「店のポイントカードをよく利用する」など・・・・・。
昨年に比べても、上位項目は同意率が上昇している。


また、「非常に当てはまる」というトップボックスの数値をみると、「買い物へは自分のバッグを持っていく」が30%と最も高く 「エシカルな購買行動」も、シニア・高齢層でも習慣化してきたことを窺わせる。

(図表4) 
買い物の考え方2013.gif

高度成長期に旺盛な消費活動を経験し、かつその後の経済悪化による金融資産喪失・減少の痛い経験を併せ持つ今のシニア層にとって、「価格比較による品質吟味」や「流通の付帯サービスの利用」など、消費の工夫は、今までの体験に基づき学んだ生きるための処方であり、身の丈にあったほどほどの(等身大の)消費活動の実践に他ならない。



◆シニアは"ネットワーク資源"を上手に活用している


ここではシニア・高齢層の『情報収集源』」をまとめた。注)今回の対象者はWEBモニターであることを考慮。「テレビ」「インターネット」「新聞」が情報源の上位に挙がるが、「テレビ」は属性による偏りがなく、幅が広い。


「新聞」は《男性》で同意率が高く、特に75才以上の《後期高齢者》で85%と重要な情報源となっている。


一方《女性》では、前述の情報源に続いて「友人・知人の話」や「自分の家族(子供・孫)」などが上位に挙がり、彼女たちの多彩な"ネットワーク資源"が有力な情報源としなっていることがわかる。

また《女性》では、若い層で「商品サンプリング・試供品」を、高齢層では「通販カタログ」の利用が特徴的である。


(図表5)

情報の収集源2013.gif

 

シニア・高齢者の『普段の趣味や楽しみ』では、「旅行」「テレビ」「散歩・ウォーキング」とともに、「親しい友人・同じ趣味の人との交際」「家族との団欒」が上位に入っており(特に女性)、"繋がり"を中心にした趣味活動が活発に行われていることがわかる。(「シニアライフ・センサス2013」参照)


これらを見ると、今のシニア・高齢者は、過度にマネーに依存することなく、ネットのクチコミサイトやネットワーク資源(家族、友人・知人、仲間)の情報を上手に利用し、『絆』消費を先行、楽しんでいる様子が想像できる。


次回から、シニア・高齢者の消費(の多様化)の実態を 世帯タイプ、また「団塊世代」前後(「プレ団塊」、「団塊」「ポスト団塊」)などの"年代とは異なる切り方"で考察していく。