株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー

代表取締役社長 澁野 一彦

◆働くシニア~高齢になっても現役続行・・・。


快挙である!
先日、冒険家三浦雄一郎さんが80歳でエベレストに登頂し、高齢者の身体能力の高さを世界に見せつけた。
登頂後カトマンズに帰還した80歳の現役冒険家の第一声は、「今回は年に負けない、元気に生きるということがテーマです。80歳になっても、まだまだエベレストに登れる能力がある。80歳近くになって、俺はダメだと自分で自分をあきらめる人が多すぎます。」(インタビュー記事より引用)
三浦さん同様とまではいかないまでも、高齢になっても元気で現役を続行(就労)する人は意外に多い。


総務省「労働力調査」(平成23年)で年齢階層別の就業率をみると、55~59歳の就業率は男性89%、女性で62%。60~64歳になると就業率がやや低下するが、それでも男性では71%(歩留り率80%)が働いており、65~69歳で男性は2人に1人(46%)70代前半でも男性3人に1人(30%)が働いている。
 


一方独立行政法人「労働政策研究所」が平成22年実施した「高年齢者(60歳以上)の雇用・就業実態に関する調査」では、男性の7割近くが「65歳以上も働きたい」と回答している。


平成25年現在で65歳からの平均寿命は、男女とも20年前後ある。日本は世界一の長寿国でもあり、年金の開始年齢や現役期間が延長されてもそれなりに納得感がある。国民健康保険、年金が出来た昭和36年ころの平均寿命は、男性65歳、女性70歳で、退職後の余生は今よりずっと短かった。そう考えると、75歳が年金開始年齢でもいいと思う。せめて70歳ぐらいまでは現役で働き、その後は一人ひとりの事情・選択に合わせてリタイヤの自由を確保することで、(高齢になっても)尊厳ある生活を営むことが可能になる。



◆リタイヤした後の夢のセカンドライフは幻想?


リタイヤすれば年金が入り、お金と時間が自由に使える「夢のセカンドライフ」が始まる。
第一次ベビーブーム世代の団塊世代が高齢者に突入したことで、シニアビジネスはバラ色である。
このような期待を持って当該ビジネスは活況を呈しているはずであったのだが・・・・。実際は幻想であった。


そもそも定年延長になった65歳からでも、長い年月(20年前後)を生きていかなければならない。これからの日々の生活を考えると、逆に財布のヒモは引き締められる。
購買余力の面で期待されるシニア層であるが、家計調査を見ると、消費支出は他の世代と比べて低い。


リーマンショックなど過去の経済悪化により金融資産が目減りした手痛い経験、そして加齢による健康不安、経済不安、孤独不安や介護・・・、それに年金問題、震災による原発問題など悪影響要因には事欠かない。


自身は老化し、社会の将来に対する明るい展望が見られない中で、たとえストックがあっても、それをフローに変えることが難しくなっているのが今の実態である。高齢者層の就業率が高い背景にはこういった経緯があると考えられる。
リタイヤしたからといって、いきなり「夢のようなセカンドライフ」を誰もが送っているわけではない。



◆シニア市場を"冷静"に視る


団塊世代の男性の現役続行比率は現在でも5割を超える。高齢者(65歳)になったからといって全員が仕事を辞めるわけではない。人それぞれの事情、例えば経済事情、健康状態、またそれぞれの社会参加意識や勤労意欲の多寡によって、徐々にリタイヤしていくのが実態である。そして大半の高齢者は、既存の生活(今までの生活)の延長線上で暮らしている。


≪シニアマーケットの視座≫


・シニア層は、社会人としては現役である

高齢になってもシニア全員がリタイヤしているわけではない。また会社をリタイヤしたからといって、社会からリタイヤするという訳でもない。ライフステージは変化するが、引き続き消費は継続し、就労以外でも社会と関わっていく。あくまでも社会の現役としてシニア層と相対することが重要である。(再掲)


・シニア市場の大半は健康人口である
シニア商品といえば介護商品やケア商品をイメージするが、現在65歳以上の8割が、75歳以上でも5割の人が健康を維持した生活している。(厚生労働省:国民生活基礎調査より)日常生活を行う上で不都合を感じていない"(高齢であるが)普通の健康な消費者"が大半を占めている。
元気で普通の生活をしているシニアのための商品があまりにも少ない。(再掲)


・シニア層は多様なミクロ市場の集合体である
3000万人を超えた高齢者市場も 実態はマスで括れるわけではなく、多様な「ミクロ市場」の集合体である。世帯特性、ライフスタイル、経済格差、価値観・・・、シニア層は属性も消費形態も実に多様である。
それぞれの多様で細分化されたニーズを理解し、対応していく姿勢が重要である。


・シニア市場を特別視しない
シニア市場は昔、20代、30代、40代、50代と一般の消費市場を構成した人々が年を重ねた集合体である。従って、シニア市場を特別な市場と捉えるのではなく、既存のマーケットがシニア化したと捉えた方がよい。
商品開発やサービスもシニアの非日常的な消費や高額品だけにフォーカスするのではなく、シニアの長期化する(充実させたい)日常的な生活に対応するという視点が必要である。


「アクティブシニア」や「ゴールデンエイジ」などの曖昧な言葉に惑わされることなく、
また人口数が多いからといって高度成長期の原動力であったマスマーケットのように誤解することなく、シビアにかつ冷静にシニア・高齢者市場にアプローチすることが肝要である。


このような視座を持って、次回からは第2回「シニアライフスタイル調査」(自主企画:今年6月実施)の内容を中心に、"シニア市場の現在地とこれから"を読み解いていく