株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 シニアディレクター インタビュアー 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)


●6月17日に「コトラー・カンファレンス2013」が東京ビックサイトの国際会議場で開催されました。


筆者は、次世代リサーチ(MROC:Marketing Research Online Community)にチャレンジしているとき、ヘルマワン・カルタジャヤ、イワン・セティアワンらとの共著(恩藏直人:監訳、藤井清美:翻訳)の『コトラーのMarketing3.0』に出会い、「これからは、時代に即した顧客との共創モデルに進化する」という企業と顧客との関係を再定義された内容に共鳴を覚えました。


MROCを推し進める中で、悩んだりつまずいたりすることも多いのですが、そんな時にこの本を読み返すと、初心や基本に返れ、さらには確信を持つことができ、励まされるのです。
そのように多大な影響と勇気を与えてくれた本の著者(フィリップ・コトラー)来日に催されたカンファレンスへ、幸運にも出席する機会に恵まれました。

1931年生まれの82才とは思えないほどの若さとエネルギッシュさを放っていた、というのが初見の印象です。80分にわたる基調講演とその後のパネルディスカッションを精力的にこなされたフィリップ・コトラー氏からは、日本企業の課題や処方箋など多くの示唆やヒントがありました。



溢れるエッセンスやトピックの中から、筆者が特に響いたことを本稿で紹介したいと思います。
それは、【マーケティングの未来:成熟市場で日本企業がとるべき8つの方法】と題した講演の中の「日本は、どうしたら成長できるのか?」という課題にありました。


「まず、もっとイノベーションを起こすことが必要です。」が第一声でした。


その後、息をつく間もなく「これは単なるプロダクトの話ではありません。新しいビジネスモデルはどうでしょう。バーンズ&ノーブルやアマゾンの登場によって、既存の産業、業界が変化を余儀なくされています。イノベーティブな物流、コミュニケーションの新たな方向の模索が必要です。」と語り、成長のための処方箋について、「安全を望むと、成長の余地が損なわれてしまいます。新しいアイディアを生むためには顧客の近くにいることが必要。顧客の声を聴いて、コ・クリエーション(共創)することが大切です。」と説明されました。


あとの【パネルディスカッション】で、ネスレ日本の高岡氏はコトラー教授の講演内容に触れながら、コーヒーマシーン『ネスプレッソ』について「日本の消費者の調査をしたら、レギュラーコーヒーに比べてインスタントコーヒーは良いイメージは持たれていなかった。プロダクトの改良を進めるだけではこの状況を変えられない。そこでコーヒーマシーンの開発、販売を始めた。プロダクト自体のイノベーションではなく、プロダクトを取り巻くビジネスモデルのイノベーションを目指した」と戦略の狙いを力説されていました。




●そして、日本経済新聞社がまとめた「2013年上期(1~6月)の日経MJヒット商品番付」


西の横綱は金利の急上昇で注目された「住宅ローン」、東の大関は円安で急増した「東南アジア観光客」、西の大関は店頭で抽出する本格珈琲が1杯100円からという安さで人気の「コンビニコーヒー」、両関脇は「スマートフォン向けゲーム(東がパズル&ドラゴンズ、西がLINE:ラインゲーム)」、前頭には祖父母が孫に贈る教育資金を預かる信託銀行の新サービス「孫への教育資金贈与信託」・・。


驚いたことに、どれもカタチがないモノばかりなのです。
本誌は「ヒット商品にも、アベノミクス効果が現れた」と分析していますが、筆者はコトラー氏の「プロダクトではなく事業モデルのイノベーションを考えるべき。」という言葉に直結しました。


「モノではなくコト」「有形ではなく無形」「プロダクトではなくビジネスモデル」というヒット商品番付の羅列は、偶然ではないと思います。日本でも、すでにカテゴリーや業界を横断したボーダレス化、ブランドの枠を超えたモデルの取り組みが始まっているということではないでしょうか。


ブランド力が弱まっている商品やサービスにこそ、イノベーションを起こすようなアイディアを生み出す必要があると思います。
普段、生活者(現場)に近いところにいる者として、「顧客や社会に対して、何を発信して提供していくべきか」を企業の方々と一緒に考えるとともに、「既存のリサーチの枠を超えた発想で、疲れ果てたブランドに息を吹き込むサポートや提案をしていきたい」という気持ちが高まっています。