株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
代表取締役社長 澁野 一彦

◆映画『君と歩く世界』が伝える障害者の真実


『君と歩く世界』というフランス映画を観た。
事故で両足を切断し、身体障害者となった女性と、頑強な肉体を持ちながらも暴力でしか自己表現できない社会不適合者(発達障害者?)の男性。この2人が出会って、不器用な恋をしながらお互いに欠けたものを埋めあい 再生への道を歩き始める物語。これが映画「君と歩く世界」のストーリーの骨子である。


この映画では、障害というテーマを安易なヒューマニズムに陥ることなく、実に淡々と描いている。
そして何人かのレビュアーが書いているように、身体障害は誰にでもある"(肉体的)コンプレックス"のひとつの形に過ぎず、その根っこにある心の歪みは、とても普遍的なものであるということをこの映画では示してくれる。


また、身体障害という"コンプレックス"を抱えた女を女性としていとも対等に扱って、彼女の気持ちをほぐすことができる男が、実は社会に不適合と烙印を押された人格障害者であり、むしろこの「対等さ」こそが障害者の特徴であるということを皮肉にも教えられる。


普通の人間だとどうしても過剰に反応してしまいがちな障害者と健常者の間のバリアーを、何の努力もせず越えられる人間がいたとしたら、本人も何かが欠損しているのである。


以前当メルマガでも紹介したが、JMAは東京都が推進している福祉サービス第三者評価*の機関として福祉施設の評価活動をしており、私は評価者として精神障害や知的障害の方が利用している施設を訪問し、利用者にインタビューを実施している。


そこでいつも驚くのであるが、彼らは自分たちの"コンプレックス"を知悉しているが故に、健常者以上に他人に対しての思いやりがあり、新参来訪者の私たちにとても気を遣って対応してくれる。そして私たちが無意識のうちに持つバリアーを即座に外してくれる。

*福祉サービス第三者評価:http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/hyoka/outline.htm


~10人に1人が"なんらかの障害"を抱える社会


今日本には、身体障害者が366.3万人、知的障害者は、54.7万人、精神障害者は323.3万人で、3障害合わせて約744万人の障害認定の人がいる。(平成23年厚生労働省調査より)
また、「読み書きが苦手である」「人づきあいができない」「自閉症」などの症状を発症している発達障害者は、義務教育段階で70万人程度いると推定され、これは義務教育の全児童数の7%にあたる。


この発達障害は大人でも発症し(診断増加)で、当該症状の対象者やボーダー(境界ラインにいる障害者)は増える一方であるようだ。ボーダーを含めると10人に1人が何らかの障害(コンプレックス)を抱えているのが、現在の日本社会の実態である。



◆ユニバーサルな社会とは~個を生かす社会の実現


今春4月から障害者総合支援法*がスタートし、障害者の法定雇用率も企業は2%に引き上げられた。障害がある人を理解し、かれらの特性・個性を生かした企業経営がこれからは求められる。


実際に、発達障害や精神障害とされる人の中には、飛び抜けた才能を持つ人はたくさんいる。かのエジソンやスティーブ・ジョブスだって、人格障害・発達障害の傾向があったと言われている。スティーブン・スピルバーグは子供の頃、学習障害で読み書きのレベルが他の子と比べて低かったと告白している。


また知的障害者も、一つのことに集中できる力だったり、ルールや指示をきちんと守る生真面目さだったり、丁寧で慎重に作業をする力であったり 社会・企業活動に生かせる素養・資質を十分持っている。



~「デコボコ(凸凹)を愛せよ」


(5月14日朝日新聞オピニオン:人間支援工学が専門の中邑賢龍東大教授のインタビュー記事より)
「人は同じでなくていいと理解し、偏っていても独創的で発想力のある職場を作ることがこれからの企業には不可欠です」
「『凹デザイン塾』もやっています。あえて不完全な凹の商品を作り、凹んだ部分を人間が補うことで人が気づきを考えるという新発想の商品開発です。人もモノもデコボコであることを大切にしたい。中略・・。
尖った部分を削り、凹んだ部分を埋める教育やモノづくりは 人やモノを均一化し、社会を効率化をする上で重要でした。日本がそこから脱却し、新しいモノ作り・教育に変えられるかどうか。誰もが生きやすい未来にとって、今が重要な時期だと思います」。


同教授が主催する東大先端研究所では、ケータイ、パソコン、タブレットや音声読み上げソフト、スキャナなどのツール『アルテク(現在あるテクノロジー)』を活用して、障害者のサポートを積極的に行っている。



~アスペルガー症候群(発達障害の症状)*の障害者の言葉


「欠けた部分がある人は、幸運なんです、欠けている分尖がっているから。当たり前の生活をしてきた普通の人って常識に縛られて、なかなか尖がれないでしょう。障害はアイデンティティなんです。」


欠けた部分をテクノロジーで補えば、尖がった部分、個性は残る。
障害を個性、アイデンティティとして認め、足りないものがあれば、持っているものがサポートする。そういうことが "淡々と普通にできる"社会・企業、そして人の関わりが今望まれている。