株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー

代表取締役社長 澁野 一彦

◆シニアは外食では、"こってり好き、がっつり派"



シニア層は、一般的にあっさりした味付けの食事を好むと思われており、家庭では健康に留意して魚や和食を心がけているが、外では中華や洋食を食べたいというシニアは意外と多い。(『日経レストラン』記事より)

前回『肉食系老人のススメ』の中で、高齢者の健康長寿のために「たんぱく質の必要性」と「肉食の効用」を専門家の言説として取り上げたが、"外食"に限ればシニア層にも「肉食メニュー」は普通に食されているようだ。


飲食店向けの経営雑誌『日経レストラン』によれば、シニアが外食に利用するメニューとして、昼食では「そば」「寿司」を抜いて「ラーメン」が一位。夕食では「寿司」「刺身」についで「焼き肉」が3位にあがる。肉派、魚派もほぼ半分。ベスト10には、パスタ、カレー、ステーキ、とんかつ、ハンバーグ等が選択肢の上位にあがり、若者と変わらぬ旺盛な健啖家ぶりを見せる。


家計調査の世帯主年齢別の消費支出からも明らかなように、60代、70代は食料支出のウエイトが大きく、シニア層は食べることにお金をかけている。またシニア層に「娯楽・趣味」を聞くと、「旅行」とともに必ず「グルメ」「食べ歩き」が上位にあがる。


団塊の世代は、学生時代から外食に親しんでおり、弊社の調査でも2人に1人が月に2~3回外食を楽しんでいると回答している。外食に関しては、シニア層は財布のヒモと節制意識は、解放されるようである。


《シニアの外食利用メニューベスト10:日経レストランより》

シニアの外食利用メニューベスト10.gif


昼のベスト10を見ると炭水化物が殆どで、夜はたんぱく質と脂肪の塊のような食事がずらりと並んでいる。
前回取り上げた『肉食系老人のススメ』で書いたように、こと外食に関しては、意識している、いないに関わらず「たんぱく質系の栄養素の摂取」は実践されているようである。
この記事では "シニア層は薄味でヘルシーな食べ物を外食でも好む。→それは"偏見"に過ぎない" ということを教えてくれる。


健康の不安は多少あるけれども、美味しいものを食べたいという気持ちは若い世代と変わらない。シニアも若者と同様、"(時には)ジャンキーな食事?"を求めているのである。



◆シニアマーケットに対する偏見を取り除く


シニア向けのヒット商品が生まれにくい背景には、前述したようなシニア世代に対する偏見・先入観がある。先入観に基づいてモノづくりをしているから購買欲をそそらない、ちぐはぐな商品が生まれる。
シニア層を視る場合、まず第一に我々が(世間が)作りあげた偏見・先入観を、一つずつ取り除くことから始めなければならない。


≪偏見・先入観の払拭≫
1)シニアマーケットを特別視しない
シニア市場は昔、20代、30代、40代と一般の消費市場を構成した人々が年を重ねた集合体である。
従って、シニア市場を特別な市場ととらえるのではなく、既存のマーケットがシニア化したと捉えた方がよい。
商品開発やサービスもシニアの非日常的な消費や高額品だけにフォーカスするのではなく、シニアの長期化する(充実させたい)日常的な生活に対応するという視点が必要である。



2)シニア市場の大半は健康人口である
シニア商品といえば介護商品やケア商品をイメージするが、実は現在65歳以上の8割が、75歳以上でも5割の人が健康を維持した生活している。(厚生労働省:国民生活基礎調査より)
日常生活を行う上で不都合を感じていない"(高齢であるが)普通の健康な消費者"が大半を占めている。元気で普通の生活をしているシニアのための商品があまりにも少ない。



3)シニアになっても継続したい生活、満たしたい欲望は変わらない
かつて70代と言えばいろいろ諦めなければならない年齢であったが、前述のように、今は体力もソコソコあり、経済的にもある程度余裕がある人が多い。またシニアだからといって、「欲望、欲求、意欲」は枯れる訳ではない。「年をとっても楽しい生活を維持したい」、また「年をとったからこそ楽しい生活をしたい」というシニアの意向、気持ちを応援する提案をする。



4)「シニア層だから」という押しつけを外す
「シニア向け」のイメージは、実際のシニア層からは反発を持たれる。自身の認知年齢も実年齢より1~2割は若い。また実際にシニア層を年寄り扱いをしたり、社会の弱者イメージを植え付けるようなアプローチはマイナスに影響する。常に人生の先達としてのシニアのプライドに配慮、リスペクトした対応を心掛ける。



5)シニア層は、社会人としては現役である
定年になり会社をリタイヤしたからといって、決して社会からリタイヤするという訳ではない。また子育てが終了し、ライフステージは変化するが引き続き消費は継続し(世帯消費のダウンサイジング化などはあるが)、就労以外でも社会と関わっていく。あくまでも社会の現役としてシニア層と相たいすることが重要である。




~再びシニアの「食」について


外食産業が生まれたのは19世紀前半のフランス。ちょうど数多くの「食と人」に関わる『人間喜劇』を執筆したフランスの文学者バルザックが生きた時代だった。(『バルザックと19世紀パリの食卓』より)


それまで王族・貴族に召し抱えられていた料理人が革命とともに独立し、レストランを開店し始めたのである。バルザックは「食は、服装や住まいと同じく人物の社会的ステータスを表し、人間が持つ最大の欲望の一つであり、パリの食卓はまさに高級娼婦のライバルとなっている」と言っている。


シニア層の満たしたい欲望、欲求、意欲を枯れさせないためにも、(高級娼婦のような)多少危険な香りのする濃厚な美食の提案も時には必要なのではないだろうか。