株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 ディレクター インタビュアー 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)

MROC(Market Research Online Communities)を推し進めていく中で、私が独自に築いたモデレーションのノウハウがある。本当はナイショにしておきたいところであるが、現場で定着しつつあることに加え、MROCの今後の推進に大きく役立つと思われるので、このあたりで公開したい。
それが、今回のタイトルにもなっている"自己開示""自己呈示"である。



MROCは長期にわたって調査が行われる性質上、モデレーター(コミュニティマネージャー)は2~3人体制で臨むことがほとんどである。2人とも同じ立場で運営する場合もあるが、場を活性化させるため、それぞれのコミュニティマネージャーにスタンスと役割を決めるのが普通である。消費財テーマの場合は、【進行役(全体のマネージメント)】と【盛り上げ役(ムードメーカー)】の役割分担を用いることが多い。


一般的に【進行役】の方がより重大な役割を担うように思われるかもしれないが、実際は【盛り上げ役】の果たす役割の方が大きく、調査の成否を決めるといっても言い過ぎではないくらいである。


この【盛り上げ役】には、なるべく対象者条件に近い者に入ってもらう(もしくは近づいてもらう)必要があるため、毎回見合う者を探すのはひと苦労である。しかし、【盛り上げ役】の役柄がぴたっと当てはまったコミュニティは仲間意識が生じやすく、ホンネに迫れることが多い。


現段階では、私は【進行役】と【盛り上げ役】の基本姿勢を以下のように定めている。


"自己開示"も"自己呈示"も、自分についての情報を他人に示すという点では共通しているが、以下のような違いがある。



この考え方をMROCの運営に応用しているのである。


【進行役】は、"自己呈示"のスタンスで、何を示し、何を示さないのかを選択することが重要になる。バイアスをかけないように注力しながら、進行していく。
一方、"自己開示"を初めて心理学用語として用いた精神医学者のシドニー・M・ジェラードが「個人的な情報を他者に知らせる行為」と定義しているように、【盛り上げ役】は自分の感情や経験、価値観や人生観まで示すことにしている。



【盛り上げ役】は、オープンなサクラ(偽客)的な役割を果たす。「皆さんと同じママなので(もしくは〇〇が好きということで)、運営側ですが参加させていただきます」というイメージで一緒のコミュニティに入り、「そうだよね」「分かるわ~」「うわ~大変!」などで共感を基にした関係構築を手助けするのである。


この【盛り上げ役】は【進行役(≒調査目的や課題)】と【生活者や商品】をつなぐ役割を担うため、クライアントサイドに入っていただくことも多い。



【盛り上げ役】があえてカミングアウトして手抜き主婦をさらしてみたり、自虐的にならない程度に三枚目キャラクターによって親近感を促したりすることも有効である。


難しいお題では率先して「私の場合は・・」と楽しげに答え方の例示を見せて思考のきっかけを促したり、同調意見が続いているときは「逆に私の場合は皆さんと違って・・」「こういう考え方もありませんか?」と反対意見を切り出したりして、議論を活性化させるのである。


コミュニティ上では、参加者同士が信頼関係を構築しつつ、勝手に盛り上がってくれるのが望ましい。生活者が求めているのは、「情報交換の場」と「関係性の構築」だからである。そのためにも、コミュニティ形成にあたっては、上記のような運営上における工夫が必要なのであり、それがうまくいった時の満足感は非常に大きい。