株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 ディレクター 牛堂雅文

最近、海外に端を発する「マーケティングリサーチ不要論」の議論を見かけることが増えました。デジタルデータやソーシャルメディアの急速な発展により、消費者の声に接しやすくなったことも背景にありますが、実際にビッグデータ、ソーシャルメディアの分析をされている方の意見をお聞きすると、新しい発見はあっても、現状では「既存のリサーチを代替するものではない」ことも分かります。


では、なぜ「リサーチ不要」などという議論が出てくるのでしょうか。それは、「年々マーケティングリサーチの定型化・効率化が進み、比較的あっさり、効率重視で進められてしまっているところに原因あり」と感じています。


もっと本質的なことを言うと、課題に向き合う「泥臭さ」が足りないのではないでしょうか。これはクライアント企業側、リサーチ会社側双方に言える問題だと感じていまして、まさに私自身への反省も込めて言っています。



●ミーティング風景


私の経験ベースの話になりますが、あるリサーチではしっかりと課題の確認を行い、商品を前に仮説出しブレストを行い、納得の行くまで調査設計を行っていきます。話は脇道にそれることもありますし、あり得ない可能性も飛び出ますが、課題に向かってまっすぐな議論が続くミーティングとなります。時間も1時間では終わりません。


また、あるリサーチでは消費者の使用現場に飛び込み、使用シーンをビデオで撮らせていただき、それをもとにワークショップ形式で議論し、発見をまとめていきます。もちろん、半日がかり、1日がかりの作業となります。



実はこういった進め方自体は、昔のマーケティングリサーチではそれほど珍しいことではなかったように記憶しています。私自身も、難しいお題を頂いて、仮説作りに頭を悩ませ、色々と議論をさせて頂いた…そんな泥臭さのある仕事をしていました。


これも以前の話ですが、あるリサーチで、現地に行き、クライント企業のご担当の方と一緒に半日くらいかけて関係するすべての施設を見させて頂き、足を棒にしながら仮説を練りこんだこともありました。



●泥臭さの消失


かつて、こういった泥臭い進め方は、「当たり前のこと」だったはずなのです。


しかし、Webリサーチに象徴されるようなスピードアップ、効率化の流れの中で、そういった「泥臭さ」が徐々に消えていった結果、「本質に迫りにくいマーケティングリサーチ」に変化してきてしまったのではないでしょうか。


もちろん、時短・ワークライフバランスが叫ばれる昨今、『効率化、ミーティング時間の削減にNO!諸悪の根源だ!』とはいいません。個人の時間、家庭を大事にすること、生活にゆとりを持つことが、より良い商品開発・サービス開発に役立つのは間違いありません。一方で、近年「大事なこと」を置き去りに形式化・効率化してしまったことは否めません。



全てのミーティングとは言いません。大事なミーティングだけはしっかりと時間を確保し、課題にガッツリ向き合って泥臭く話し合う機会とする、そういった姿勢を持つだけでずいぶん変わってくるのではないでしょうか。



先日SankeiBizの記事で紹介された、ホンダのヒット車種「N BOX」開発の事例でも、消費者の潜在ニーズ把握に本腰を入れられている様子が伝わり、泥臭い議論が繰り返されたことが想像されます。

「泥臭さ」は目新しさもカッコよさもなく、今を時めくIT企業のトップも口には出しません。MBAなどの講座でも教えてくれそうにありません。しかし、成功への一番の近道は、「課題に向き合う泥臭さ」なのではないでしょうか。


今回はあまりテクニカルではなく、精神論かつ、自身への反省も含めての話となりますが、「課題に向き合う泥臭さ」、そしてそれを重視する企業文化、これこそがKFS(Key Factor for Success)ではないかと考えています。