株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
代表取締役社長 澁野 一彦

◆日本再生は経済力ではなく「愛される力」?


日本はこのまま沈没してしまうのか。そんな悲観論が広がる中で、我々日本人のこれからの方向を示唆してくれるメッセージである。


 「頼れる、しかも、愛される」。
 世界にとって、ドラえもんみたいな国になれるといいな、ニッポンは。

 ~元日の新聞の見開き広告「トヨタ Re BORN」から。


かつて日本はとりあえず経済力があった。エコノミックアニマルなどと揶揄されようが、お金を持っていることは強さの象徴であった。しかしこのアドバンテージは現在失われてしまった。


経済力を一国の数値で比較すれば、国内総生産(GDP)で中国に追い抜かれ、また(現時点では)軍備を持たない日本は国力でも彼岸の国に劣っているのか?


目に見えるハードパワーが相対的に低下したことで、必要以上に日本人は自信をなくしている。
しかし国の力を測る指標は、経済力や軍事力だけではない。もっと違った観点で日本再生のシナリオを描けないのか。


そんな期待にこたえて(?)、営業利益1兆円企業のトヨタが、あえて"経済の力(ハードパワー)"ではなく、"愛されること(ソフトパワー)"で日本再生に取り組むことを提案する。(と勝手に解釈する)




◆世界が共感する「クール・ジャパン」。


経済産業省が推進する「クール・ジャパン」は、日本を経済力などのハードパワーではなく、日本固有の文化資源や伝統技術等の"ソフトパワー"で世界を魅了し、日本を再生しようという試みである。


欧米やアジアでは、アニメやマンガに加え、日本独自の食文化、宅配・旅館、伝統工芸品など、人気の商品やサービス→"クールでかっこいい日本"が多数存在する。


こうした「クール・ジャパン」の人気を活かし
(1)内需の掘り起こし、(2)外需の取り込み、(3)産業構造転換を行い、
新たな収益源・雇用の確保と地域経済活性化に繋げるとしている。


-経済産業省「クール・ジャパン戦略」より経産省では世界の文化産業全体の市場規模は900兆円以上と試算(2020年時点推計値)、そのうち8~11兆円(1%前後)をこのプロジェクトで獲得するという目標を掲げている。


 ~日本が誇れる食文化~
「クール・ジャパン」資源の中で今急速に評価を高めているのが日本の「食文化」である。
ヘルシー志向という世界の食のトレンドに合致、世界的な日本食ブームが起きている。政府も日本の「食文化」を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に世界無形文化遺産として登録申請した。日本独自の文化がまた世界に刺激を与えようとしている。


そんな中で、『鮨(すし)』はもっとも人気の高い日本の食文化資源の1つとして、海外の人々を魅了する。




「頼れる、そして愛される」、ニッポンへ。~匠の技はクールビューティー


先日、映画館で今年2月公開される『Jiro Dreams of Sushi(二郎は鮨の夢を見る)』の予告編を観た。
あの銀座にある鮨の名店「すきやばし次郎」の店主小野二郎さんを、アメリカ人監督が追ったドキュメンタリー映画で、先だってアメリカで公開され、250万ドルという異例のヒットを記録したそうである。


《当映画予告より抜粋》
タイトルのとおり、二郎さんは、「この年になっても、自分の仕事が完璧だなんて思わない。夢にまで鮨が出てくるよ。」と語る85歳(当時)の頑固オヤジ。来る日も来る日も淡々と仕込みをし、日々もっと良いものをつくろうと鮨を握っている姿は、彼の人生観がにじみ出ていて、そして私たちには完璧としか思えない、その鮨を握る姿が実に美しくて、本当に興味深い映画である。
鮨大好きアメリカ人も本物の鮨が作られていく行程に興味津々で、二郎さんのあまりの頑固さがユーモラスに感じられるときには大爆笑、映画が終わったとき会場は大きな拍手に包まれたと現地で報道されている。


特にこのドキュメンタリーでは、「鮨」という日本独自の食文化の紹介というだけではなく、伝統工芸といえる匠の技とそれを究めようとする日本人独特のメンタリティに焦点が当てられている。これが海外を魅了する。


鮨(すし)職人もそうであるが、日本には1200種類を超える伝統工芸がある。長い歴史を超えて受け継がれた高い技術と美の感覚が現代にも息づいている。現在人間国宝に指定された56人の匠(2012年現在)を頂点に、日本各地で14万人を超える人が伝統工芸に従事していると言われている。


当映画でも二郎さんと弟子(息子さん)の関係性を通した技術の継承がテーマとして取り上げられているようだが、伝統工芸を次の世代に継承するという意味では、多くの匠を輩出する"シニア世代"の役割は大きい。


"暴走老人"のように過激な行動(ハードパワー)で国力を誇示するのではなく、(同じ頑固でも)磨き上げ、極めた日本固有の技(ソフトパワー)を世界に発信することの方が、幾倍も「頼れる、そして愛される日本」を創ることに繋がると思うのだが・・・・・・。


~再び二郎さんの言葉から
「好きになんなきゃだめです。自分の仕事に惚れなきゃあいけないんです」
いまだに進化し続ける85歳の現役鮨(すし)職人の仕事への一途な愛情を垣間見た。
次世代の日本を引き継ぐ後人にぜひとも伝えたい言葉である。


続く