株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
定性調査部 ディレクター インタビュアー 吉田 聖美

グループインタビューでは、いろいろなカテゴリーの商品のパッケージ調査を行うことがある。
女性が対象者である調査で、商品のパッケージを呈示した場合、褒め言葉として良く聞かれるのは「可愛い!」という言葉。私は、この言葉が聞かれると「最上級の褒め言葉」と判断するようにしている。


実は、以前は「可愛い」という反応が対象者から聞かれたときに、「可愛い」に「子どもっぽい=自分向けではない」という意味はないだろうか、とか、「可愛い」が「キュート」を意味するのか、「ビューティ」を意味するのか、突き詰めた方が良いのでは、とか気になり、プローブするかどうか躊躇していた時期もあった。


(「可愛い」にさえネガティブな面がないか考えるところは、ポジネガを明確にせずにはいられないモデレーターの職業病のような気がしてしまいますが・・・)



しかし、多くの対象者に接し、経験値が増えれば増えるほど、「可愛い」は単なる「デザインとして好き」だけでなく、「側に置いておきたい」「気持ちが上がる」など、気持ちに訴えかけられるという意味も含めた万能語として使われている気がしてきている。


プローブしたところで、対象者自身も説明できない感情であり、プローブに意味がない言葉なのだと思う。「だって可愛いんだもん」というのが全てなのだ。



万能語として「可愛い」を使う属性の広がりも感じる。
50代の女性も「子どもっぽい、若者向け」という意味でなく、自分のテンションを上げてくれるものへの褒め言葉として「可愛い」を使うし、最近では若い男性も「可愛い」を褒め言葉として抵抗なく使っている。


・・少し話はそれますが、、、最近は30-40代でも「女の子向け」という言葉を「自分向け」と同義語で使っていて、そこには若干の違和感があったりもします(これはモデレーターとしてではなく、一人の女性として)。
でも、「可愛い」を年配の女性が使うことには違和感はないんですよね・・・やはり「可愛い」は万能語なのかもしれません。


幅広い層で使われている「可愛い」だが、その分、「可愛い」と思うか思わないかの個人差は広がっている。同じものを見ても「可愛い」という人と言わない人、それぞれが存在しており、属性としての公約数が取りにくい商品やデザインもある。
これも「可愛い」の中に単なるデザイン的な良さでなく、「自分のテンションを上げてくれるかどうか」という非常に主観的な感覚が含まれているからであろう。


そう考えるとおそらく、「可愛い」の反対語は「可愛くない」ではなく、「別に」「どうでもいい」「なんとも思わない」が近い。感覚的で個人的な感情だからこそ、あえてプローブをせず、「感情が動いたのね」と受け止めれば良いのでは、というのが最近の私の考え方である。


ところで、他に同じような褒め言葉はあるだろうか。
万能語であり、最上級の褒め言葉であり、しかも主観的な言葉を探すことは非常に難しい。
使用する属性は狭いものの、感情が動くという意味では「萌え」が近いのかな、と思ってみたり。
そういえば、「萌え」も「可愛い」もすごくパワーを持つ言葉のような気がする。「萌え」や「可愛い」を語るときの人の様子は幸せそうだし、話振りにもパワーが溢れている。


これからも消費者がつい「可愛い!」と言ってしまえる商品がたくさん出てきて、グループインタビューの場だけではなく、市場でも「可愛い」パワーを感じられることを願っている。