梅津 順江(ウメヅ ユキエ) 
定性調査部 ディレクター インタビュアー

今年も日経トレンディから【2012年 ヒット商品ベスト30】が出た。
2012年は、50-60年代に発売された袋麺に食い込んだ『マルちゃん正』、実際の利用シーンを調査し、段ボールなどの切れ味も増した『フィットカットカーブ』など、昔からあり、進化や高機能化を期待していなかった商品がイノベーションを成し遂げ、閉鎖した市場をこじ開けた例が際立つ。


当誌では、「安いだけでも、多少付加価値があっても通用しない。なじみの商品やサービスに革新的な利点が求められた」と解説している。



ここで、【ヒット商品番付】はあるのに、なぜ【定着商品番付】はないのだろうか、という疑問を投げかけたい。


商品やサービスがヒットすることは第一関門として不可欠であるが、どれだけロングランで愛され続け、市場に根づくことの方が難しく、これから必要となると思うからである。
【ヒット商品ベスト30】のランキング選考基準は、「2011年10月~12年9月に発表された製品・サービスを対象にヒットの度合いを"売れ行き""新規性""影響力"の3項目に沿って総合的に判定。昨年すでにヒットしていた商品は原則として対象外」とある。


また、日経BPコンサルティングが行うブランド力評価調査【ブランド・ジャパン2012】も、首位が『アップル』、2位が『Google』など企業のランキングが主になっている。



そこで、自分なりに【今年の定番化した商品ベスト5】を、リストアップしてみることした。(※ここ数年でヒットし、定番化しつつある商品。独断でカルチャーも入れて考えた。)


1位は、『スマートフォン・タブレット』など機能性を増した機器やSNSの関連サービスやアプリ。iPhone5やGALAXYの発売によって、一気にスマートフォンの保有が拡大、『なめこ栽培キット』などの関連商品にまで裾野が広がった。


2位は、育児を率先して行う男性を意味する『イクメン』。グループインタビューでも「子育ての中で、自身の成長も楽しんでいる」という発言はチラホラ聞かれる。ベネトンからは『イクメンバック』が発売されたり、『パパ手帳』なるものが普及するなど、若い男性パパを狙った新たな市場も誕生しつつある。


3位は、よく見聞きするようになった『駅ナカ(エキナカ)』。鉄道各社が展開する「駅ナカ」「駅チカ」ビジネスは順調な様子で、これに倣った『ソラナカ(空港内)』『ミチナカ(高速道サービスエリア)』などの名称も続々と登場している。


4位は、『ハロウィン文化』。日本ではあまりなじみのなかった「ハロウィン」のコスプレ文化。一部の若者の変身需要イベントだった「ハロウィン」が今年は一般に浸透。当日の渋谷は、普段着姿で歩く方が浮いてしまうほど若者が個性的なメイクとコスプレを競っていた。保育園などでもイベントとして実施するところが増え、ママと子供が楽しめるコスプレ衣装も需要が拡大した。


5位は、『グルコサミン』サプリメント関連市場。高齢者を中心にした既存顧客からのリピートの堅調さに加え、中高年を取り込んだことも大きいと言われている。2012年度は40億円を超える市場規模が見込まれているらしい。




特に、5位に選んだ『グルコサミン』市場に注目したい。
この市場を牽引しているのは、『♪グルグルグルグルグルコサミン 世田谷育ちのグルコサミン♪』ではないかと思う。おなじみのフレーズをつい口ずさんでしまう『世田谷自然食品のグルコサミン』は、2009年のモンドセレクションで金賞を獲得。年間の出荷総数250万個を突破する勢いという。


「いつまでも、あんな風に膝をグルグル自在にまわしてみたい」と膝に不安を抱える予備軍(中高年)やロコモ(運動器症候群:ロコモティブシンドロームの略)意識の高い者に当該CMが深く刺さったのではないか。


「世田谷育ちのグルコサミン♪」とブランド価値を伝えている点も、あっぱれだと思う。通信販売では薬事法に抵触しているのではないか、と思われるグルコサミン関連商品、ドラックストアでは特売品(キャンペーンも含)の数々が溢れていることもあり、サプリメントカテゴリーは「胡散臭い」と思われる傾向にある。


(弊社が今年7~8月に調査した「ダイエットに関するMROC自主調査」でも、効果は実感したいと思いつつも、サプリメントは「信じられない」「副作用が怖い」などの複雑な心境が同居することが垣間みれた。)


『世田谷育ちのグルコサミン♪』は、サプリメントのカテゴリー価値を理解し、『世田谷育ち』という安心感も伝えている。



商品やサービスの継続にあたって共通していること。――それは、既存ターゲットから新規・セカンドターゲットへ、また既存カテゴリーを周辺商品やビジネスモデルにまで広げることに成功した商品やサービスであること。


この背景には、これまで対象外と思われる生活者(ターゲット)が、自らの垣根をこえて、自分の生活に新技術や新しい文化をカスタマイズして、うまく取り入れるライフスタイルが定着しつつあることも関係している、といえるのではないか。
この辺りを念頭に置けば、新しいビジネスチャンスが生まれると思う。