株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
定性調査部 ディレクター インタビュアー 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)


「MROC(Market Research Online Communities)は、"実名性""匿名性"のどちらで実施した方がいいですか?」という質問をよく受ける。
この疑問は、MROCを遂行する上での重大なテーマの1つである。


 どちらを選択すべきかは、難しい。この疑問は、【匿名で名乗れるTwitter】※1【実名性を推奨しているFacebook】の違いとも重なるため、それぞれの利点と課題をまとめてみることとする。


匿名と実名.gif

"匿名性"の場合、反応や批判を気にせず、気軽なスタンスかつホンネで発言できるため、他者の意見に左右されることが少ない。ざっくばらんに情報を出し合える反面、心構えがゆるい。無責任な発言ができ、飛躍的なアイデアも許されるため、正確さに欠くこともある。
"実名性"の場合、インターネットの懸念要素である無責任な中傷や言動が予防でき、正当性が強化されるため、情報の信頼性は高いといえる。しかし、実名で発言して失敗した場合、激しい批判に晒されるため、意見を言うのに尻込みしたり、発言・言葉を選ぶようになったり、議論を呼ぶような問題提起ができなくなる。自ずとトラブルを避けるような、優等生コメントが多くなることが考えられる。結果的に表面的でカタイ発言が多くなる。



どちらも一長一短があり、SNSを調査で扱う場合は課題・テーマによって、各々を使い分けた方が良いと思われるため、「こちらが正解」ということははっきりと断言できないが、どちらかというと"匿名性"を推奨している。


『Facebookはスーツ(よそ行きの服)、mixiは部屋着、Twitterは全裸』というたとえがあるが、ここでいうFacebook(実名)は「虚構主義の現実世界」、Twitter(匿名)は「仮想の中の現実主義」※2を意味しているのではないかと思う。


Facebook(実名)では裸の状態を修正してから晒すのに対して、Twitter(匿名)では普通に服を着ても、全裸を晒してもいい。Twitterは、現実にネットという技術が追加されたような感じなので、バイラル(噂やツッコミ)が起こりやすい。


普段、TwitterとFacebookの両方を使っている一人のユーザーとしても、それらを実感できる。匿名(Twitter)では感覚的だが鋭いつぶやきやアイロニー・愚痴などを目にすることが多く、実名(Facebook)ではしっかり考えてから投稿されている感じである。深みがなく、かしこまっていて表面的だなぁ、と感じるため、物足りない。私はホンネで議論できる方がオモシロイと思うのである。



顔が見えない、存在を隠せるからこそ、気兼ねなくホンネが言いやすい。批判を気にせず、意見をぶつけ合いながら議論できる。多少、実態から離れることがあっても、思いもかけないアイデアが生まれやすい場の提供が大事だと考える。
"実名性"でリアリティを重視するのであれば、息づかいや表情・目線・しぐさが見えるグループインタビューやパーソナルインタビューの方が適している。
オンライン上では、"匿名"で身をカモフラージュできるからこそのホンネを重んじる内容にしないと勿体無いと思うのである。



※1 実名でTwitterを使っているケース(特に発信側の場合)もあるが、今回はTwitterを匿名(主に受信側の場合)での利用を取り扱う
※2 Twitterが匿名なため、ごく少数だが、虚構に走る人がいるという見方もあることをつけ添えておく