株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
定性調査部 ディレクター インタビュアー 吉田 聖美

長い夏が終わり、やっと秋めいてきました。
早10月ということを考えると、あっという間に冬になってしまい、今年ももうすぐ終わりですね、という挨拶が飛び交うようになりそうです。春は花見、夏は花火、ビアガーデン、と季節を楽しんできましたが、秋は?冬になってしまう前に見つけなきゃですね。


前置きが長くなりましたが、つい先日初夏に公開されたはずの「おおかみこどもの雨と雪」を文庫版で読みました。私自身が母親であるからか、涙々だったのですが、同じ話を映画で見た人と話をしていて気付いたことがあります。


「文章を見るのと映像で見るのでは伝わり方が違う」。


例えば、物語の冒頭の場面、文章で見た私よりも映像で見た人の方がショックの度合いが大きかった場面がありました。
同じ人間が見たわけではないので個人差もあるでしょうし、今回の作品、そもそも映画の方が原作なので、完成度が映画の方が優れていたということもあるかもしれません。


しかし、一般的に言って凄惨な場面や急転直下な展開が起こる場面は、映像の方が訴える力がある気がします。


逆に内面に向き合うようなシーンだと、ビジュアルがあるからこそ、感情移入できない(自分とは別の世界と思ってしまう)こともあるかもしれません。もちろん、感情移入させ、感情を揺り動かすことが出来るビジュアルであれば、言葉で見る以上に効果があることもあるかと思います。


定性調査の現場でも文章とビジュアル、どちらも使用することが多く、それぞれに対象者の反応が違います。


「おいしそう」はどちらが伝わるんだろう・・・直感的に思うのはビジュアルかも。「私向け」は?・・・これもビジュアルかなぁ。こう書いているとビジュアルは有効な手段な気がしますが、意図が伝わりにくい(対象者が感じ取る力に依存してしまう)のも確か。


文章でも「ああ、そう解釈されちゃったか」と思う場面はありますが、ビジュアルの方が圧倒的にそういった伝わり方の違いは大きいです。ビジュアルは、はまると一気に対象者の気分が上がるのが、目に見えてわかります。
・・意図が伝わらないと対象者がきょとんとする様子も目に見えてわかります(笑い)。


「いや・・・そうじゃなくて、こういうことを言いたかったの」という軌道修正が難しいのもビジュアルの方。
伝えたいことを正確に伝えることは言葉の方が優れているし、感情を揺り動かす、情緒に訴えかけることはビジュアルの方が向いているということなのかもしれません。だからこそ、双方は補完関係になり、どちらも必要なのでしょうね。



言葉も誤解されることもあるし、ビジュアルが共通認識として通用することもあります。
人が対象である限り、絶対はありえないし、あらゆる要因によって結果が変わってしまう可能性があるのが、調査の面白いところです。


定量調査ではバイアスを排除するために「あらゆる要因」を取り除く努力が必要なのかもしれませんが、定性調査では「あらゆる要因」を読み取る力が必要になります。どうしてそう評価されたのか、どうしてそう受け取られたのか、その要因を知ることが対象者の気持ちを知ることになり、調査の有効な産物となります。



実際の製品や施策でも、多くの部分を言葉とビジュアルを用いて伝えていきます。誤解の可能性や、得手不得手があるとしても、言葉とビジュアルはコミュニケーションのベースとなりますので、調査の時点でそういった齟齬に気がつけば早めに軌道修正するヒントにもなり、そのことにも意味があると考えています。


答えがない世界ですが、クライアントの方と調査側とで共通認識を見つけられれば、それが答えだと思って日々努めているところです。


冒頭の「おおかみこどもの雨と雪」映画版は、評価を見ると賛否両論という言葉がぴったりです。
すごくシンプルな展開なので、その映像から何を感じるか、映像の中に自分を投影できるかに評価が左右されるのかもしれませんね。