株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー

定性調査部 ディレクター インタビュアー 吉田 聖美

モデレーターという仕事に従事して早10年ほどが経つ。

この間、定性調査には数々のトレンドがあったように思える。


私自身も、コラージュ、深層心理投影法のようなビジュアルを使ったものから、評価グリッド法、ラダリング、マインドネットなど言葉の繋がりを意識したものまで、いろいろな手法を経験してきた。

カートンテスト、コリドー、ポジショニング、人物投影法、・・・流行というのはあるもので、同じような手法を使う調査が続いた年もある。


デプスインタビューが増えた時期もあり、要点だけを聴取する短時間のグループインタビューが多かった時期もある。親子や夫婦など、ペアインタビューが続いた時期もあった。


そして、「今のトレンドは何か」と考えると、トレンドがないのがトレンドのような気がする。

(MROC(エムロック)はトレンドであり、そちらを担当することもあるが、基本的にはオフラインの定性調査を担当しているので、オフラインに焦点を当てた。)



その中で、あえて傾向を考えてみると、今年に入ってから、トラッキング調査やバンドル調査など、商品現状把握や新商品開発のために、セオリーどおりの調査を行うことが増えている。

私がどちらかというと、従来のセオリーどおりに丁寧にフローを進めるタイプのモデレーターなので、そういう調査を担当する機会が多いのもあるかもしれない。


セオリーどおりの調査には奇抜な演出はない。モデレーターが解釈を述べるシーンも少ない。

派手さはないが、クライアントと「こういう傾向が見られましたね」「背景には多分こういう事象があるからですよね」というやり取りが出来るところに対等な関係性を感じ、それがやりがいとなっている。


「クライアント自ら気付きがある調査が良い調査」というのが最近の私の持論なこともあり、ブリーフィングは意見を交換する場にしたいので、最初に自分が一方的にしゃべりすぎないのを心がけていたりもする。


投影法のように、対象者の心理の深読みをする調査も好きだが、目の前の反応に素直に向き合える調査も楽しい。

「純粋さ」と「柔軟性」は心理学においても話を聴く側に求められる大きな要素だ。

対象者、クライアント、双方の反応に柔軟で、主役である双方を繋ぎつつ、その場の息遣いや空気感を通じての気付きをフィードバックすることでモデレーターならではの役割も果たしたいと思っている。


※ちなみに、この辺りの考え方は弊社内でも意見がわかれるところ。もっとアクティブな関わり方をモデレーターに求める企画者も、もっとアクティブな関わりを信条としているモデレーターも存在している。



「トレンドがないのがトレンド」といったのは、奇抜な調査がないというのも1つだが、クライアントのニーズが多様化していることにも起因する。

「知りたいことはこれですが、聞き方は聞きやすい方法でお任せします」というオーダーも増えてきた。

もちろん、その結果として最初に述べたような手法を採用させてもらうこともあるが、あくまでもオーダーメイドでの提案なので、トレンドと言えるほど、同じような手法が続くことは少ない。


以前と比べると使うことが少なくなった前述の調査手法だが、様々な調査手法を経験してきたことは、自分の中の財産となっている。

クライアントのオーダーに対して、提案できる手法の引き出しが増えているだけでなく、通常のインタビューの中でも自然と手法を応用していたりもする。


例えば、対象者が言葉に詰まったときに言葉を引き出す聞き方としてラダリングを意識した質問は有効である。

対象者から発せられた曖昧な一言に対し、なぜそれが良いのか、なぜそう思ったのか、ラダリングを意識した肉付けを行うことで、発言に厚みを持たせることが出来る。


対象者にポジショニングをさせなくても、ポジショニングを意識した聞き方をすることで、商品の位置づけを把握することも可能になる。インタビューフローでは通常の聴き方をしていても、アウトプットでは、対象者の発言や発言からの気付きを軸にしたポジショニングの図を付けることもある。


新しいことに目を向ける好奇心を保ちつつも、基本を守る気持ちと、素直な姿勢を忘れずに調査に臨んでいきたい。