株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
定性調査部 ディレクター インタビュアー 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)

近年の調査傾向の1つとして、新商品の上市前の意思決定や仮説検証・課題解決の段階で、"フォーカス・グループ・インタビュー(focus group interview)"を用いるケースが目立つ。「新ブランドの開発継続の可能性の有無を見極めたい」、もしくは「定量調査にかける前に発売の是非をはかろう」という位置づけの調査で、量的な調査結果を待つことなくメインの調査として利用されることも少なくない。


聴取ポイントが絞れている場合、サンプルの大規模化(グループ数を増加)かつ短時間(1グループを1時間~1時間半)で効率的に実施することを提案している。


商品・サービスの意思決定や課題解決が目的のため、ブランドの「コンセプト評価」~「パッケージ・ネーミング評価」~「使用評価もしくは味覚評価」~「価格呈示後の総合評価」を、一定の客観的なものさし(測定尺度)で評価してもらうのである。弊社では、このショートタイプの座談会を"インテンシィブ・グループ・インタビュー(intensive group interview)"と呼んでいる。


定量と定性を組み合わせた特徴があるため、評価の尺度は「1.是非買いたい、2.やや買いたい、3.どちらともいえない、4.あまり買いたくない、5.全く買いたくない」などの間隔尺度(interval scale)を用いる。


スティーヴンス(S.S.Stevens)*の心理学的尺度の4分類を知っているリサーチャーは、「あれ?定性処理できるのは名義尺度と順序尺度で、間隔尺度と比率尺度は定量で処理するものでは?」と疑問に思われるかもしれない。


グループ・インタビューでも、対象者の意見、感覚、態度の強さをはかる際、選択肢で回答させることは多い。中立項目を入れて3段階・5段階を用いたり、中立の項目を除いて偶数段階とし、どちらかに答えさせたりする。
もちろん分析では、量的に限界があるため、スコアの標準点や平均値を出すことはない。


それどころか、「間隔尺度ではあるが、対象測定に用いられるモノサシの目盛り間の距離が等しくないという前提がある」「購買行動やプロセスを辿ったり、意向の度合いを確認したりする必要がある」ため、定性的なニュアンスを加味した応用的な問いかけをする。


具体的には、購入意向者へ何段階かに分けて(※以下の例のように)、本気度合いの確認を行うのである。

購入意向者への本気度の確認.gif

上記の中でも、5)の推奨意向は、顧客満足度をみるのに有効である。人に推奨&紹介するには「商品やサービスの品質やベネフィットを知覚・熟知している」「ブランドとの感動体験がありそう」「ブランドと過ごす時間を持てそう」などが必要となるからだ。
ソーシャル・ブックマークサイトのデリシャス・コム(Delicious.com)*の事例の中でも、エンゲージメントを強めるには、顧客との関わりの評価指標の「交流する」「購買する」以上に「推薦する」という価値が重要、と述べている。



競合環境の激化により、意思決定のスピードが加速し、開発の継続及び新商品発売のジャッジを定性調査で行うケースが増えている。これらの背景には、消費者の市場環境の変化がある。
消費者ニーズが多様化・個性化していることに加え、商品やサービスの選択肢が増大し、モノ選択の際に多くの情報に接するようになり、消費者の購買行動やプロセスがより複雑になる中で、口コミ情報・推奨がより重視されるようになったことも関係していると思われる。


定性調査が扱う領域や役割はますます広がっている。従来の定性調査が担ってきた消費者意識や行動の仮説づくり、思考プロセスの探索だけに留まらない発想やアプローチが求められているともいえる。



※スタンレー・スティーヴンズ Stanley Smith Stevens(1906-1973年):精神物理学者。1946年の「測定尺度の理論について」"On the theory of scales of measurement"の論文で提案された尺度水準の分類がよく用いられる。
※デリシャス・コムには、ユーザーが登録したURLに対して、グレード評価投票ができるサイトがある。サイト内で面白いと思ったニュースを評価・格付けできる仕組み。なお、事例は『実践ソーシャル・メディア・マーケティング(ジム・スターン)』より抜粋。