株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
代表取締役社長 澁野 一彦

 ■シニア層にとって4年先は長い


「シニア男性攻略にヒント~法華津選手の"意欲"と"不安"」というコラム記事が先日日経新聞(MJ)に掲載されていた。(以下は記事の抜粋の要約)

71才でロンドン五輪の馬場馬術競技日本代表となった法華津寛選手は"おじさんの星"。

不本意な結果に終わった北京五輪から3か月後の法華津選手(当時68歳)へのインタビューで、ロンドン五輪出場を目指すのかという問いに対し、法華津選手は「もちろん、その時点で馬に乗れていれば目指す。でも4年は長い。自分にも馬にも何があるかわからない」と率直に応えたそうである。

70歳を超えての競技生活の継続は、当然本人にとっても未知の領域である。彼の葉から、競技続行への高い意欲・モチベーションと身体的な衰えや健康への不安が共存する。そこにシニア層の等身大の姿が浮かぶ。

現在の日本人の平均寿命を考えると高齢者と言われる65歳を越えてもシニア自身が持つ生涯時間は長い。しかしその膨大な時間をずっと元気で健康に過ごせるという保証はどこにもない。

加齢による身体機能の衰えや健康不安、また親や家族の介護など生活環境の変化は待ったなしに訪れる。シニア層にとっては、4年という期間は何が起こるかわからない先が見えない将来なのである。
だからこそ「元気なうちに楽しみたい」「体が自由に動くうちにしかできないことにお金を使いたい」というシニアの心理は十分理解できる。

実際に定年退職した後、65歳から支給される会社からの個人年金を 前倒してもらうように申請したと何人かのシニアの方から聞いた。シニア層も実は結構焦っているのである。

 ■シニア層の憂鬱~先が読めない不安


弊社で今5月初旬に、60歳以上の高齢者1000名(男性500人、女性500人)を対象に、「就労・生計状況と暮らし向き、ならびに生活・消費意識、買い物行動等」を把握する「シニアのライフスタイル調査」(WEB調査)を実施した。(「シニアのライフスタイル調査」についての詳細は次回以降当コラム等で随時紹介していきます)

次ページからは当調査の速報《シニア層の暮らし向き》の一部抜粋である。

シニアの6割近くが現在の「生活に余裕がない」という意識
「生活に余裕がある方」と答えた余裕者比率41%に対し、「余裕がない方」と答えた比率は58%にのぼり、余裕者比率を上回る。特にリタイヤして時間の自由度のある65歳~75才の男性の前期高齢者で生活の逼迫度が高くなっている。

●現在に比べて来年(一年後)「生活が悪化する」と悲観するものが3割
ここでも来年の未来予測は「変わらない(60%)」が最も多いものの、変化を指摘する動きとしては「悪くなる」(31%)が、「良くなる(9%)」を上回り 不安を喚起するものが多い。 

来年の生活向上について/現在と比較.gif

「今は健康」だが、「今後の健康」には疑心暗鬼
全体の2/3(66%)が現在「健康である」と言いながら、今後の健康状態については「不安を感じている」ものが6割弱(57%)に増加する。
 

 
現在の健康状態.gif
今後の健康不安度.gif

「自分と配偶者、家族の健康」はシニア共通の不安
国の政策(社会保障やしくみ)に対する不信感、自身の「日常生活機能(ADL)の衰退」を危惧する声も。

《現在の心配事、将来の不安》
 ・自分の健康・病気:72%
 ・配偶者や家族の健康・病気:57%
 ・年金 ・介護・医療等社会保障給付の水準:45%
 ・生活のための資金・収入:35%
 ・社会保障のしくみの崩壊:33%
 ・動作が鈍くなるなど日常生活が出来なくなる不安:26%

今回の調査から 自身や配偶者・家族の健康がシニア層の最大の関心事であることが確認できた。
また社会への不安、家族構成、友人・知人達との関係、親の介護などの様々な環境変化の兆しにさらされ、不安を増幅する。そこに経済と孤立の不安が重なる現実がある。

 ■シニア層でも筋トレがブーム?


このような"シニア層の憂鬱"を少しでも払拭できればそれは商機につながる。
前回の当コラムでは加齢による体力、知力の衰えのマイナスをケアするモノやサービス(商品やサービスの使い勝手の調整やアンチエージングケア商品)の可能性を取り上げたが、体力の衰えをケアするだけでなくもっと積極的に肉体の維持、強化を目指すシニア向けサービスも人気になっている。

女性専用のフィットネスクラブ「カーブス」は顧客層で最も多いのが60代前半の女性だそうである。筋トレと有酸素運動が最近の人気メニューとなっている。

また意外にも 42.195km走るフルマラソンやトライアスロンにエントリーするシニアも多くみられ、ハードなスポーツもシニアに提供できるサービスの選択肢の一つとなる。シニアも自分のために毎日筋トレに励み、自己の肉体の維持に努めている。

一方生きる意欲を蘇生させ日々の生活を充実させるということでは、家族や旧い知人・友人(同窓生やかつての恋人?)との人間関係の再構築を支援ツールの開発(シニア向けにカスタマイズされたフェイスブック等)や地域や市場で高齢者が楽しめる資源・現役を続行できる雇用機会の提供などがシニアに供与すべきサービスとして期待できる。

引き続き法華津選手のインタビューから、-引退を考えるのはどういった時かという問いに 「下手になったと感じたらすぐにやめますよ。それ以外でやめる理由は今のところ見当たらない」「多少肉体を維持する努力をすれば、この年(71才)でも技術的な進歩はある」とのこと。現役を続行したいという意欲と努力がシニア世代に夢と勇気を与えてくれる。