株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
定性調査部 ディレクター 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)

インタビューやヒアリングの現場で、調査対象者が「後ろめたさを感じる」「罪悪感にかられる」といったココロの中で起こる違和感や葛藤を吐露する場面によく出くわす。

例えば、『夜中に甘いスイーツを食べちゃった』、『平日の昼間からお酒を飲んじゃった』、『震災で大変な方がいるのに、自分だけ楽しんでしまって申し訳ない』、『医者から注意されたのにタバコをやめられない』、『子供が受験なのに、パチンコに通ってしまう』等々・・。

罪への意識のレベル感は様々であるが、まずいことをしたという自覚から良心がとがめられて、動揺したり、うろたえたりしている点で一致している。

これらの"後ろめたさ"を形成要素によって、3つに分類してみる。

1) 【習慣】によって形成されたもの

「本能的にはやりたいけれど、おおっぴらにはできない」といった類のもので、罪の意識は低い。
自分の内面で「やってはいけない、やらないほうがいい」という態度と「やりたい、やってしまおう」という行動との葛藤や不協和から生じるケースで、『ダイエット中の女性が深夜に食べるスイーツ』、『主婦が昼間から飲むビール』、『体に悪いと思いながらも止められないタバコ』などが、これに当てはまる。
習慣の多くは、後天的な価値観によって形づけられており、ライフスタイルによっても異なる。


2) 【常識】によって形成されたもの

暗黙的なルールに抵触したり、秩序に反したりするとき、周囲や世間一般の目を気にして、罪の意識を感じるケース。『被災地での過度なおしゃれ』や『主婦がパチンコに通う行為』などがこの分類に当てはまる。飲酒場面も『職場でアルコールを飲む』となると、他者の存在が入ってくるので、ここに属する。
また、周囲の環境や受けてきた教育の影響によって異なる、という特徴も見逃せない。

3) 【背徳】によって形成されたもの

「倫理・道徳上、明らかに良くない」とされる種類のもので、『カンニング』、『浮気』、『未成年のたばこ』、『法で認められていない麻薬』など、快楽欲求に流されるケースやタブーがこの領域になる。

マーケティングの現場では、商品開発やコミュニケーション戦略につなげるべく、これらの生活者の"後ろめたさ"を読み解こう、という試みがよくされている。

【背徳】によって形成された罪悪感は別としても("潔白""無罪の証明"でしか解決策が見いだせないと思われるため)、【習慣】や【常識】によって形成された罪悪感は、"開きなおり"によってある程度、攻略することができるのではないか。

【習慣】によるものは、「やってはいけない」と「やりたい」との不協和を埋めるべく、「言い訳を探すサポート」「正当化させるための助言」をすることで、解決できる。自分の中で開き直ることができれば、後ろめたさは薄れると思われる。

【常識】によるものは、社会性や集団従属欲求の関与するところが大きいので、後ろめたさを払拭するのではなく、「他者からの肯定や伝達」が安心感につながると思う。身近な人から「皆、同じ」「開き直りが肝心」と共感されたり、先人や目上の人から「問題ない」と肯定されたりすれば、後ろめたさは消える。

"後ろめたさ"は、コントロールすることができる。商品やコミュニケーションによって、"後ろめたさ"から"開きなおり"のきっかけづくりができれば、企業は生活者と共感やエンゲージメントさえ築けるのである。

後ろめたい気持ちを肯定してあげたり、開き直るきっかけをつくったりするコミュニケーションは、ジャンプしすぎると「やり過ぎ」「そうはいってもできない」「荒唐無稽」となってしまうため、バランスを保った見せ方のさじ加減は難しい。
しかし、ターゲットにぴったりはまれば、安心感に結びつき、態度変容をおこすことができるのである。