株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
代表取締役社長 澁野 一彦

◆ネットターゲットとしても期待できる巨大シニア市場


日本人の平均寿命は86.4歳(2010年)、65歳で退職して平均寿命まで生きたとすると、残りの総ライフタイムは約20年で18万時間弱になり、その内1/2が自分の自由な時間と考えると9万時間を高齢者として生きていくことになる。
一般のサラリーマンが退職するまでの総労働時間が8万時間と云われているので、現役時代に投入した時間と同じかそれ以上の時間が自由時間としてある。この膨大な時間をいかに豊かで有意義に過ごしていくか、シニアライフの生活デザインか大事になる。
もともと高齢者は時間と資金に余裕がある人(金時持ち)が多く、物販に限らず消費者としても非常に高いレスポンスが期待できる層である。
一方で高齢者は加齢に伴い体力が劣えていき、活動範囲が狭まり出歩くことや重いものを運ぶことに不便を感じることが多くなる。そのため出歩くことなく自宅まで重い商品を届けてくれる通販や宅配サービスのヘビーユーザーが多いのもこの層の特徴である。
このように考えると高齢者層はインターネットビジネスのターゲットとしても適性が高く有望で ぜひとも取り込みたい層である。
◆シニア層をネットへ誘(いざな)う~高齢者の加齢特性に配慮したインターフェイスの提供


今まで見過ごされがちであったが、高度成長を牽引した団塊層が高齢者になり、シニアのネット利用率は急速に増加している。総務省発表のデータによると、65歳以上のインターネット利用率は57%(平成22年)、70歳代でも39%まで達しており、この層(70歳代)に限れば前年比20%の伸びである。
これを受け近年高齢者を対象としたWEBサイトが急増中であるが、必ずしも使い勝手の点で彼らに配慮されたものにはなっていないのは残念である。
高齢者を対象としたWEBサイトでは高齢者の特性を理解した上でユーザビリティを考慮する必要がある。残念ながら人間は加齢するに伴い、身体の様々な器官や機能が衰えてくる。
前回このメルマガでは高齢者の「咀嚼能力低下」について述べたが、それ以外にも加齢に従い運動機能、知覚機能、認知機能などさまざまな機能が衰えてくる。そのため今まで出来ていたことが出来なくなる、あるいはミスが増えるなど日常生活に徐々に影響を与えるようになる。視覚機能と認知能力の低下もその一つである。
例えばWEBサイトの文字が小さすぎて「最初から読む気がしなくなる」(高齢者の意見)といった声に対して、「説明の文字は大きくしたほうがいい」といった短絡的な情報から、なぜ小さいと良くないのかという根拠がよくわからず、単に文字を大きくし逆に行間が狭くなり、更に見難くなるケースもしばしば見られる。
この場合、シニアは加齢により視認機能が低下し小さい文字は視認性が悪いというも問題である。しかし視認性を良くする為に文字を大きくするという意図を充分に理解していないと大きな文字でも行間が狭く目線が定まらない視認性の悪いデザインになってしまう。
この場合は文字を大きくすることが大事ではなく、視認性を良くすることが大事なのである。逆に文字が小さくても、視認性がよいデザインも充分に可能である。
ユーザーのインターフェイスの問題では、単純にデザインについて対処的な修正をすることではなく、シニアユーザーの知覚、認識行動の視点を踏まえて問題を低減することが重要になる。
◆シニアに優しいWebサイトデザイン


シニアは加齢に伴いいろいろな原因で視力が低下する。昨年弊社で実施した60~79歳のシニアの調査では、「目のかすみ」を訴える人が32%存在。また60歳代で60~70%の人が白内障を発症すると云われている。
眼科医のサイトで調べて見ると、白内障が進むと色が黄みがかって見えたり、視野が狭くなったりと様々な症状が生じる。特に緑色と青、また黄色と白などの判別が難しくなる。(とのことである)
サイトデザインでも頻繁に使われている色の組合せであるが、「緑と青」や「黄色と白」の配色はなるべく避けるほうがよいそうである。
また当然であるが 明度の低い文字も目立たず見難くシニアには不向きであると云う。
フォントの大きさについてNTTデータ経営研究所は、「ネットを利用する高齢者の約半数がパソコンの文字を大きくする機能を利用している」と云っている。
字体に関しては「太めのゴシック体や筆文字」などフォントのはっきりしているものが好まれているとのこと。視認性を考える上で使用するフォントの大きさや字体の選択は非常に大切であるようだ。
色の好みも年齢層により変わってくる。色彩研究所の調査では、団塊世代の男性は他の層に比べグリーン系を好む傾向が高く、また団塊女性は今までの高齢女性と比べて赤紫を嫌うといった特徴が見られたそうだ。
ただ最近のおばあちゃん達のカラフルなメッシュを入れた髪を見てもわかるように、シニアだからといって地味な配色を好む訳ではなく、全体的に明度を保ち、彩度の高いメリハリのある色彩を加えることも彼女たちの嗜好の延長にあるようだ。
色については配慮も必要である。
高齢者ドライバー向けの黄色とオレンジの紅葉マークのデザインは「枯れ葉」をイメージさせることから、高齢者に大変不評であった。以前メルマガでも書いたようにシニア層は自分達をシニアとは思っておらず、「年寄りくさい」ことを良しとはしない。「年寄り」を意識した色使いや配色は抵抗感が強いということも理解しておく必要がある。
ユーザビリティをシニア層に特化させた"シニア携帯"のようなシニア向けモードの設定も考えられるが、そこはプライドの高い高齢層世代(特に団塊世代)である。「簡単モード」や「簡易版」の類の文字には拒否反応を示し、使おうとしないということにもなってしまう。見せ方の工夫は必要である。
高齢者の機能低下の特性に合わせてハード面では種々サポートすることは大事であるが、決して「一般とは違う」「阻害されている」という感じを持たせないように配慮することを忘れてはならない。
これまでインターネット社会は、主に若者(それもITリテラシー高い)を中心に設計企画されてきた。そのためオーバースペックで必要以上の機能まで量産されてきたともいえる。今後はインターネットは高齢者も含めた全世代共通のツールであるという視点にたち、機能、ユーザビリティの開発を行ってほしいものである。
続く