株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
GI部 ディレクター インタビュアー 吉田 聖美

年明け長崎ハウステンボスに泊まりで行ってきた。高校生まで九州で過ごしていたこともあり、行くのは初めてではないが、ここ10年ほどは行く機会がなかったため、久々に門をくぐることとなった。

長崎ハウステンボスは、長崎県佐世保市にあるオランダの街並みを再現したテーマパークである。私が遠ざかっていた10年の間に取り巻く状況は激変している。2010年からはHIS傘下に入り、黒字化も達成している。

なぜ黒字化が達成されたのだろう。現地に行くと、色々な要因が見えてきた。

要因(1):コンセプトを明確にし、その上で必要な設備を見極める


「滞在型・過ごす都市」がハウステンボスのコンセプトであり、他のテーマパークとの違いである。住所も「ハウステンボス町」であり、街中には大学、公園、消防署、警察署もある。テーマパークらしからぬ、街の雑貨屋の様相のお店もあり、一部の無料エリアでは市バスも通っている。

「滞在」をテーマにすると、そこに必要なのは、大掛かりなアトラクションではなく、季節を感じ、眺めていたくなる風景になる。

実際、ハウステンボスにおいて、大掛かりなアトラクションはあまりなく、10年前と比べてもアトラクションが格段に増えた印象はなかった。アトラクションに頼らず、来場者を増やすことが可能という証拠でもある。

また、場内にある飲食店も単価が低めのものも用意されていたり、宿泊先も高級ホテルだけではなく、コンドミニアム・ペンションタイプも存在しているなど、居心地の良さが重視されている。

要因(2):「No.1」を作る


今回訪れて一番驚いたことは、夜のイルミネーションの豪華さであった。820万個のLEDを使ったイルミネーションは世界一の規模らしい。

夜のイルミネーションが世界一→来たからにはイルミネーションを見よう→滞在型都市なので、宿泊場所はバリエーションに富んでいる→なら、泊まっていこう、という好循環を呼んでおり、実際、平日であったにも関わらず、宿泊施設のほとんどは満室であった。

1位は覚えられても、2位は記憶に残らないとは良く言われる話である。知らない人に良さを伝えるときにも「世界1の○○があるんだって」というのはわかりやすいメッセージになる。

これだけは負けないと言えるものを持ち、しかもその1位がコンセプトに沿っている点が好ましい。

要因(3):出来ることと出来ないことを知る


(1)(2)の流れは、来場者の滞在時間を延ばすことになり、客単価の増加にもなる。滞在時間が長く、丸1日を満喫した気分になれると、○円で丸1日楽しめるなんてお得という気分になり、1日パスポートの料金設定を相対的に安く感じ、コストパフォーマンスの良さが印象に残る。

今後、休みができ、1日どこかに出かけよう、となったときに候補となる可能性がアップする。

東京などと比べて商圏が狭く、利用可能者数も少ない地方のテーマパークにおいて、客単価を増やすことは課題として大きい。ちなみに、ハウステンボスの2009年の来場者数は約141万人。長崎県の人口が約140万人であることを考えても、来場者数を増やすことには限界があるであろう。

来場者数を増やすことにこだわるよりも、客単価を上げる方が身の丈にあった施策ということになる。


今回のケーススタディで見られた
  「コンセプトを明確にし、その価値を提案するプロダクトを作っていく」
  「消費者にアピールできるわかりやすい売りを作る」
  「出来ることと出来ないことを把握した上で方向性を定める」
ということは、マーケティングでは基本ではあるが、商品の開発が進んだり、商品が世に出てからしばらく経つと、何となく他の情報に押されて忘れがちなことでもある。

ハウステンボスがかつて大掛かりな施設を作ろうとしたり、迷走してしまったのも、ディズニーリゾートのような他の人気テーマパークに目が行って、模倣しようとしてしまったからではないだろうか。

迷ったときには初心に返ること、ないものねだりをせず、自分に出来ることを考えることの重要性を感じた旅となった。