株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
GI部 ディレクター インタビュアー 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)

2012年が、明けました。
昨年は、従来の定性調査(グループインタビューやデプスインタビュー)だけでなく、MROCにも数多く携わらせていただきました。今年も引き続き、よろしくお願いいたします。

「グループインタビュー(group-interview)と

 MROC(Market Research Online Communities)との違いは何ですか?」

この質問を、よく受ける。

それに対して、教科書的に「グループインタビューは仮説検証型で、MROCは課題発見型。MROCは、双方向コミュニティーの場なので、関係が構築できれば、自然に起こる会話や刺激から思いもよらぬ潜在的な気づきや発見が得られる可能性がある」と、答えてきた。

これは、オンライン定性リサーチ全般に共通して言えることなので、間違いではない。が、MROCのコミュニティーマネージャー(モデレーター)の実践を積むにつれて、しっくりしない感覚に陥っている。

もちろん、現段階では「MROCを試動したい」ということが受注案件の多くの調査目的であるため、2週間前後の短期間での実施にならざるを得ないことに加えて、アドホック的な問題解決型のテーマが多いため、MROC本来の価値が発揮できないことにも起因していると思うが、それだけであろうか。

そのモヤモヤを解決するヒントが、企業コミュニティー運営の先駆者である武田 隆氏の【ソーシャルメディア進化論】の著書と、参加した講演の中にあった。

武田氏は、リアルのグループインタビューとMROCとの違いについて、
MROCは「デプスインタビューの集合」であり、そのグループダイナミクスは、参加者が他者の発言を参照にしつつ行う「自分自身との対話」に現れると説明。それを「静寂の中で生まれるグループダイナミクス」と表現されていた。

「そうか、デプスインタビューでいいのか・・」と、ホッと胸を撫で下ろした。
というのも、MROCにおいて、生活の様子などのパートでは参加者同士のコミュニティーが生じているのだが、実態や評価のパートではグループダイナミクスが見えにくく、どうしても1対1になってしまうことを実感していたからである。

MROCは、グループインタビューでは難しいRelevance(同氏は"我が事化"と訳されている)が生じやすく、自分の深層に眠っているホンネを冷静な思考で表出させるということなのであろう。
確かに、グループインタビューでは「ノリで喋ったけど、本当にそう思っていたかなぁ?まっ、いいか」ということが生じやすい。また影響力の強い対象者がいた場合、その意見に流されやすいというデメリットもある。

グループインタビューが「相互刺激の動的な会話の中で生じるグループダイナミクス」とすると、
MROCは「静寂の対話の中で生まれるグループダイナミクス」という感覚であろうか。

グループインタビューは、周囲の発言を聞いて「言われてみればそうかもしれない」「今まで意識していなかったけれど、そういえば自分もそう思っていた」と刺激と気づきによって行動や気持ちを意識させる中で、ホンネに迫っていく手法である。

一方、MROCは、対面でないがゆえに自分のペースでじっくりと思考をめぐらせ、静寂な自己の内との深い対話に向き合える。また、匿名性が担保されているからこそ、ホンネをぶっちゃけることもできる。

MROCをある程度の長期間で実施すると、参加者が「自分のホンネを言い切った」と思える特徴があるという。深い発言が自分から表出されること自体が悦びで、会社から感謝されることを通じて社会につながっていることが確認できることも喜びになっているのであろう。

相手のホンネに迫れるのは、定性リサーチならではの醍醐味。モデレーターとしても、ホンネが表出することは、たいへん興奮することである。

MROC事業は、まだ始まったばかり。本年も、コミュニティー活用事例の研究を続け、オンラインリサーチの経験と実績を積んでいこう、と決意を新たにしている。

つながることが価値を生むということを信じて。