株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 大阪事務所 アシスタントディレクター 林 奈々

前回は主に定量的な視点で、消費者調査における中国独自の背景事情・注意点をまとめた。

今回は定性調査について、手法別に見てゆく。(数字は、「前編」からの通し番号)

調査手法から~【3】FGI 


そもそも中国においてマーケティングのための消費者調査を始めたのは中国人自身ではなく外資系企業であったという背景事情もあり、GIルームは同時通訳システムが完備されているところが一般的である。

まず、知らない土地や文化圏でFGIを実施する時に不安になる「参加者の積極性や雰囲気」についてだが、おおむね中国の方は日本人より"自己主張したい欲"が強い方が多いため、基本的に発言は活発であり、モデレーターが質問を投げかけても誰も答えず「しーん」となったらどうしよう!?というような心配はあまりない。

「どれだけ本心をしゃべってくれるか?」については、やはり初対面同士の場なので多少の遠慮はあるだろうが、そこはモデレーターの腕の見せ所、である。

個人的には、中国人は良くも悪くも日本人に比べてあまり「表情、態度を良い様に取り繕わない」印象であり、必要以上に"にこやか"にしている人はあまりいない。(無愛想な接客をしばしばされて腹が立つこともある・・。)

そのぶん、モニタールームで見ていて表情が暗かったりつまらなそうな時には「呈示品に興味がないんだなー」、明るく楽しそうな時には「あ、好意的に感じているな!」等々、対象者の"言葉に出ない意見"は掴みやすく感じたのだが、果たしてどうだっただろうか?

ちなみに、今回は、同時通訳ではなく、「通訳を交えたグループインタビュー。日本人が司会を行い、"質問投げかけ(日本語)"と"対象者の発言(中国語)"をその都度翻訳してゆく」というイレギュラーな形式をとった。

この方法だと、会話の流れや場の盛り上がりを多少寸断して通訳が入るためグループダイナミクスは起こりにくいが、対象者の発言が細かく丁寧に拾えるので、個々人で異なる消費・使用実態や関与ヒストリーなどを聴取したい場合には有効だと思われる。
(※但し、すべての発言に通訳を挟むため、通常の2倍程度のインタビュー時間が必要。)

また、グループダイナミクスの観点で言えば、1つのグループ内で大幅に生活レベルや生活習慣が異なる人たちが混在していると、刺激や共感が起こりにくい。「前編」の冒頭にも書いたことだが、「中国は広く、所変わればほぼ外国。貧富の差も幅広く、生活スタイルも多種多様」なことを調査設計の段階で念頭に入れておく必要があるだろう。

調査手法から~【4】ホームビジット 


・中国の家庭では、基本的に地べたには座らない。床は"汚いところ"という認識。
・キッチンはかならずしも"母のもの"ではない。
・水洗トイレでも、紙は流せないところが多い。
・・・などなど、当人たちが"当たり前"と思っていることはなかなか話題にあがりにくく、「百聞は一見に如かず」で発見が多いのが、ホームビジット(家庭訪問)である。

実際に商品を使っている様子や調理過程を見せていただくのももちろん有益であるし、それら商品を使う空間や日常習慣などの「背景情報」を知ることも特に定性的な分析の場合には重要であるから、(自分たちの経験から想像しにくい)異文化における消費者理解のためには特に有効な方法だといえる。

今回、私自身は経験しなかったが、弊社では過去に食品関連の調査で実績があり、その時は、キッチンや調理家電・器具などを見せてもらったそうだ。

かつての日本の高度成長期時代のように、家具や家電を購入できることがステイタスに繋がる風潮があるので、大画面テレビや革張りのソファがある立派なリビングを(頼んでもいないのに)見せてくれるなどおおむね友好的で、家の中を見せたり撮影されることにはそれほど抵抗感がなさそうだったとのこと。

但し、先回書いたように、中国では共働き家庭が一般的であり日中は家に人がいないことが多く、訪問のために仕事を休んでいただいたり希少な休日にご協力いただくことになるため、謝礼はそれなりの額(FGIと同等あるいはそれ以上)は必要となる。

調査手法から~【5】今後はミステリー・ショッパー


最後は半分余談になるが、実は、今回の渡航で一番気になったのが、店員の接客態度のクオリティである。
大都市上海にはコンビニもドラッグストアも高級ブランドショップもあり、お金さえ払えば日本と同じものがほとんど不自由なく手に入る。ただ、お店を後にする時の"満足感"は日本とは比較にならず、一端の不満を抱えたこともしばしば。

飲食店(結婚パーティをやるようなきちんとしたレストラン)の円卓で私達が談笑していると、すぐ隣ではテーブルを片付けながら店員同士が声高に口論をしはじめたり。(ガッチャガッチャと食器をぶつける派手な音のBGM付…。)明らかな仏頂面で注文をとったり。

社会主義国であり、労働が"サービス"である、という意識がまだまだ薄いのが一番の原因だと思うが、ここまで国際的な都市で、また商品の品質は遜色ないレベルになってきた上海だからこそ、CS(顧客満足)部分のクオリティが低いのは残念に思う。

実際、百貨店などでは、日系企業のショップの接客態度を見習って店員教育を一斉に施すなど、現地でも少しずつ意識は変わってきているようだ。
消費者とのリアル・コンタクトの場所となる店舗の品質を上げるためのCS(顧客満足度)調査、特に「ミステリー・ショッパー」調査が今後多くのカテゴリーで注目されるのではないか、またそうあって欲しい、と渡航全般を通して考えた。

以上、私見を交えたごく表面的なまとめではありますが、今回の調査事例紹介を兼ねて、ご報告まで。お話を伺った皆様へお礼を申し上げます。また近々、中国現地調査のチャンスに恵まれますように。