株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 大阪事務所 アシスタントディレクター 林 奈々

この1,2か月の間に2回ほど、上海出張の機会を得た。
主な業務は、とある製品(中国未発売)の現地における消費者受容性調査であり、CLTによるコンセプト&プロダクト評価調査の後、2週間のホームユーステスト(HUT)を実施。更に、その対象者の一部には、グループインタビュー形式で事後聞き取り調査を行った。
この実際の業務を通しての私の経験と、出張の折に現地のリサーチ会社スタッフや縁のある日系の現地企業担当者さんと直接お話して得た情報から、今回、「最新版・中国のリサーチ事情」をまとめてみた。
調査設計時の注意点~人々の消費レベル、文化背景から


滞在中、現地オフィスや地下鉄で目にする人々は、iPhoneなどのタッチ式スマートフォンを手に手に操っており、その普及率は、肌感覚で日本と同等かそれ以上。街中には外資系の高級ブランドショップやスターバックスコーヒー、ローソンやファミマがあちこちにあり、価格帯も日本と大差が無い。
が、一方、上海の人々の平均月収は3500元程度(≒約4万円/2011年9月現在)であり、上記のようなショップや物・サービスを利用するのは一部の限られた「富裕層」であることが窺える。
つまり、日本のように「一億総中流層」ではなく、中国は、「とっても貧乏な人」と「とってもお金持ちな人」が混在しており、生活レベルが幅広い。
また広大な国土は、言葉も、食べ物も、生活様式も、文化も、地域によって大きく異なり、中国人にとっても見知らぬ地域は「ほぼ外国」である。
そのため、食品や日用品のような(日本で考える)一般消費財の調査の場合でも、「ランダムに小サンプルを採ってきて傾向を見る」のは割と難しく、(高価格帯商品や住宅不動産等に限らず)どのような商品の場合でも、収入/支出水準や居住区・居住年数について、スクリーニング段階である程度の条件付け・割付の必要があると感じた。
また、既存のオープンデータを参照する場合も、必ずしも「平均値」イコール「普通レベルの人」ではないことに注意したい。
そのほか日本と大きく異なる点として、「主婦」に当たる人がいない。中国では結婚後女性も仕事を続けるほうが一般的であり、共働き家庭が主流。家事や食事の準備なども夫婦で分担することが多く、男性もごく普通に料理をする。(ちなみに、中食や外食文化も発達している。)
WEBの可能性、適用可能範囲


中国の総人口に対するインターネット利用率は36.2%(2011年6月末,CNNIC)。但し、そのうち8割は10代~30代の若者層に偏っており、現地のwebリサーチ会社の見解によると、「45歳以上対象の消費者調査でオンラインリサーチは厳しい(代表性があるデータとはいいにくい)」とのこと。
ちなみに、都市別にみると、上海は1,239万人(普及率64.5%)。農村部/都市部での普及率にかなりの差があることが分かる。
日本と同様「WEBモニターの質の管理」がWEBリサーチ会社の課題であり、国民IDナンバー(1人ずつに登録No.があり中国国民は常にIDカード携帯の義務がある)による二重・三重登録の排除や、月1程度の自主調査の投げかけによるモチベーションの管理(及び"休眠モニター"のカット)を行っている。
また、日本では一般的になってきた、「WEBモニターを使った新商品評価」や「WEBモニター対象のホームユーステスト」は、まだ途上段階の感触であり、情報流出が特に懸念される画像・イメージ呈示や、回収が必要なテストプロダクトの場合は、従来型の機縁リクルート法を使ったほうが無難かと思われる。
「WEBによるリアル調査(CLTやFGIなど)への対象者リクルート」は実施可能。
調査手法から~【1】CLT


日本と同じく、モールインターセプト(ストリートでのキャッチ)は難しくなってきたとのこと。街頭での勧誘行為に当局の取り締まりが厳しくなった、人通りの多い場所付近の貸し会場が減ったなどの原因によるもの。
そのほか設計の観点から言っても、先に述べたように「中国では人々の生活レベルが幅広い」ため、道行く人をランダムにサンプリングしてきても必ずしも「中国における消費者層の一群」として代表性があるとは限らないので、次第に事前リクルートに比重が移ってきているのだと考えられる。
実査現場においては、現地スタッフがマンツーマン(あるいはそれに近い形)で、対象者の回答内容を随時確認・フォローしながら進行するので、ひいてはこのスタッフたちの調査内容理解度、フォローのしかたが結果データの質に影響を与えることになる。
言葉の壁・文化の壁があることをアタマに入れて、国内で実施する以上に、現場スタッフとの事前打ち合わせ、充分なインストラクションの時間を確保しておくことが重要
調査手法から~【2】HUT


HUTにおける主な実査上の懸念点は、
「(1)商品の受け渡しがスムーズにいくか」
「(2)正しい頻度・期間・使い方をしてもらえるか」
「(3)(必要な場合は)テスト品をきちんと回収できるか」
になるかと思う。
今回の場合は、
(1)対象者に会場に来てもらいCLT形式のコンセプト評価の後、手渡しで商品受け渡し、
(2)その際、使用上の注意について口頭で説明したほか、「使用上の注意」シートをテストプロダクトに同梱、更に2週間のテスト期間の最中にスタッフが電話を入れてきちんと決められた頻度で使用しているかを確認・念押し、
(3)また、テスト品渡しの際は回収時に返金する仕組みでデポジットをとる、
という仕組みで問題なく調査を終えることが出来た。
(1)(3)については、今回の方法以外には、調査スタッフが直接対象者の自宅に届ける方法をとっているとのこと。(この場合、対象者にとっては自宅の場所まで知られているという拘束力がある。)
日本では主流の宅配便や郵送による受け渡し方法については、「世界中を見渡しても日本の宅急便&郵便サービスの良さ(信頼性・スピード)は群を抜いており素晴らしい、海外では手紙や引越し荷物が届かないのは『よくあること』」という事情を考えるに、中国ではあまり採用されていないのではないかと思う。
定性調査については、「後編」に続く。