株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
GI部 ディレクター インタビュアー 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)

秋の気配を、日に日に感じるようになってきた。
秋といえば、おいしい食事。旬の素材を豊富につかった味や香りが、食欲を増進する。
きのこ・栗・さつまいも・里芋などの秋野菜が入ったお菓子や食品。
梨・かき・りんごなどの秋の果物を贅沢に用いたスイーツ。
松茸ごはん・銀杏・サンマ・鰯・鯖などをメニューにする飲食店。ファーストフード店の月見バーガーも健在。
秋の味覚にあわせた秋限定の飲料やビールも店頭に賑やかに並ぶ。
食欲だけではない。秋色のファッションや秋限定のパッケージコスメなどは、視覚を刺激して、買い物欲が旺盛になる。「売り切れる前に、買っておきたい」という心理が働くのである。
なぜ、「この季節にしか、食べられない」「秋にしか、着られない」「次に来た時には、ないかもしれない」という言葉に、人は弱いのであろうか。
これは、≪心理的リアクタンス理論≫で、説明できるのではないか。

人は「自分の意見や態度を自由に選択したい」という欲求を持っており、これが脅かされると、自由の回復をめざそうとする。
この回復しようと動機づけられた状態が≪心理的リアクタンス≫。生起するリアクタンス(抵抗)の大きさは、自由が確保されているほど、自由が重要であるほど、自由への脅威が大きいほど、大きくなるという。
また、説得を受けるとき、唱導方向に態度を変えるよう圧力をかけられると、受け手は態度決定の自由が脅かされたと感じ、唱導された態度を取らないことで、自由を回復しようと≪ブーメラン効果≫
*が生じる、とこの理論では説明している。

「限定品・限定メニュー」や「ここだけの情報」は、≪心理的リアクタンス理論≫をうまく使っている、と思う。
「季が移ると、店頭からなくなるかもしれない」「気長に構えていると、皆が食べてしまい、自分が食べられなくなる」と考える。この「食べられなくなる」という抑制行為を避けたいので、それに抵抗すべく、ついつい食べてしまう。また、「いつでも買える」という自由を失うことで、ますます自由を回復しようと買いたくなるのである。
かといって、説得されると反発する。決め付けられたり、押し付けられたりすると、気分が悪くなり、何とか抵抗しようという≪ブーメラン効果≫の心理が働く。商品説明も、「決めつけ」「強要」型では、反発が起こるということなのである。
≪抑制による希少性≫≪自由を求める心理的リアクタンス≫は、非常に効果の高い承諾誘導の技法になりえる。
それは、希少性の圧力を十分に理解しているにもかかわらず、その圧力になかなか抵抗できないからである。
これを、商売に当てはめると、顧客の購入機会を制限することで、希少性を意図的に働かせることが可能ということになる。「販売数量の限定」「販売期間の限定」「販売地域の限定」「購入可能条件をつける(以前にある商品を購入したお客様のみ購入可能など)」の事例は、効果的な誘引に結びつきやすいということが理解できる。
このように、≪心理的リアクタンス≫を意識しながら、抗しがたい秋限定商品の魅力と接してみるのも、面白い。
≪心理的リアクタンス理論≫・・Brehm, J. W. によって提唱された説得への抵抗を説明する有力な理論で、何かを禁止されたり、強要されたり、奪われたりすると、自由を回復しようと、無意識的に反発的な行為をとり、それとは逆の行動をしてしまうという心理作用。
≪ブーメラン効果≫・・コミュニケーションによって他人を説得しようとするとき、説得をすることによって、説得される側がまったく逆の意見を抱いてしまう現象。心理的リアクタンスが高いと、却って説得とは別の行動を取ろうとする。このブーメラン効果を使って「覗くな」「食べるな」と言って覗かせたり食べさせたりすることが可能になる。心理的リアクタンスを逆手に取った方法だといえる。