株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
GI部 ディレクター インタビュアー 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)

長期の夏休みをとって、異質な文化と強烈な個性を放つ国、「モロッコ」へ旅行をした。
帰国してスーツケースを開けた私はパンパンに詰込まれた荷物とおみやげの数をみて、「なぜ、こんなにおみやげを買ったのだろう」「果たして、大量の買い物が必要だったのだろうか」と、あきれてしまった。
『バブーシュ(皮製スリッパ)』7足、『アンモナイト化石の首飾り』6つ、『ファティマの手(銀細工)』3つ、『サブラ(サボテン糸)のスカーフ』6枚、『アルガンオイルと石鹸』6つ、『ダマスクローズのオイル』5本、『カゴや布バック』3つ、『香辛料やミントティ』数種類、『ガスール(洗浄料)』3つ、『カサブランカビール』6本など・・・家族や友人用のおみやげ、自分に買ったものを、トランクにぎっしり詰めてきたのである。
それにしても、なぜ 《おみやげ品》は、買いたい気持ちへ誘うのだろうか。
もちろん、日常とは異なる時・空間なので、いつもより気持ちが開放的になり、財布の紐が緩くなるのは、当然だと思う。しかし、それだけであろうか。
今回の《おみやげ消費行動》を冷静に分析してみると、いくつかのパターンが見えてくる。
1つ目。「この地でしか買えない」「この時期にしかない」というもの(獲得欲求を充足)。
普段の買い物でも、『今だけ限定』といわれると、「買っておかなきゃ」と気持ちが急くことはあるが、今回は、イスラム圏西の果てに位置する場所。二度と来る機会はないかもしれない。
「有名な民芸品なので買っておこう」「日本にはないものなので試してみたい」という欲求に、「ハンドメイドなので、二つとない(他では売っていない)」という希少性も加わって、購入するパターンは多かった。

2つ目。「とにかく、今を満喫したい」という気持ちを充たしてくれたもの(同化欲求を充足)。

長い滞在ということもあり、「その時その時を楽しんで、現地の人に近い格好をして、なじみたい」という気持ちが強かった。その気持ちを充足させてくれたアイテムは、『バブーシュ』や『サブラのスカーフ』であった。

3つ目。他者が欲するが故に、自らもそれを欲するもの(承認欲求を充足)。

良質品と粗悪品が混在している土地柄ということもあり、『アルガンオイル』や『香辛料』を購入する際には、ブランドや店の名前にこだわった。
「宮本薫(モロッコに詳しいライター)が承認するブランドやガイドブック掲載店なので、間違いない」という安心感や「ガイドさんが評価する商品を欲しい」「皆が買っているからつられる」などが、これに当てはまる。

4つ目。五感に訴えかけ、感覚的に魅せられるもの(感性欲求を充足)。

モロッコは、『土気色とパステル』『自然と文明』『喧噪と静寂』『時間ごとに朱・蒼・紫の色に染まる空と、砂紋で生まれる影』など、神秘的で多彩なコントラストが存在する。そのため、市場にある織物やスパイスなども色鮮やかで、ココロを奪われる。視覚・嗅覚・触覚を心地よく刺激されて、衝動的に手にとったり、買ったら気持ちが上がりそうな自分を想像したりして、購入に至るケースである。

5つ目。思い出に浸れるもの(記録・証明欲求を充足)。

「帰国しても、幻想的な現地の雰囲気を味わいたい」という欲求を充たすため、思い出を買うのである。消耗品ではない『ファティマの手(銀細工)』『幾何学模様のバック』などが、これに該当するのではないか。

6つ目。珍しかったり、おしゃれだったりして、話題になるもの(伝達・表現欲求を充足)。

「ネタになるから、買っていこう」「幾らで落札したか、を自慢したい」とコミュニケーション前提で購入することは案外多い。これらは、「変わったおみやげ、といわれたい」「素敵!欲しいと褒められたい」「(安く買った)交渉力のある自分を認めてもらいたい」という顕示的な欲求も充たせるのである。
"欲求"は、"消費行動"の要因なので、動機のパターンの種類だけ存在する。
今回の《おみやげ消費行動》は、6つだが、"日常的な消費"や"ご褒美消費"だと、どのような"欲求""消費行動"の分類になるのか、という興味も湧いてくる。カテゴリー別や属性別でみても、"欲求""消費行動"は異なるであろう。