株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 牛堂雅文

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日本でも4/28(金)にようやく「iPad2」が発売され、弊社に近い渋谷のアップルストアにも行列ができました。何を隠そう、私も並んで「iPad2」を購入した一人です(笑)。
そして、5/11から東京ビッグサイトで開催された「スマートフォン&モバイルEXPO」では、実に多くの企業がこぞってスマートフォンやiPad向けの業務アプリを展示しており、とても短時間で見切れるものではありませんでした。
まさに花盛りといって良いような状況であり、勢いを感じずにはいられません。
今回は「iPadをマーケティングリサーチに活用できないか?」という弊社のトライアルの"さわり"をご紹介したいと考えています。

リサーチでいえばCAPI(キャピィ)


マーケティングリサーチの分野ではCAPI(Computer Assisted Personal Interview)といわれる、回答にPCを用いたリサーチが古くから存在しており、私自身Windows以前の黒い画面の時代に四苦八苦してノートPCを設定した記憶があります。
CAPIのメリットは大まかにいうと、
 (1)対象者の直接入力になるのでデータ入力の手間が省かれること
 (2)分岐、矛盾のチェックなどの複雑なロジック制御が可能
 (3)PCならではの動的、複雑な手法が可能
という3点になります。
しかし、現実的に対象者によるPCの操作は、これだけインターネットが普及した今でも多少ハードルがあり(特に自由回答入力)、またPC本体が大きく、重く、壊れやすいため会場内を歩き回るような調査には不向きである、といったデメリットがありました。
                     
そして、以前私が苦労したように事前準備に労力、時間がかかることもデメリットと言えます。
また、紙の調査で実施した場合でも、パンチ入力のコストが低く、スピードも速いため、紙の調査票で実施後にパンチ入力することに特に不満がなかったことも、CAPIの必要性をあまり感じにくかった要因であると言えます。
そういった背景があり、CAPIは夢のリサーチツールのように思えた割に、さほど普及が進まなかった経緯があります。
iPhone/iPadの登場


しかし、そこに転機が訪れました。iPhone/iPadなどの直感的な操作性のモバイル機器の登場によって、持ち運びに便利で、操作性も優れた環境が用意されたのです。
そして、通信環境の進化も忘れてはならない大きな要素と言えます。今の日本では、モバイルでの高速かつ定額のパケット通信が当たり前であり、実に恵まれた通信環境になったと言えます。
これをマーケティングリサーチに応用しようというのが、今回の本題となります。
マーケティングリサーチへの応用


海外からはスマートフォン調査の話が聞こえてきますし、トライアルは色々となされているようです。
モバイルでの活用の可能性も感じてはいますが、弊社の場合、渋谷というロケーションの関係もあって手法としては「会場調査」が多くなっています。会場調査での活用を前提にiPhoneではなく、iPadを用いた実証実験を行いました。  
iPadは、他にも街頭調査、来場者調査、ミステリーショッパーズといった調査員が広範囲で活動する調査にも適していると考えられます。
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また、ITに詳しい方は、「Androidのタッチパッドでも良いのではないか?」とお考えの方もおられると思います。しかし、OSのバージョン管理、統一したハードでそろえる場合の入手性、そしてユーザーインターフェイスの洗練度などで、まだiPadに一日の長があると感じています。
メリット/デメリット


iPadリサーチはCAPIの代替であり、延長線上にあるという位置づけを考えると、メリットも同様です。
 (1)対象者の直接入力により、データ入力が省力化・スピードアップする
 (2)分岐、矛盾のチェックなどの複雑なロジック制御が可能
 (3)動的、複雑な手法が可能
それに加え、
 (4)持ち運びに便利であり、歩き回る調査にも使用可能
 (5)直感的なユーザーインターフェイスを応用した、新しい呈示の可能性がある
 (6)センサー・デバイスによる新たな情報収集の可能性(GPS、加速度センサー、カメラなど)
といったところでしょうか。
あまりに多機能ですので、まだ手つかずの部分が多いのが実情ではありますが。
一方デメリットは、
 (1)簡単になったとはいえ、文字入力など完全に手書きに追いついたわけではない
 (2)iPadとはいえ、事前準備に労力・時間がかかることは変わらない
 (3)漢字変換の予測変換でユーザーの変換履歴が残ってしまう
 (4)画面の大きさの制約があり、紙やリアルの呈示物の方が好ましい場合もある
などであると考えています。

実証実験の概要


弊社では4月と5月の2回、実際の会場調査においてiPad実証実験を実施しました。
    
【4月実施調査】
 弊社自主調査
 調査テーマ: 「栄養ドリンクに関する調査」
 調査対象: 30才~59才女性
 調査会場: 千歳烏山
 質問数: 約70問 (うち自由回答8問)
 呈示物: シェルフ、パッケージ×3、など
【5月実施調査】
 実際の調査案件における実証実験のため、詳細は非公開
 質問数: 紙では約12ページ/約40問
4月調査の対象者は、現実に調査対象になることが多く、iPad等の機器の操作の習熟度が高くないと想定される層として、30~59才女性を設定しました。(この層の女性の方、決めつけてしまってすみません。)
なお、調査テーマとしては「女性向け栄養ドリンク」を選定し、シェルフ、パッケージ呈示などのあるフルスペックの調査を実施しています。
簡単にいいますと、「普通の会場調査をiPadでやるとどうなるか?」の実験となります。
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システムや、詳細な実施概要に関しましては、紙面の都合もありますので掲載を省略しています。お手数ですが、ご関心をお持ちの方はお問い合わせ下さい。
実証実験の様子


まず、最大の収穫は対象者で調査を拒否された方が一人もでなかったことにつきます。
むしろ、当日会場の様子を、対象者の顔が映らないようにビデオ撮影していたのですが、こちらの同意を得るのに怪訝な顔をされたくらいです。
そして、対象者が自力で回答を進めることができているというのも大きな収穫でした。
もちろん、最初だけ調査員がマンツーマンでついて説明を実施したり、手元に簡易マニュアルを用意してフォローは行っていますが、全員が助力無しで回答できています。
iPadの大きさ重さに関しては、これまでのPCに比べ大幅に軽く、小さくなっており、対象者が会場内で持ち歩くことにも問題はありませんでした。ただ、そうはいっても持ち歩く時間が長い場合に、徐々に重く感じられるおそれはありそうです。このあたりは検討を続けています。
一方で、回答の早さに個人差が大きかったため、極端に時間がかかりそうなケースでは途中から調査員によるフォローを行っています。ですが、これはあくまで我々の判断でお節介を焼いた形ですので、対象者がギブアップしたわけではありません。
調査票については選択したものが絞られていく形式(「認知銘柄」→「購入経験」→「3ヶ月以内使用」→「最頻使用」)がWeb調査の要領で可能であり、今までの紙の調査票による会場調査にはないメリットと言えます。
こう書きますと良いことずくめにも思えますが、自由回答入力においては手書きに比べ時間を要してしまうので、トータルの調査時間が伸びてしまうのがネックと言えるでしょう。
特に席を立って自由回答入力をする場合には片手操作になってしまい、入力効率が落ちるようです。
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実証実験を終えて


「優れたユーザーインターフェイスを持つiPadはこれまでのCAPIとは異なり、抵抗なく受け入れられており、実際の会場調査で使用可能である。」この手応えを得たのが実証実験の最大の成果です。
また、Web調査と紙の会場調査のハイブリッドのような調査になりますので、意外と細かい注意点が多く、実施上のノウハウを貯められたことも大きかったと強く意識させられました。実証実験の真価がここにあります。
今回は文章中心となりましたが、諸々まとめまして何らかの形でみなさまにご案内させて頂ければ…と考えております。