株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
GI部 ディレクター インタビュアー 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)

はじめに、東日本大震災により被害を受けられました皆さまに心からお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧、復興を心よりお祈り致します。
3月11日以降、人々の意識や消費行動など、あらゆることが一変した。
繰り返す余震、計画停電、原発問題、風評被害などに人々が追い詰められた結果、米や水、缶詰やレトルト食品、乳製品、懐中電灯や乾電池、トイレットペーパー、ガソリンなど、生活に欠かせない日用品が、店頭から姿を消した。
モノが溢れていた震災前までには考えられないようなことが起こったのは、先が見えない不安感に襲われ、普段は買わない商品にまで手が伸び、すぐに必要なくても買っておこう、という備蓄意識や買い急ぎの心理が働いたからでしょう。
震災後の大きな変化は、≪消費行動≫だけではない。
最近、女性だけで外食する、いわゆる女子会が何回かあったのだが、毎度、「地震の時にどこに居て、何をしていたか」という話題になる。それらの雑談の中で、震災の前後では≪恋愛観や結婚観≫が明らかに変わった、ということを実感する。
「万が一の時、独りで居たくない」「誰かと連れ添って生きていきたい」という孤独を避ける意識や「安定した生活を送りたい」という保守意識が強くよみがえってきているようだ。
例えば、以下のような会話。



「既婚の同僚は一斉に配偶者や子供に普段とは違う口調で安否確認の電話をしていた。独身で交際相手もいない私には心配して電話をくれる夫も、慌てて電話をかける彼もいない、と情けなかった」
「電車が動かずホームにいるとき、カップルがぴったりと寄り添って一緒におびえている様子や、お母さんが小さい子をしっかり抱えて守っている様子を見て、何とも言えない気分だった」
「停電で…真っ暗の中、私はこんな時でも一人ぼっちで過ごすしかない、と部屋に独りでいる時に言いようのない辛さや寂しさが襲ってくる。夜に実施される計画停電のときは、帰りたくない」
「あの日までは、周りの既婚者を見ているので結婚なんていいことばかりではない、しない幸せもある、貯蓄さえしていれば老後はどうにでもなる、と正直願望はなかったけど、心境が変わった。人はひとりでは生きられないのだと思い知り、家庭の温もりを羨ましいと思わずにはいられなくなった」
「あの日以来、妻子のある彼は家庭を大事にするようになり、疎遠になった。私にもし何かあっても、一番に気にかけて探してくれるパートナーはいない、天涯孤独と思うと恐ろしい」


今回のような非常の出来事は、普段気にしていないことを意識させるきっかけになる。
私は、結婚するカップルが増えて、進んでいた晩婚化、非婚化はいったん落ち着くのではないか、と思う。
具体的には、以下のようなイメージである。
-結婚願望がなかった"おひとりさま(独身女性)"は、独りの方が気楽に生きていけるという意識が希薄化し、緊急時に一番に心配したり、そばに居てくれたりする人が欲しくなり、婚活に励む。
-婚姻を踏み切れずにいたカップルは、これを機会に結婚を真剣に考え、"おふたりさま"になる。
-不倫カップルは、本来つながっている絆を再確認し、エゴで手に入れたものがいかにもろいかに気づき、関係を整理する。そして、本当に大切なものを見失わないように生きよう、と家庭を大事にする。
ふたりで楽しむ文化が芽生えれば、新しい産業や商品が生まれることが予測される。お見合い結婚が見直され、ブライダルネットなどのサービスが盛んになったり、夫婦や家族の結びつきを強化するイベントやゲームが登場したり、するかもしれない。
震災後、重苦しい自粛ムードや暗雲とした経済不安が蔓延しているが、「今こそ、新しい消費やサービスが生まれるチャンス」と前向きに捉えていきたいものである。
苦境の今こそ、これまでにない知恵・発想・センスが問われていく、とも思う。