「渋谷系の聖地」と呼ばれ、若者向け音楽の発信地でもあった大手ミュージックストア【HMV渋谷店】が8月22日、20年にわたる営業に終止符を打った。

このニュースは、テレビやブログなどでも大きく取り上げられ、閉店にまつわる様々な思いが届いた。
「一つの時代が終わる」「HMV渋谷の閉店は、音楽業界の怠慢」「残念だけど、ネット配信の躍進などに見られる時代の流れには逆らえない」など、単純に閉店を寂しく思う意見だけでなく、時代の流れを感じるという意見、現在の音楽業界の問題点を指摘する意見。
さらには、「サブカルチャーの最先端、影響力があった」「渋谷店だけはつぶさないと思っていた。HMVが消滅すると 渋谷に出かける理由がなくなる」と、渋谷の街にも影響が及ぶ、といった意見も聞えてくる。

果たして、「渋谷」は、街ごと衰退してしまうのであろうか。
疑問に思ったため、長期スパンの時間軸で、「渋谷の街(HMVの歴史 含)」の"変化"を辿ってみることにした。

【1950~1960年代】
東急百貨店、東急文化会館、東急プラザ、東急百貨店など、ファッション関係の東急系列の百貨店ビルが、次々登場。
【1970年代】
セゾン系列の西武百貨店が渋谷に進出。続いて、PARCOやOIOIが開店し、シブヤ109も誕生。
【1980~1990年代】
レコードからCDへの移行が進んだ時期。1990年に「HMV」国内第1号店が、「渋谷」にオープン。
ギャルブームや109の店員がメディアに盛んに取り上げられ、109やパルコが10代のギャルファッションをリード。
「HMV渋谷店」がプッシュしたミュージシャンが、渋谷系の源流として華やぐ。
1999年にはマライア・キャリーが、「渋谷HMV」に訪れる。
【2000年代】
音楽のネット配信の台頭や趣向の多様化等によりCD販売が伸び悩む。「HMV渋谷店」でも、閑散としている状態が見受けられるようになり、ジャズ/クラシック売り場が、洋楽ロック売り場と合体する。
2008年 スマートフォン(iPhoneなど)が、登場。音楽配信システム利用の加速で、CDの衰退が深刻化。
【2010年】
8月22日23時に、「HMV渋谷」が閉店
「HMV渋谷」の跡地を、ファッションカジュアルブランド「FOREVER21」が誘致。国内最大店舗として出店予定。

「何が変化して、何が変っていないか」を、時系列で読み解くと、「HMVの衰退は、以前から始まっていた」「HMVがなくなっても、渋谷はゴーストタウン状態にはならない」ということが、はっきりとわかる。

変わったのは、"ネット環境による流通"や"ファッションの様相"。
「時代の風を求めて、多くの人々が集まる場所」「若者のファッション・文化の情報発信の地として、常に賑わう」といった"カルチャーと流行の最先端の拠点としての存在意義"は変わっていないのである。

弊社は、渋谷に40年前から拠点を構え、リサーチ活動を行っている。
"可変"と"不変"という視点で、渋谷の街の分析を行ってみて、「今後も、時代を肌で感じられる環境の中で、流れに乗りながら、新しい情報を発信し続けていきたい」という心意気が高まった。