コンセプト・スタディの実施

有望なアイデアがブレーン・ストーミングやワークショップで検討され、商品化の可能性のあるものが選別される。この段階で4~5案程度に絞り込まれているのが望ましい。そして商品開発の工程ではいよいよコンセプトの検証ステップに入る。

コンセプトの検証のためのスタディには、初期のラフなアイデアをスクリーニングするためのものとある程度絞り込まれたコンセプトの受容性を確認し、ブラッシュアップするためのものと2つのタイプがあるが、ここでは後者の絞り込まれたコンセプトの検証のためのスタディを紹介する。

前者のようなアイデアのスクリーニングの場合は、絞り込みが主な目的になるので量的な支持率がわかる定量調査で実施する場合が多いが、後者のような場合は、コンセプト案の妥当性や改善・展開に役立つ質的情報が必要なため定性調査で実施するケースが一般的である。

商品企画などクリエイティブな仕事は試行錯誤を含む作業であるだけにその工程で判断に迷うことが多い。
そういう意味で対象者の価値観がわかり、現実の文脈の中でニーズや方向性が導き出せる定性調査は理に適っている手法と言えよう。

以下は実際に行うコンセプト・スタディのプロセスである。

呈示コンセプトを作る

まず、商品アイデアを対象者にわかりやすく伝えるためのコンセプト案を作る。
呈示するコンセプト案の素材は商品カテゴリーにより多少異なってくるが、基本的には(1)コンセプト・ステートメント(説明文)と(2)形体のラフイメージ(デザイン画)を用意して行なう。
また形体が分りにくかったり、テクスチャーに特性がある場合は市場に出ている類似商品を呈示して対象者のイメージをサポートする。

コンセプト・ステートメントは、商品のUSP(Unique Selling Proposition)を含む自分が何者であるかという素性を表現したコンセプトフレーズと、その構成要素を3~4項目にまとめた読みやすいものにする。欲張ってこれを6~7項目にしてしまうと対象者は全く読んでくれず、内容も散漫なものになってしまい逆効果になる。

新商品のコンセプト・ステートメント例

コンセプト・ステートメントの仕様は各社様々であると思うが、ターゲットやポジショニング、伝えたい顧客のベネフィットが明確に表現できていることが重要である。また評価レベルを合わせるためにコンセプト・ステートメントの仕様は統一(標準化)されていることが望ましい。

コンセプトのチェックと展開

さていよいよコンセプト・スタディであるが、前述したように当社ではグループインタビュー調査によってコンセプト案の検証と展開・ブラッシュアップのための質的情報を収集していく。

コンセプト・スタディにおいて注意しなければいけないのはコンセプト案に対する「建前論的」な消費者の評価についてである。モデレーターは、表面に出た氷山部分だけをみるのではなく、水面下の隠された本音の部分を解読するように心がける必要がある。

コンセプトチェックの指標として当社では以下のインタビュー項目を使用している。

《インタビュー項目例》

  1. 第一印象 ~ぱっと見てイメージがわくか?インパクトはあるのか?
  2. 新しさ、差別性、アクティビティ ~今までの商品とどう違うのか?なぜ今必要なのか?
  3. ニーズの強さ、不満の大きさ ~今なぜ必要なのか?今の不満は解消できるのか?
  4. 魅力度と魅力ポイント ~自分にとって魅力があるのか?あるとしたらどの点か?
  5. 使用意向、購入意向 ~意向の深度を探る。
  6. 想定される使用シーン、イメージの拡がり ~どんな時に、どんな風に利用しそうか?
  7. 競合との比較、ポジショニング ~既存の商品にとって代われそうか?どこにポジショニングされるか?
  8. 使用の形態 ~現在使用品からの置き換え(リプレースメント)なのか?あるいは併用、追加か?
  9. 使用頻度 ~デイリーユースか?オケージョナルユースか?
  10. 改善要望、アイデアの追加など

上記の評価項目をベースに各コンセプト案の受容性とポテンシャル/展開の方向性を探っていく。

新商品のコンセプト・ステートメント例

共感度の高いコンセプトは対象者に評価されやすいが差別性が欠落している場合には、実際には既存品からのリプレースメントは難しい。逆に好き嫌いがハッキリしているが尖がった差別ポイントがあるコンセプト案の方が(視点の変更により)ポテンシャルが高い場合が多い。

各指標でチェック・収集した情報の整理を行い、そのデータを読み込んだ後、結論導出のためのブレーンスト-ミングを実施、コンセプト案の妥当性と商品化に向けての仕様の展開を行って行く。

その後の展開

こうしたプロセスを経て、選別されたコンセプト案は徐々に具体的な商品化の段階に入っていく。消費財の場合にはプロダクト仕様(味覚、形体、量など)やパッケージ、ネーミングなどの仕上げの工程に進む。
この段階でコンセプトは「製品」から「商品」に変容していく。

ところで、商品化を具現化するための一つの手法としてペルソナ法がある。
対象顧客をあいまいな存在でなく一人の仮想の人物として特定するによって商品仕様の方向がより鮮明になる。また、常に一人の人物を想定して作業を進めるため、関係者全員が誰のために開発しているのかを共有し、一貫性がある顧客経験を考察・検討できる。ペルソナの詳細な説明に関しては参考文献に譲るが、こういった手法を併用することにより、商品化のゴールはより設定しやすくなる。

ここまで3回に渡ってコンセプト開発の工程をご紹介したが、少しでも皆様の参考になれば幸いである。