そして2006年、それまで「キャリア公式」に囲われていたような状況のケータイインターネットに大きな変化が起こりました。KDDIがGoogleと提携し、ケータイからの検索機能の大幅強化を発表、メニューページにGoogleの検索を付加したのです。
これに他のキャリアも追随し、モバイルから容易に「非公式ページ」を検索したり、Googleの変換機能を通じてパソコン向けサイトを(不完全ではあるが)見ることができるようになったのです。

これによって、それまでは「モバイルサイト」というのは「モバイルビジネス」を専門に行う「着メロサイト」や「待ち受け画像サイト」などが中心だったのが、一気にオープンなインターネットとして利用形態が変わっていったのです。

2003年に18歳だった世代はこのころ21歳、大学3~4年生くらいでしょうか。
それまで待受や着メロ、着うたやアプリゲームなど、「ケータイ向けコンテンツ」で遊びなれていた世代は、徐々にオープンなインターネットへとアクセスするようになっていきました。

そしてその頃にはインターネット上にはWikipediaなどの膨大な「知」がアクセス可能な状況になっており、「知りたいことを知る」ということが無料でできることを覚えていきます。
そしてそこにあわせて「SNSの爆発的な普及」という要因が重なったのです。

PCで広まったmixiは徐々にモバイルのアクセス比率があがっていき、2008年頃にはパソコンからのアクセス数の2倍以上が携帯からのアクセスとなりました。
そしてmixiより後発でありながら、モバイル向けに展開されたモバゲータウンは、モバイルユーザがそもそも「ひまつぶし」でサイトアクセスをする傾向が高かったこともマッチし、mixi以上のPVを稼ぐサイトとなっていきました。

また、もともとはPC向けに開始されたGREEもモバイル向けに大きく舵を切りモバゲータウンの後を追い、現在はモバゲータウンと抜きつ抜かれつのデッドヒートを演じています。
モバゲータウンやGREEは、普通にテレビを見ていてもCMをよく目にしますね。この両社の躍進はすさまじく、先日GREEの時価総額がフジテレビの時価総額を超えたという話題がネットでも行き交っていました。

インターネット上にすでに情報はそろっていたこと、そしてパソコン以上にそもそもが「人と通信する」ことを目的とされていたモバイルで、「SNSで人とつながる」ことが爆発的に普及することで、20代前半より下の世代の「ケータイ依存度」は高いものとなっていったと考えられます。

さて、ここで「依存」という言葉を出しましたが、「ケータイ依存」は何も悪いことでも何でもないと筆者は考えます。そもそも人間は「情報源」つまりメディアに大きく依存しているものなのですから。
若い世代が、食事をしながらケータイをいじっているのは「不自然」、さらには「マナーがなってない」と思う方も多いかもしれません。

しかし、10年くらい前にも、いい社会人が定食屋などでテレビで流れる昼時のバラエティー番組に釘付けな姿もよくありました。このテレビ依存と今の若い世代のケータイ依存にそんなに大きな差があるでしょうか?

今はとても偉い立場にいらっしゃる某政治家が以前に「一億総白痴」という発言をして非難を浴びましたが、このとき言及されたのは「テレビをはじめとするマスメディアに踊らされる日本人」を揶揄したものであったはずです。

新たな変化に対してそれを否定することは簡単ですが、止められない変化を否定することは新たな未来から眼をそむけているにすぎません。政治家や、子供のモバイル利用を規制しようとするような行政はともかく、少なくともビジネスに身を置く人間がそれをしていては先はないのではないでしょうか。

ドラッカー風にいえば「既に起こっている未来」が、「mジェネレーション」のモバイル利用形態、そしてそれによる「消費行動の変化」です。
実際、ケータイジェネレーションは25歳以下に多いということを述べましが、これは典型的な世代であって、30代にはケータイジェネレーション的な利用をしているユーザがいないというわけではありません。

1つはパソコンに触れてこなかった人々、次にライフスタイルや職場環境などからパソコンを使う時間が少ない人々、そしてもう1つ、パソコンを使っていたがモバイルを使用するうちにパソコンよりもモバイルのほうが肌に合ってしまった人々です。

こういった人々が25歳以上の世代でも増えつつあることも事実で、実際、SNSで提供されるゲームにも、大人でも楽しめるものも多く、それらの「友達紹介」などで招待されてそこからモバイルにはまっていく人も多いのが現状です。

そこでモバイルにはまらなかったユーザは、スマートフォンへの移行もスムーズなのですが、はまってしまったユーザは、スマートフォンに完全移行してしまうと、このゲームやそれを通じた人とのつながりをリセットすることにもなってしまうため、モバイルヘビーユーザがスマートフォンに雪崩を打って移行していない一因とも考えられます。

このように、若い世代に限らずとも、特にSNSを通じて様々な形で利用を深めていくと、どんどんモバイルを通じてサイトにアクセスする動機が増えていったといえるでしょう。

それでは、モバイルを主要なメディアとして活用している「mジェネレーション」や、PC・モバイル併用ユーザの行動は、いったいどのようなものなのでしょうか?

それを知ることが、今起こっている市場や消費者の変化を知る第一歩になります。知らないままマーケティング活動(プロモーションだけでなく、ニーズ把握、商品開発、販路整備、カスタマーサポートを含む)を行うことは、的を見ずに矢を放つようなものであり、的中率はあまり高くないかもしれません。

先日モバイルサイトのブランド価値とWebサイトのブランド価値の企業別ランキングが発表されていました。
筆者は算定手法に若干違和感はあるのですが、それは置いておいたとしても、携帯サイトの価値が高い企業と、Webサイトの価値が高い企業の、最近の「国内での」業績の印象には、結構差があるように感じます。
モバイルサイトとWebサイトでは、「サイトを有用である」と認識したときの、アクセス頻度や利用形態が全く異なるのですが、そこがうまく数値に反映されているとは思えないのです。

読者の方々も、ぜひインターネットで検索し、どちらのランク上位企業のほうが業績への貢献度が高そうか考えてみてください。

次回は、それにも関連して、「モバイルとメディア特性」や「モバイルユーザの特性」などに触れていこうと思います。

吉田 謙
株式会社シトラスブレインズ 代表
http://www.citrus-brains.com/
東京大学法学部卒。1998年NTT(のちNTT東日本)入社。
新規顧客開拓の専門チームで、インターネット活用の新規提案や事業提案を担当。学校法人の新規事業コンサルティングや保育園へのネットカメラ導入、政令指定都市への制作提言書策定など特殊案件を担当。
のち「Flet’sシリーズ」マーケティング部門にて販促施策・Webサイト担当。2002年20人規模のベンチャー企業に入社し、大企業向けWeb/モバイルサイト構築事業・ソフトウェア事業を立上げ、のち営業・技術部門を統括。通信キャリアや放送事業者、外資系製薬企業など大規模サイトの構築に多数携わる。
2006年に100人を超える規模まで成長した同社から独立。シトラスブレインズを設立。先進技術とマーケティングの両面に基づくコンサルティング・プロデュース事業を、多数のベンチャー企業・技術者とのパートナーシップにより展開。特にマーケティング戦略と組織、システム全体の最適化や、先進技術の組み合わせによるコストパフォーマンスに優れたサイト・システム構築を得意とする。2010年より製品事業に進出。
著書「モバイルマーケティングを活性化する 企業携帯サイトの構築」(秀和システム・2章、4章、5章を担当)、他にWeb/携帯分野での雑誌への寄稿・講演など。3児の父・兼業主夫。